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タクシー運転手の仕事内容となるまでの全体像【2026年版】条件・二種免許・研修・1日の流れ・きつい点を条文と統計で解説

2019 2/09
仕事内容
2019年2月9日2026年9月26日
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タクシー運転手の仕事内容

この記事の情報

法令は e-Gov の現行版(道路運送法、旅客自動車運送事業運輸規則、道路交通法、タクシー業務適正化特別措置法と同法施行規則)で確認しました。労働時間の上限は厚生労働省が公開しているハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示(2024年4月1日施行の内容)、研修の中身は国土交通省告示第1676号、賃金は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年の原表、運転者数は国土交通省調べの資料によります。すべて2026年9月23日に確認した内容です。制度も運賃も変わることがあるので、応募する前に会社と、住所地の都道府県警察や運輸支局の案内をあわせて確認してください。記事の後半に出てくる乗務の体験は、筆者が都内で乗務していた2019年ごろのものです。

タクシー運転手の仕事を調べ始めると、「未経験でも月40万から50万円」「月11回から13回の乗務で残りは休み」といった求人が並びます。数字だけ見ると条件がよく見える一方で、「きつい」「やめとけ」という言葉も同じくらい目につきます。どちらが本当なのか、そもそも1日何をしている仕事なのかが分からないまま、応募のボタンを押すかどうかで止まってしまう人は多いはずです。

この記事では、タクシー運転手になるまでの全体像を、法令の条文と公的な統計で組み直しました。あわせて、筆者が都内で乗務していた2019年ごろの実際の1日と、そのときに感じたきつさ、向き不向きも書いています。求人サイトの記事には、条文の根拠も、乗務した人の手ざわりも、どちらも入っていないことが多いので、その両方をこの1本にまとめました。

先に結論を書きます。タクシー運転手になるために要るのは、原則として普通第二種免許と、指定地域であれば登録と法令試験です。免許は入社後に会社の費用で取れる場合が多く、東京地域の地理試験は2024年2月29日に廃止されました。入社後の研修は会社の親切ではなく、旅客自動車運送事業運輸規則36条2項で義務づけられたものです。勤務は隔日勤務が中心で、拘束時間の上限は2暦日22時間、1か月262時間と決まっています。統計上の年収は450.8万円で、20代前半に限れば全産業より高い水準です。

タクシー運転手になるまでの要点。普通二種免許が必要、指定地域は登録と法令試験、地理試験は2024年2月29日に廃止、入社後の研修は法律の義務、隔日勤務の拘束時間は2暦日22時間、年収は450.8万円
この記事の要点(出典 道路運送法・運輸規則・改善基準告示・賃金構造基本統計調査 令和7年)
目次
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タクシー運転手の仕事は、法律ではどう位置づけられているか

タクシーは「一般乗用旅客自動車運送事業」(道路運送法3条)

仕事の中身を理解する近道は、法律がこの事業をどう分類しているかを見ることです。道路運送法2条3項は、旅客自動車運送事業を「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業」と定めています(道路運送法 e-Gov)。その種類を並べているのが3条です。

旅客自動車運送事業の種類は、次に掲げるものとする。 一 一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業) イ 一般乗合旅客自動車運送事業(乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業) ロ 一般貸切旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業) ハ 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)

イが路線バス、ロが観光バスやツアーバス、そしてハがタクシーとハイヤーです。ここで押さえておきたいのは「一個の契約により貸し切って運送する」という言い方です。乗り合わせた別のお客さんから別々に運賃をもらう乗合バスと違い、タクシーは1件の契約ごとに車を貸し切る形で運ぶ事業だと整理されています。

そして4条1項は「一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」と定めています。街で見かけるタクシー会社は、すべてこの許可を持っている会社です。運転手はその許可事業者に雇われ、事業者に課された安全のルールの中で乗務することになります。あとで出てくる点呼や日報の話も、元をたどるとすべてここから来ています。

道路運送法3条の事業区分。一般乗合旅客自動車運送事業が路線バス、一般貸切旅客自動車運送事業が観光バス、一般乗用旅客自動車運送事業がタクシーとハイヤー
タクシーは一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法3条1号ハ)
事業の種類代表的な乗り物必要な二種免許の例
一般乗合旅客自動車運送事業路線バス、コミュニティバス大型第二種免許など
一般貸切旅客自動車運送事業観光バス、ツアーバス大型第二種免許など
一般乗用旅客自動車運送事業タクシー、ハイヤー普通第二種免許

バスの運転手を目指す人は、同じ二種免許でも大型第二種免許が必要になります。取り方と費用は大型二種免許の取り方と費用にまとめました。タクシーとバスのどちらにするかで迷っている人はタクシー運転手とバス運転手の違いも読んでみてください。

タクシーとハイヤーは法律上の別物

求人を見ていると「ハイヤー乗務員」という募集も出てきます。この2つは法律で区別されています。タクシー業務適正化特別措置法2条は次のように定めています(タクシー業務適正化特別措置法 e-Gov)。

この法律で「タクシー」とは、一般乗用旅客自動車運送事業…を経営する者がその事業の用に供する自動車でハイヤー以外のものをいう。この法律で「ハイヤー」とは、一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する自動車で当該自動車による運送の引受けが営業所のみにおいて行なわれるものをいう。

つまり、運送の引き受けが営業所だけで行われるのがハイヤーです。街で手を挙げた人を乗せたり、駅の乗り場で順番を待ったりするのがタクシー、事前の予約を営業所で受けて車を出すのがハイヤーだと考えると分かりやすいと思います。この違いは働き方にも効いてきます。あとで触れる改善基準告示の拘束時間の表は、厚生労働省の説明でも「「ハイヤー」の運転者については上記表は適用されません。」と注記されています。

法人タクシーと個人タクシー

もうひとつの分かれ道が、会社に雇われる法人タクシーか、自分で許可を取る個人タクシーかです。未経験から始める人は、まず法人タクシーに入ることになります。個人タクシーは自分が事業者になるので、許可の要件を満たす必要があり、運輸規則のいくつかの条文でも「個人タクシー事業者を除く。」と別扱いになっています。この記事は、未経験から法人タクシーに入る人を前提に書きます。

タクシー運転手になるための条件は4つ

条文を並べ直すと、必要な条件は次の4つに整理できます。年齢や学歴の要件が独立してあるわけではなく、免許の受験資格の中に年齢と経歴が入っている形です。

タクシー運転手になるための4条件。1つ目は普通第二種免許、2つ目は指定地域での登録と法令試験、3つ目は健康状態と適性、4つ目は会社が選任できる雇われ方
条件は4つ(道路交通法86条・タクシー法3条48条・運輸規則36条37条)
条件中身根拠
普通第二種免許お客さんを乗せて運賃をもらう目的で普通自動車を運転するのに必要道路交通法86条1項
指定地域では登録と法令試験登録を受けた人でなければタクシーの運転者として乗務させられない。指定地域ごとに試験があるタクシー業務適正化特別措置法3条・48条
健康状態と適性健康状態は乗務員等台帳に記載する事項。選任の前に適性診断を受ける運輸規則37条1項9号・36条2項
会社が選任できる雇われ方日雇い、2か月以内の期間を定めた雇用などは運転者に選任できない運輸規則36条1項

普通第二種免許(道路交通法86条1項)

道路交通法86条1項は「次の表の上欄に掲げる自動車で旅客自動車であるものを旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者は、当該自動車の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる第二種免許を受けなければならない。」と定めています(道路交通法 e-Gov)。この表で普通自動車に対応するのが普通第二種免許です。

受験資格は96条5項1号にあります。原則は21歳以上で、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許または大型特殊免許を現に受けていて、その期間が通算3年以上あることです。免許停止の期間は数えません。

二十一歳(政令で定める教習を修了した者(…)にあつては、十九歳)以上の者で、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許又は大型特殊免許を現に受けている者に該当し、かつ、これらの免許のいずれかを受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して三年(政令で定める経験を有するものにあつては二年、政令で定める教習を修了したものにあつては一年)以上のもの

2022年5月13日からは受験資格特例教習という制度ができて、これを修了すれば19歳以上・経歴1年以上でも受けられるようになりました。警察庁の説明は「特別な教習を修了すると、19歳以上であり、かつ、普通免許等を受けていた期間が通算して1年以上あれば、第二種免許、大型免許及び中型免許の運転免許試験を受けることができることとなります。」です(警察庁 第二種免許等の受験資格の見直しについて)。

普通二種免許の受験資格。原則は21歳以上で免許の経歴が通算3年以上。受験資格特例教習を修了すれば19歳以上で1年以上
受験資格は年齢と経歴の2つ(道路交通法96条5項1号・警察庁)

適性試験の基準も一種より厳しくなります。視力は両眼で0.8以上かつ一眼でそれぞれ0.5以上、深視力は三桿法の奥行知覚検査器により2.5メートルの距離で3回検査して平均誤差が2センチメートル以下であることが必要です。深視力は普通免許にはない検査なので、不安な人は申し込む前に教習所で測ってもらうと安心です。

教習所の教習時間、費用、試験場での手続きは二種免許の取り方と費用(受験資格・教習時間・試験)に詳しくまとめてあります。ここでは重複を避けて、仕事の全体像のほうに話を進めます。

指定地域では登録と法令試験が要る(地理試験は廃止)

免許を取れば全国どこでもすぐ乗務できるわけではありません。タクシー業務適正化特別措置法3条1項は、タクシー事業者は登録を受けている運転者以外の人をタクシーに乗務させてはならないと定めています。そして48条1項が試験の根拠です。

国土交通大臣は、指定地域ごとに、国土交通省令で定めるところにより、タクシーの運転者になろうとする者に対し、当該指定地域に係るタクシー事業の業務に必要な輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験を行う。

ここで大きく変わったのが試験の中身です。改正前の同法施行規則39条1項は「次に掲げる科目ごとに…一 タクシー事業に係る法令、安全及び接遇 二 当該指定地域に係る地理」と二科目を挙げていました。これが2024年2月29日の令和六年国土交通省令第十五号で改められ、現行の条文は「タクシー事業に係る法令、安全及び接遇に関し告示で定める事項に関する知識について筆記試験の方法により行うものとする。」となっています(タクシー業務適正化特別措置法施行規則 e-Gov)。地理の科目がなくなったということです。

東京タクシーセンターの案内にも「令和6年2月29日付国土交通省令第15号、タクシー業務適正化特別措置法施行規則の一部を改正する省令により東京地域に係る地理科目が廃止となり、タクシー事業に係る法令、安全及び接遇に関する試験となりました。」と書かれています(東京タクシーセンター)。同じ案内によると、東京特定指定地域(特別区、武蔵野市及び三鷹市)の試験は筆記で45問、合格基準は36問以上の正解、合格証の有効期限は合格日から2年間です。手数料は3,400円です。

指定地域の試験の新旧。改正前は法令・安全・接遇と地理の2科目、2024年2月29日の改正後は法令・安全・接遇のみ。東京は45問中36問以上で合格、手数料3,400円、有効期限2年
地理の科目は2024年2月29日に廃止(施行規則39条・東京タクシーセンター)
項目改正前(2024年2月28日まで)現行(2024年2月29日から)
試験の科目タクシー事業に係る法令、安全及び接遇/当該指定地域に係る地理タクシー事業に係る法令、安全及び接遇
東京の出題地理を含む筆記45問・36問以上の正解で合格
手数料3,400円3,400円
合格の効力合格した日から2年合格した日から2年

筆者が乗務を始めた2019年ごろは、この地理試験が最初の関門でした。東京で働くなら避けて通れず、落ちて何度も受け直す人もいました。当時の受験記は地理試験って難しい?簡単?に残してあります。いまは科目そのものがないので、この壁を理由にあきらめる必要はなくなりました。

なお、試験に合格して登録を受けると、指定地域では運転者証が交付され、車内に表示することになります(タクシー業務適正化特別措置法13条)。指定地域以外では、会社が発行する乗務員証を携行する形になります(運輸規則37条3項)。

健康状態と、会社が選任できない雇われ方

3つ目は健康です。運輸規則37条1項は、事業者が運転者ごとに乗務員等台帳を作って営業所に備えることを義務づけていて、その記載事項に「九 運転者等の健康状態」が入っています。人の命を乗せる仕事なので、採用の過程で健康診断があるのはこのためです。台帳には免許の種類や有効期限、運転の経歴、事故の概要、適性診断の受診の状況まで記載されます。

4つ目は、意外と知られていない条文です。運輸規則36条1項は、事業者が運転者に選任してはならない人を列挙しています。

旅客自動車運送事業者(個人タクシー事業者を除く。…)は、次の各号のいずれかに該当する者を運転者等として選任してはならない。 一 日日雇い入れられる者 二 二月以内の期間を定めて使用される者 三 試みの使用期間中の者(十四日を超えて引き続き使用されるに至つた者を除く。) 四 十四日未満の期間ごとに賃金の支払い(…)を受ける者

タクシーに日雇いのアルバイトがなく、短期の派遣もない理由がここにあります。求人を探すときに「短期だけ働きたい」という条件が通らないのは、会社の方針ではなく条文の要請です。逆にいえば、応募する側から見ると、きちんと継続して雇われることが制度の前提になっているということでもあります。

運転者に選任できない4つの雇われ方。日日雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者、14日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける者
この4つに当たる人は運転者に選任できない(運輸規則36条1項)
指定地域と指定地域以外の違い。指定地域は登録と法令試験が必要で運転者証を表示、指定地域以外は試験がなく会社の乗務員証を携行する
指定地域かどうかで手続きが変わる(タクシー法3条13条・運輸規則37条3項)

未経験からタクシー運転手になるまでの流れ

6つのステップ

未経験の人が実際にたどる順番は、だいたい次のようになります。意外に思われるのが最初のステップで、二種免許を先に取る必要はありません。多くの会社が免許の取得費用を負担していて、入社してから通う形が一般的だからです。

未経験からの6ステップ。1会社を選ぶ、2応募と面接と健康診断、3入社して二種免許を取る、4指定地域なら登録と法令試験、5会社の研修と適性診断、6独り立ち
未経験から独り立ちまでの流れ
ステップやること気をつける点
1. 会社を選ぶ免許の取得費用、給与体系、勤務形態、営業所の場所を比べる免許を取ってから会社を選ぶ必要はない
2. 応募と面接、健康診断採用選考と健康状態の確認健康状態は乗務員等台帳の記載事項(運輸規則37条1項9号)
3. 入社して二種免許を取る指定教習所に通う会社が費用を負担する場合が多い。条件は会社ごとに違う
4. 指定地域なら登録と法令試験法令、安全及び接遇の試験を受けて登録2024年2月29日から地理の科目はない
5. 会社の研修と適性診断特別な指導と初任診断を受ける運輸規則36条2項の義務。受けていないと選任できない
6. 独り立ち1人で乗務を始める最初は先輩の添乗がつく会社もある

期間はどのくらいか(2019年ごろの体験)

筆者が都内で乗務を始めたときは、会社を決めてから1人で乗務できるようになるまで約2か月かかりました。内訳は、教習所に通ったのが約2週間、そのあと試験場での手続きと地理試験、最後に会社の研修が1週間ほどです。教習所に通っている間も研修費という形で日給1万円が出ていたので、午前だけで終わる日でも1日分もらえるのはありがたかったのを覚えています。

当時、自費で二種免許を取ろうとすると25万円ほどかかると言われていました。会社が負担してくれたぶん、実質的にはその金額を受け取りながら資格を取ったのと同じです。ただし、免許の費用を会社が出す場合、一定期間内に辞めると返還を求める規定を置いている会社もあります。ここは入社前に必ず書面で確認してください。

独り立ちまでの期間の目安。教習所が約2週間、試験場の手続きと当時の地理試験、会社の研修が約1週間で、合計約2か月
筆者が都内で乗務を始めた2019年ごろの実際の期間

面接で何を聞かれるか、志望動機をどう作るかはタクシー会社の面接に落ちる可能性はある?とタクシー運転手の志望動機にまとめています。

タクシー会社の面接を受ける応募者と面接担当者
免許を持っていない状態で応募してよい会社は多い(イメージ)

入社後の研修は、会社の親切ではなく法律の義務

運輸規則36条2項が「研修を終えるまで乗務させるな」と定めている

求人の「未経験歓迎」「研修が充実」という言葉は、実は法令の裏づけがあります。旅客自動車運送事業運輸規則36条2項は次のように定めています(旅客自動車運送事業運輸規則 e-Gov)。

一般乗用旅客自動車運送事業者(個人タクシー事業者を除く。…)は、新たに雇い入れた者については、第三十八条第一項、第二項及び第五項並びに第三十九条に規定する事項…について、指導、監督及び特別な指導を行い、並びに適性診断を受診させた後でなければ、前条の運転者その他事業用自動車の運転者として選任してはならない。

読み替えると、指導と監督、特別な指導を行い、適性診断を受けさせたあとでなければ、運転者に選任できないということです。研修をやるかどうかは会社の裁量ではありません。やらずに乗務させれば事業者の側が規則違反になります。未経験で入る人にとっては、これが最初の安全網になります。

運輸規則36条2項の義務の流れ。雇い入れ、一般的な指導と監督、初任運転者への特別な指導、初任診断の受診、ここまで終えて初めて運転者に選任できる
研修と適性診断を終えるまで運転者に選任できない(運輸規則36条2項)
会社がやること中身根拠
一般的な指導及び監督営業区域の状態、運転技術、法令に定める運転に関する事項。毎年実施し、記録を営業所で3年間保存運輸規則38条1項・告示第1676号
特別な指導初任運転者に対して5項目を合計6時間以上運輸規則38条2項2号・告示第1676号
非常用具の取扱いの指導非常信号用具、非常口、消火器の取扱い運輸規則38条5項
営業区域内の地理と接遇の指導営業区域内の地理、旅客及び公衆に対する応接運輸規則39条
適性診断選任する前に初任診断を受診させる運輸規則36条2項・告示第1676号

初任運転者への特別な指導は合計6時間以上

研修の中身と時間は、国土交通省告示第1676号「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」に書かれています(国土交通省 指導及び監督の指針)。初任運転者に対する特別な指導の項目は次のとおりです。

  • 事業用自動車の安全な運転に関する基本的事項(道路運送法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項及び交通ルール等を理解させる)
  • 事業用自動車の構造上の特性と日常点検の方法
  • 運行の安全及び旅客の安全を確保するために留意すべき事項(シートベルトの着用の徹底など)
  • 危険の予測及び回避
  • 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
  • 安全運転の実技(実際に運行する可能性のある経路で、添乗等により指導する。可能な限り実施することが望ましい)

時間の指定は告示の原文で「貸切バス以外の一般旅客自動車及び特定旅客自動車の運転者に対しては、①から⑤までについて合計6時間以上実施すること。」となっています。つまりタクシーの新人には最低でも6時間の特別な指導が入ります。貸切バスの運転者だと合計10時間以上に加えて実技20時間以上なので、車の大きさに応じて段階がついている形です。

初任運転者への特別な指導の5項目。基本的事項、構造上の特性と日常点検、旅客の安全のための留意事項、危険の予測と回避、安全装置の適切な運転方法。合計6時間以上
タクシーの新人は合計6時間以上(国土交通省告示第1676号)

適性診断は3種類ある

適性診断は、運転の癖を測って本人に自覚させるための検査です。告示では受ける人と時期が分かれています。新しく雇われた人が受けるのが初任診断で、原文は「当該旅客自動車運送事業者において事業用自動車の運転者として選任する前に初任診断を受診させる。」です。雇入れの日前3年間に初任診断を受けたことがある人は除かれます。

診断の名前受ける人時期
初任診断運転者として新たに雇い入れた者運転者として選任する前
適齢診断高齢運転者65才に達した日以後1年以内に1回。その後75才までは3年以内ごとに1回。75才以後は1年以内ごとに1回
特定診断死者や負傷者が生じた事故を引き起こした運転者事故のあと再度乗務する前(やむを得ない事情があるときは乗務開始後1か月以内)
適性診断の3種類。初任診断は新しく雇われた人が選任前に、適齢診断は65才以後1年以内と75才まで3年ごと、特定診断は事故を起こした運転者が再乗務の前に受ける
適性診断は3種類(国土交通省告示第1676号)

告示にはもうひとつ、採用する側の義務が書かれています。新しく雇い入れた場合、事業者は自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書または運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握することとされています。応募のときに運転記録証明書を求められるのはこのためです。

経験者は研修を省ける場合がある

36条2項にはただし書きがあります。「新たに雇い入れた者が、当該一般乗用旅客自動車運送事業者の営業区域内において、雇入れの日前二年以内に通算九十日以上一般乗用旅客自動車運送事業の事業用自動車の運転者であつたときは、この限りでない。」です。同じ営業区域で2年以内に通算90日以上タクシーの運転者だった人は、この一連の手続きを省けます。他社から移ってきた経験者がすぐ乗務に入れるのは、この規定があるからです。

筆者の会社の研修は1週間ほどで、内容は接客と、お客さんを乗せられる場所の見つけ方が中心でした。実際に何をやるのかはタクシードライバーの研修内容とは?に書いています。

仕事内容 1乗務で実際に何をするのか

ここからが本題の仕事内容です。「お客さんを乗せて運ぶ」の前後に、条文で決まっている手順がいくつも挟まっています。求人の説明では省かれがちですが、毎回必ずやることなので先に知っておくと、入社後のギャップが小さくなります。

出庫の前に点呼を受ける(運輸規則24条)

車に乗る前に、必ず点呼があります。24条1項は、事業者が運転者に対面で点呼を行い、報告を求め、確認を行い、必要な指示を与えなければならないと定めています。確認する事項は次の3つです。

一 道路運送車両法…第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検の実施又はその確認 二 運転者に対しては、酒気帯びの有無 三 運転者に対しては、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無

アルコールの確認は目視だけでは足りません。24条4項は「旅客自動車運送事業者は、アルコール検知器…を営業所ごとに備え、常時有効に保持するとともに、…運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行わなければならない。」としています。乗務を終えたときにも24条2項の点呼があり、車と道路と運行の状況を報告し、もう一度酒気帯びの有無を確認します。点呼の記録は1年間保存されます。

点呼で確認する3つのこと。日常点検の実施またはその確認、酒気帯びの有無をアルコール検知器と目視で、疾病や疲労や睡眠不足で安全に運転できないおそれの有無
出庫前と帰庫後に点呼がある(運輸規則24条)

運転者の側の義務も50条1項に書かれています。点検をすること、出庫前と乗務終了時に点呼を受けて報告すること、酒気を帯びているときや、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由で安全な運転をすることができないおそれがあるときは会社に申し出ること、日報の記録を行うこと、「運転操作に円滑を欠くおそれがある服装をしないこと」などが並びます。

運転者の遵守事項。日常点検をする、出庫前と乗務終了時に点呼を受けて報告する、酒気帯びや体調不良は申し出る、業務記録を行う、運転操作に円滑を欠く服装をしない
運転者の側にも守る義務がある(運輸規則50条1項)

お客さんの乗せ方は3つ

乗務が始まると、やることはお客さんを見つけて運ぶことです。その方法は大きく3つに分かれます。どれを軸にするかで、走る場所も休み方も変わります。

乗せ方内容向いている時間帯や場所
流し走りながら手を挙げた人を乗せる人通りの多い幹線道路、繁華街
付け待ち駅、ホテル、病院などの乗り場で順番を待つ列車の到着前後、雨の日、深夜
無線とアプリの配車会社の配車指令や配車アプリの依頼を受けて迎えに行く住宅地、郊外、天候の悪い日
お客さんの乗せ方3つ。流しは走りながら手を挙げた人を乗せる、付け待ちは駅やホテルの乗り場で待つ、無線とアプリの配車は依頼を受けて迎えに行く
この3つの配分が営業スタイルになる

筆者が乗務していた2019年ごろは、流しと付け待ちが中心で、アプリの配車はまだ今ほど多くありませんでした。どこで何時にどれだけ人が出てくるかを覚えていくのが仕事の半分で、同じ会社の中でも売上に差がつくのはほとんどここです。地図を覚える話は{ai(‘/howtormbroad/’, ‘タクシー運転手の道の覚え方’)}に書きました。

営業区域の外で乗せることはできない

好きな場所で乗せられるわけではない、というのも仕事内容の一部です。会社には営業区域が決まっていて、区域の外で乗せて区域の外で降ろす営業はできません。筆者がいた東京の会社では、23区、武蔵野市、三鷹市が区域でした。区域内で乗せて区域外まで送ることも、区域外で乗せて区域内へ戻ることもできますが、乗車か降車のどちらかが区域の中に入っている必要があるという考え方です。

たとえば都内で乗せたお客さんを埼玉まで送るのは問題ありません。ただし、降ろしたあと埼玉で別のお客さんを乗せて埼玉の中で降ろすことはできません。帰りは空車のまま区域へ戻るか、区域内へ向かうお客さんを探すことになります。遠距離の売上が大きく見えても、帰りの時間を差し引いて考える必要があるのはこのためです。

営業区域の考え方。区域内で乗せて区域外で降ろすのは可、区域外で乗せて区域内で降ろすのも可、区域外で乗せて区域外で降ろすのは不可
乗車か降車のどちらかが営業区域の中に入っている必要がある

業務記録(日報)に何を書くか(運輸規則25条3項)

乗務が終わると日報を出します。この日報は会社独自の書式ではなく、書く項目が条文で決まっています。25条3項は、一般乗用旅客自動車運送事業者は、25条1項1号から7号の事項に加えて、旅客が乗車した区間と、業務の開始時と終了時の走行距離計の積算キロ数を記録させ、事業用自動車ごとに整理して1年間保存しなければならないと定めています。

記録する事項根拠
運転者等の氏名運輸規則25条1項1号
自動車登録番号など車を識別できる表示25条1項2号
業務の開始及び終了の地点及び日時、主な経過地点、業務に従事した距離25条1項3号
業務を交替した場合はその地点及び日時25条1項4号
休憩又は仮眠をした場合はその地点及び日時25条1項5号
事故又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合はその概要及び原因25条1項7号
旅客が乗車した区間25条3項
業務の開始時及び終了時の走行距離の積算キロ数25条3項
業務記録に残す項目。氏名、車の識別表示、開始と終了の地点と日時、交替した地点と日時、休憩や仮眠の地点と日時、事故や遅延の概要と原因、旅客が乗車した区間、開始時と終了時の積算キロ数
日報の項目は条文で決まっている(運輸規則25条)

休憩の地点と時刻まで書くのが意外に思われるところです。自由に休めるとはいえ、どこで何分休んだかは記録に残ります。逆にいえば、記録に残るからこそ、会社が「休むな」と言えない構造にもなっています。

乗務員証の携行と、回送板のルール(運輸規則50条)

乗務中に携行するものも決まっています。50条9項は「一般乗用旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者は、乗務中第三十七条第三項の乗務員証を携行し、及び乗務を終了した場合には、当該乗務員証を返還しなければならない。」としています。指定地域では、これに代わってタクシー業務適正化特別措置法13条の運転者証を車内に表示します。

そして、あの「回送」の表示にも条文があります。

6 一般乗用旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者は、食事若しくは休憩のため運送の引受けをすることができない場合又は乗務の終了等のため車庫若しくは営業所に回送しようとする場合には、回送板を掲出しなければならない。 7 一般乗用旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者は、前項の場合以外の場合には、回送板を掲出してはならない。

6項と7項が対になっているのがポイントです。休憩や帰庫のときは回送板を出さなければならない一方で、それ以外の場合は出してはならない。お客さんを選ぶために回送にしておくことは、条文上できないということです。

回送板の2つのルール。食事や休憩で引き受けられないとき、車庫や営業所へ回送するときは掲出しなければならない。それ以外の場合は掲出してはならない
回送板は出す義務と出さない義務が対になっている(運輸規則50条6項・7項)

指定地域には乗務距離の最高限度がある(運輸規則22条)

もうひとつ、走行距離の上限があります。22条1項は、交通の状況を考慮して地方運輸局長が指定する地域内に営業所を持つ事業者は、地方運輸局長が定める乗務距離の最高限度を超えて運転者を乗務させてはならないと定めています。50条8項は運転者の側にも同じ義務を課しています。

最高限度の実際のキロ数は地方運輸局長が地域ごとに公示するもので、この記事の執筆時点では全国の数値を確認できませんでした。ここでは仕組みだけ書いておきます。売上を上げたいからといって、無制限に距離を走れるわけではない、ということです。

このほか、乗務員の禁止行為も49条2項に並んでいます。危険物などを旅客の現在する車内に持ち込むこと、酒気を帯びて乗務すること、車内で喫煙することです。

ホテルの車寄せで乗客の荷物をトランクに積む運転手
接客も仕事の一部で、会社の研修で扱われる(イメージ)

勤務形態と拘束時間の上限

勤務形態は3つ

タクシーの勤務形態は、昼日勤、夜日勤、隔日勤務の3つです。筆者の周りでは隔日勤務がほとんどで、昼日勤や夜日勤を選ぶ人は少数派でした。隔日勤務は、1回の勤務で2日分をまとめて働き、そのあと明け休みが入る形です。

勤務形態働き方月の乗務回数の目安
昼日勤昼の時間帯だけ働く。1回あたりの勤務時間は日勤の枠に収まる会社ごとに異なる
夜日勤夜の時間帯だけ働く。深夜割増のある時間帯に走れる会社ごとに異なる
隔日勤務1回の勤務で2日分を働き、翌日は明け休み筆者が乗務していた2019年ごろは月11回から13回
3つの勤務形態。昼日勤は昼だけ、夜日勤は夜だけ、隔日勤務は1回で2日分を働いて翌日は明け休み
隔日勤務が中心(筆者が乗務していた2019年ごろの実感)

拘束時間の上限は改善基準告示で決まっている

勤務の長さは会社が自由に決められません。運輸規則21条1項は「旅客自動車運送事業者は、過労の防止を十分考慮して、国土交通大臣が告示で定める基準に従つて、事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間を定め、当該運転者にこれらを遵守させなければならない。」と定めています。労働時間の側の基準が、厚生労働大臣告示の改善基準告示です(厚生労働省 ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示)。

この告示は厚生労働省の説明によると「法定労働時間の短縮を踏まえて見直しが行われた平成 9 年以降、改正は行われていませんでしたが、令和 4 年 12 月に自動車運転者の健康確保等の観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が改正されました。(令和6年4月1日施行)」とあり、2024年4月1日から新しい基準になっています。古い記事に書かれている数字と違うのはこのためです。

項目2024年3月31日まで2024年4月1日以降
1か月の拘束時間(日勤)299時間以内288時間以内
1か月の拘束時間(隔勤)262時間以内262時間以内(労使協定により年6か月まで270時間まで延長可)
1日の拘束時間(日勤)13時間以内(上限16時間)13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)
2暦日の拘束時間(隔勤)21時間以内22時間以内、かつ、2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内
休息期間(日勤)継続8時間以上継続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
休息期間(隔勤)継続20時間以上継続24時間与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない
拘束時間の上限の新旧。日勤は1か月299時間から288時間へ、隔勤は2暦日21時間から22時間かつ2回平均21時間へ、日勤の1日上限は16時間から15時間へ
2024年4月1日から新しい基準(厚生労働省 改善基準告示)

隔日勤務でとくに効くのが、2暦日22時間という上限と、2回の隔日勤務を平均して1回あたり21時間以内という条件です。1回だけ長く働いて次を短くする、という調整はできますが、平均で21時間を超えると違反になります。厚生労働省の説明では、特定の隔日勤務について前後どちらの平均も21時間を超えた場合は違反になるとされています。

休息期間は「次の勤務までの空き時間」

拘束時間と同じくらい大事なのが休息期間です。厚生労働省の定義では、拘束時間は「使用者に拘束されている時間のこと。(「労働時間」+「休憩時間」)(会社へ出社(始業)し、仕事を終えて会社から退社(終業)するまでの時間)」、休息期間は「使用者の拘束を受けない期間のこと。(業務終了時刻から、次の始業時刻までの時間)」です。

隔日勤務なら、勤務が終わったあと継続24時間与えるよう努めることを基本とし、継続22時間を下回らないこととされています。明け休みが丸1日以上になるのは、この規定があるからです。日勤は継続11時間を基本として9時間を下回らない、となっています。

休息期間の新旧。隔日勤務は継続20時間以上から継続24時間を基本とし22時間を下回らないへ、日勤は継続8時間以上から継続11時間を基本とし9時間を下回らないへ
休息期間は業務終了から次の始業までの時間(厚生労働省 改善基準告示)

時間外労働の上限も別にあります。厚生労働省の説明では「1か月45時間、1年360時間を限度とし、臨時的特別な事情がある場合でも、1年について960時間を超えないものとし…」とされています。なお、車庫待ち等の勤務には例外があり、日勤は労使協定で1か月300時間まで、隔勤は270時間まで延長できるなどの定めがあります。

「拘束20時間」と「労働20時間」は違う

拘束時間の中身。拘束時間は労働時間と休憩時間を足したもので、会社に出社してから退社するまでの時間。休息期間は業務終了から次の始業までの時間
拘束時間には休憩が含まれる(厚生労働省の用語の説明)

ここが誤解の多いところです。拘束時間には休憩が含まれます。筆者が乗務していた2019年ごろの勤務先では、9時に出庫して翌日の4時までに帰庫するルールで、帰ってきてから納金と洗車で1時間ほどかかり、そこまで含めて21時間以内に退勤する形でした。そのうち3時間は休憩を取るのが会社の決まりでしたから、実際にお客さんを探して走っていた時間は17時間ほどです。

この休憩3時間は当時の会社のルールで、改善基準告示に「3時間休憩」という規定があるわけではありません。会社ごとに決め方が違うので、面接のときに何時間の休憩をどう取る決まりなのか、必ず聞いてください。

この形で月に11回から13回乗務すると、給与明細に出てくる労働時間は月160時間から180時間前後に収まっていました。1回が長いぶん回数が少ないので、月単位の労働時間は一般的な会社員とあまり変わらない、というのが実際に働いた印象です。ただし1回の拘束が長いことは事実なので、体力の配分はまったく別の設計が要ります。

隔日勤務の1か月の姿。乗務は月11回から13回、明け休みと公休で残りは休み、給与明細の労働時間は月160時間から180時間前後
筆者が乗務していた2019年ごろの1か月

隔日勤務の1日の流れ(2019年ごろの体験)

条文と数字だけだとイメージがつかみにくいと思うので、筆者が都内で乗務していた2019年ごろの1回の乗務を、そのまま並べます。会社と地域によって時刻もルールも違うので、あくまで一例として読んでください。

隔日勤務の1日の流れ。9時に点呼と日常点検をして出庫、午前は流しと付け待ち、昼に休憩、夕方から夜のピーク、深夜に休憩と仮眠、翌日未明に帰庫して納金と洗車、点呼を受けて退勤
筆者が乗務していた2019年ごろの1乗務の流れ
時刻の目安やっていたこと
出庫前点呼を受ける。日常点検、アルコール検知器での確認、健康状態の申告
9時ごろ出庫。朝の時間帯は駅とオフィス街の移動が中心
午前から昼流しと付け待ちを織りまぜる。お客さんの少ない時間に食事と休憩を取る
夕方帰宅の時間帯。駅の乗り場か、混み合う道を避けた流し
夜1日の中で最も動く時間帯。売上の山はここで作る
深夜体調を見ながら休憩と仮眠。タクシープールで待つこともある
翌日未明帰庫の時間から逆算して区域内へ戻る。回送板を出して営業所へ
帰庫後納金と洗車。乗務終了の点呼を受け、日報を出して退勤

当時いた会社の車には、運転席のところに経過時間を知らせる装置がついていました。17時間を超えると一応帰ってよいことになっていて、19時間を超えると表示が赤になり、回送にして戻らなければならない決まりでした。営業収入が5万円を超えたらいつ帰ってもよい、という設定をしている会社も多いと聞きました。筆者の場合、調子のよい日は21時や22時ごろに5万円を超えていたので、翌日に予定があるときは早く切り上げていました。

逆に、疲れていると判断したら遠慮なく休みました。1時間だけ寝るつもりが5時間近く寝てしまったことがありますが、会社から何か言われることはありませんでした。理由は単純で、休んだぶん自分の給料が減るだけだからです。事故を起こされるほうが会社にとっても本人にとっても大きな損失なので、休憩は必要なだけ取れという方針でした。

1日の流れをもっと細かく見たい人はタクシー運転手の1日を現役運転手が語る(1日の流れ)を読んでみてください。勤務シフトの組み方はタクシー運転手のシフト勤務体系にまとめています。

夜の都心を走るタクシーの運転席からの眺め
夜の時間帯に売上の山を作るのが隔日勤務の基本(イメージ)

給料の仕組みは歩合が中心

統計上の年収は450.8万円

収入の話も外せません。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年で、タクシー運転者(男女計、企業規模10人以上)の数字を見ると、きまって支給する現金給与額が月359.2千円、年間賞与その他特別給与額が197.8千円です。月給を12倍して賞与を足すと、年収は4,508.2千円=450.8万円になります(e-Stat 賃金構造基本統計調査 令和7年 職種第1表)。

区分平均年齢きまって支給する現金給与額年間賞与その他特別給与額年収(月給×12+賞与)
タクシー運転者56.8歳359.2千円197.8千円4,508.2千円(450.8万円)
全産業44.4歳370.5千円1,009.6千円5,455.6千円(545.6万円)

全産業との差は947.4千円です。ただし内訳を見ると、月のきまって支給する額の差は小さく、差のほとんどは賞与です。歩合が中心の賃金体系なので、毎月の売上が給料に直結し、まとまった賞与の形では出にくい、という構造がそのまま数字に出ています。

タクシー運転者と全産業の年収の比較。タクシー運転者は450.8万円、全産業は545.6万円。差の大半は賞与の違い
年収の比較(賃金構造基本統計調査 令和7年)

20代前半だけは全産業より高い

年齢で切ると景色が変わります(e-Stat 賃金構造基本統計調査 令和7年 職種第5表。調査のファイル一覧はe-Stat の賃金構造基本統計調査から探せます)。20歳から24歳のタクシー運転者の年収は計算上4,833.6千円=483.4万円で、同じ年齢層の全産業の3,613.7千円(361.4万円)を大きく上回ります。全国ハイヤー・タクシー連合会の資料にも「20~34歳まではタクシー運転者の方が賃金が高く、特に20~24歳では100万円以上の差が生じている。」「20代前半で年間推計額が400万円を超えているのはタクシー運転者のみとなっている。」と書かれています(全国ハイヤー・タクシー連合会 令和7年賃金構造基本統計調査によるタクシー運転者の現況)。

年齢タクシー運転者の年収(計算)全産業の年間推計額
20〜24歳4,833.6千円3,613.7千円
25〜29歳4,828.7千円4,482.0千円
30〜34歳5,179.2千円5,072.8千円
45〜49歳5,213.1千円6,136.2千円
65〜69歳3,790.5千円4,017.2千円
70歳〜3,475.9千円3,528.5千円
年齢階級別のタクシー運転者と全産業の年収。20代前半はタクシーが大きく上回り、40代以降は全産業が上回る
20代前半はタクシーのほうが高い(賃金構造基本統計調査 令和7年・全国ハイヤー・タクシー連合会)

年齢が上がるほど全産業に追い越されるのは、年功で上がる賃金がないからです。裏返すと、年齢や学歴で初任給が決まらないので、若いうちに始めると他業種より早く上の水準に届く、ということでもあります。

歩合でも収入がゼロにはならない

「完全歩合だから売れない月は無給なのか」という不安をよく聞きますが、そうはなりません。労働基準法27条は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めています。さらに通達(基発1223第3号)は、歩合給制度が採られている場合は「労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとすること。」としています。

あわせて、同じ通達は累進歩合制度は廃止すべきとしています。理由は「自動車運転者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念されることから」です。売上が一定の線を超えると歩合率が跳ね上がる仕組みは、この通達で否定されています。求人の給与欄を見るときの判断材料になります(厚生労働省 タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント)。

歩合給の2つのルール。労働基準法27条の出来高払制の保障給と、通達による通常の賃金の6割以上の保障。累進歩合制度は廃止すべきとされている
歩合でも保障がある(労働基準法27条・基発1223第3号)

歩合率の計算、手取り、地域ごとの差など、お金の話はタクシー運転手の年収は450.8万円|給料・歩合の仕組み・月収・手取りにまとめました。この記事では要点だけにとどめます。

「きつい」と言われる6つの理由を1つずつ見る

検索すると必ず出てくるのが「きつい」「やめとけ」という言葉です。まとめて否定も肯定もできないので、よく挙がる理由を1つずつ、事実と体験に分けて見ていきます。

きついと言われる6つの理由。1回の拘束が長い、収入が不安定、夜間の勤務、客とのトラブル、高齢化、将来性への不安
よく挙がる6つの理由を分けて考える

1. 1回の拘束時間が長い

これは事実です。隔日勤務なら1回で2暦日22時間まで拘束されます。朝出て翌日の未明に帰る生活が月に11回から13回続くので、1回あたりの負担は確かに大きいです。

一方で、月単位で見ると拘束時間は1か月262時間(労使協定があれば年6か月まで270時間)という上限があり、休息期間も継続22時間を下回れません。勤務のあとに丸1日以上の空きが必ず入るので、まとまった時間が取れるという面もあります。どちらを重く見るかは人によります。

2. 収入が売上に左右される

これも事実です。歩合が中心なので、体調を崩した月や、街の人出が少ない時期は収入が落ちます。筆者も、風邪で1回休むだけで月の給料が目に見えて下がる感覚がありました。前述の保障給がある分、ゼロにはなりませんが、毎月同じ額が入る仕事ではありません。

逆に、やった分が翌月の給料に反映されるスピードは、他の仕事よりはるかに速いです。筆者の場合、調子のよい日は1乗務で8万円から9万円、うまくいかない日は4万円から5万円というばらつきがありました。この差をストレスと感じるか、面白いと感じるかが、向き不向きの分かれ目になります。

3. 夜間の勤務と体調管理

隔日勤務も夜日勤も、深夜に走る時間帯があります。生活リズムは一般的な会社員と違うものになります。ただ、休憩の取り方は自分で決められます。運輸規則21条2項は、事業者に休憩の施設と、睡眠や仮眠に必要な施設の整備と管理を義務づけていますし、日報には休憩の地点と時刻を記録します。会社が休憩を取らせない方向に動けない構造になっています。

筆者も、眠いときはタクシープールで平気で寝ていました。売上は落ちますが、事故を起こすよりはるかにましだという考え方が会社にも共有されていたからです。

4. お客さんとのトラブル

数は多くありませんが、ゼロではありません。運転手を見下すような言い方をされたり、ルートが違うと文句を言われたりすることは、長く乗っていれば何度かあります。降ろしたらもう会わない相手だと切り替えられるかどうかが、この仕事を続けられるかの分かれ目のひとつです。

具体的な対処はタクシー運転手は危険な仕事なのか?とタクシー運転手の態度が最悪な時、苦情はどこにどうすればいい?に書いています。

5. 平均年齢が高い

統計でも裏づけがあります。令和7年の賃金構造基本統計調査で、タクシー運転者の平均年齢は56.8歳です。労働者数から計算すると、60歳以上が43.0%、65歳以上が26.3%を占め、40歳未満は11.1%しかいません。女性の比率も6.0%です。

これを「衰退している業界」と見るか、「若い人が入ると相対的に有利」と見るかで判断は変わります。前に見たとおり、20代の年収は全産業より高く出ています。

6. 将来性への不安

「自動運転で仕事がなくなる」という不安もよく聞きます。いまの数字を見ておきます。国土交通省調べの資料によると、法人タクシーの運転者数は平成16年の381,943人をピークに減り続け、令和4年に214,972人まで落ちました。ピークからの減少は166,971人です(全国ハイヤー・タクシー連合会 運転者数の推移(国土交通省調べ))。

ただし、その後は令和5年が217,161人、令和6年が224,428人と2年続けて増えています。令和4年からの2年間で9,456人の増加です。同じ期間に、前に見たとおり統計上の年収も上がっています。少なくとも直近の数字は、人が減り続けて賃金も下がるという形にはなっていません。

法人タクシーの運転者数の推移。平成16年の381,943人をピークに減り続け令和4年に214,972人まで落ち、令和5年217,161人、令和6年224,428人と2年連続で増加
運転者数の推移(国土交通省調べ・全国ハイヤー・タクシー連合会掲載)
年度運転者数(人)
平成元年358,638
平成16年381,943
平成21年371,245
平成26年308,706
平成30年273,126
令和元年261,671
令和2年240,494
令和3年221,849
令和4年214,972
令和5年217,161
令和6年224,428

業界の先行きをどう読むかはタクシー業界(運転手)の将来性と今後なくなる可能性にも書きました。

向いている人と向いていない人

向いていると思う人

乗務していた間に、続いている人に共通していると感じたのは次の4つです。

特徴なぜ向いているか
やった分が給料に返るほうが気持ちよい人歩合が中心なので、成果と収入の距離が近い。固定給の安心感より手応えを取りたい人に合う
運転そのものが好きな人1回の乗務でハンドルを握る時間が長い。人を乗せて会話するのが好き、というのとは別の適性
観察力がある人人の流れ、時間帯、天気で乗る場所が変わる。細かい変化に気づける人は売上が高い傾向があった
考えて試すのが好きな人どこでどう待てば効率よく乗せられるかを組み立てられる人は伸びる

向いていないと思う人

特徴理由
言われたことを引きずる人数は少なくてもトラブルはある。切り替えが早くないと消耗が大きい
すぐ感情が出る人接客業なので、何か言われて言い返してしまう人には向かない
運んでいれば稼げると思っている人業務そのものは単純でも、何も考えずに走っていると売上は上がらない
向いている人は歩合を好む人、運転が好きな人、観察力がある人、考えて試す人。向いていない人は引きずる人、感情が出やすい人、運んでいれば稼げると思っている人
筆者が乗務していた2019年ごろに感じた向き不向き

よく聞かれるのが「道を知らないけれど大丈夫か」です。これは心配しなくてよいと思っています。営業区域内の地理は、運輸規則39条で会社が指導すべき事項に入っていますし、走っていれば覚えます。筆者もまだ知らない道だらけでしたが、お客さんに聞けばほとんどの場合は親切に教えてくれました。

道の不安についてはタクシー運転手の道の覚え方|道を知らなくてもなれるかにも書いています。女性の働き方はタクシー運転手は女性でもできる仕事なのか?、20代で始める場合は20代(若者)タクシー運転手が急増中を参考にしてください。

入社前に確認しておくこと

会社ごとに条件がかなり違う業種です。面接や説明会で、次の項目は必ず確認してください。条件の良し悪しよりも、書面で確認できるかのほうが大事です。

入社前チェックリスト。免許費用の負担と返還条件、給与体系と保障給、勤務形態と拘束時間、休憩のルール、事故の負担、経費の負担、営業区域と登録の手続き、研修の期間と内容
入社前に確認しておく8項目
確認する項目聞き方の例
二種免許の費用全額負担か、一部か。一定期間内に辞めた場合の返還の定めはあるか
教習期間中の給与教習所に通っている間、いくら支給されるか
給与体系固定給と歩合の組み合わせはどうなっているか。保障給はどう計算されるか
勤務形態と乗務回数隔日勤務か日勤か。1か月の乗務回数と拘束時間はどうなっているか
休憩のルール1乗務あたり何時間の休憩をどう取る決まりか
事故の負担事故を起こしたときの自己負担はどうなっているか。上限はあるか
経費の負担高速代、クレジットカードの手数料、チケットの扱いは会社負担か
研修と登録の手続き研修の期間と内容。指定地域なら試験と登録の手続きを会社がどう支援するか

筆者が乗務していた2019年ごろも、歩合率が62%でも事故の費用が運転手負担という会社、歩合率60%で事故は一律の自己負担額が決まっている会社など、同じ地域でも条件がばらばらでした。歩合率の数字だけを比べても意味がありません。差し引かれるものを全部並べて比べてください。

よくある質問

二種免許を持っていなくても応募できますか

多くの会社が免許の取得費用を負担していて、入社してから教習所に通う形を取っています。筆者も免許を持たずに応募しました。ただし会社ごとに条件が違うので、費用の負担範囲と、一定期間内に辞めた場合の返還の定めを入社前に確認してください。

年齢の上限はありますか

免許の受験資格は21歳以上(受験資格特例教習を修了すれば19歳以上)と下限だけが決まっていて、法令に上限はありません。ただし65才以上の運転者には適齢診断が義務づけられ、75才に達したあとは1年以内ごとに受診することになります。実際の採用年齢の上限は会社ごとに異なります。

地理試験は今もありますか

東京地域については、2024年2月29日の省令改正で地理の科目が廃止されました。いまの試験は「タクシー事業に係る法令、安全及び接遇」に関するもので、東京では筆記45問、36問以上の正解で合格、手数料は3,400円、合格証の有効期限は2年です。指定地域以外では、この試験そのものがありません。

未経験でも研修はしっかりありますか

運輸規則36条2項により、新しく雇い入れた人に指導と監督、特別な指導を行い、適性診断を受けさせたあとでなければ運転者に選任できません。初任運転者への特別な指導は国土交通省告示で合計6時間以上と決められています。研修の有無は会社の裁量ではありません。

残業はありますか

拘束時間に上限があるため、その枠を超えて働くことはできません。筆者が乗務していた2019年ごろも、帰庫の時刻を過ぎて走り続けるということはありませんでした。ただし1回の拘束が長いこと自体は変わりません。時間外労働の上限は1か月45時間、1年360時間が限度で、臨時的特別な事情がある場合でも1年960時間を超えないこととされています。

収入がゼロになることはありますか

労働基準法27条により、出来高払制でも労働時間に応じた一定額の賃金の保障が必要です。通達では、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上が保障されるよう保障給を定めることとされています。保障給の計算方法は会社ごとに違うので、面接で確認してください。

短期のアルバイトで働けますか

運輸規則36条1項により、日日雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者などは運転者に選任できません。短期の働き方は制度上できない形になっています。

バスの運転手とどちらがよいですか

必要な免許が違います。バスは大型第二種免許で、受験資格は21歳以上・経歴3年以上(大型免許は不要)です。勤務の形も、路線が決まっているバスと、自分で走る場所を選ぶタクシーでは大きく違います。比較は別の記事にまとめてあります。

まとめ

タクシー運転手になるために必要なのは、原則として普通第二種免許と、指定地域であれば登録と法令試験です。免許は入社後に会社の費用で取れる場合が多く、東京地域の地理試験は2024年2月29日に廃止されました。年齢や学歴の要件は独立してはなく、免許の受験資格として21歳以上・経歴3年以上(特例教習を修了すれば19歳以上・1年以上)が定められているだけです。

入社後の研修は、運輸規則36条2項で義務づけられたものです。指導と監督、初任運転者への特別な指導(合計6時間以上)、初任診断を終えるまで、会社は運転者に選任できません。1乗務は点呼から始まり、乗務員証を携行し、回送板のルールを守り、業務記録を残して終わります。すべて条文に根拠があります。

勤務は隔日勤務が中心で、拘束時間の上限は2暦日22時間、1か月262時間です。休息期間は継続24時間が基本で、22時間を下回れません。統計上の年収は450.8万円、20代前半に限れば483.4万円で全産業より高く出ています。法人タクシーの運転者数は令和4年を底に2年続けて増えています。

最後に、これは筆者の実感です。1回の拘束が長いことは事実で、そこを軽く見せるつもりはありません。ただ、休むかどうかも、どこで待つかも、いつ帰るかも、決められた枠の中では自分で決められます。その自由度をどう評価するかが、この仕事に向いているかどうかを分けると思います。数字と条文で分かることはこの記事に全部書いたので、あとは会社の条件を1つずつ確かめてみてください。

次に読むなら、免許の取り方と費用は二種免許の取り方と費用、収入の内訳はタクシー運転手の年収と給料の仕組み、未経験の稼ぎ方はタクシー運転手は未経験でも稼げる職業なの?が続きになります。

仕事内容
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  • タクシーの地理試験は廃止されました【2026年版】2024年2月29日の省令改正と、いま代わりに必要なもの
  • タクシー運転手の1日の流れ 隔日勤務の1乗務を出社から退勤まで9つの手順で【2026年版】

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