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窓口の受付範囲と苦情の件数は東京タクシーセンターの公式ページと事業報告書、法律はe-Govの条文、運送の決まりは国土交通省の標準運送約款、忘れ物の検索は警視庁、配車アプリの手順は提供元のサポートページの原文です。いずれも2026年9月29日に確認しています。
運転手の態度にがっかりした。いつもより運賃が高い気がする。スマートフォンを車内に置いてきた。急ブレーキで体を打った。タクシーのトラブルは、起きた直後ほど「誰に言えばいいのか」が分からなくなります。
相談先は一つではありません。トラブルの種類によって、受け付ける窓口が決まっています。たとえば東京タクシーセンターは接客や乗車拒否の苦情を受けますが、運賃を返してほしいという話や、あおり運転の件は受けません。忘れ物もセンターではなく、会社か警察の担当です。
この記事では、元タクシー運転手の筆者が、窓口ごとの受付範囲と、相談の前に控えておくもの、会社と乗務員に課された決まりを、法令と公式ページの原文にもとづいて整理しました。

先に結論
- 接客、乗車拒否、途中で降ろされた件、運賃の疑問は、会社かその地域のタクシーセンターへ
- 運賃の返金の交渉は会社と直接する。東京タクシーセンターは民事の件として受けない
- あおり運転や、ひかれそうになった件は警察へ。センターは受けない
- 忘れ物は、会社が分かれば会社へ。分からなければ警察署か交番へ
- けがをしたら、手当てを受けたうえで会社に連絡する。賠償は会社と会社の保険が相手
- どの窓口でも、車内に表示された会社名と自動車登録番号、日時と場所があると話が早い
トラブルの種類で、相談先はこう変わる
まず全体を見ておきます。下の図は、東京タクシーセンターの案内と、忘れ物や事故の決まりをもとに、相談先を種類別に並べたものです。

「会社」は、乗った車を走らせているタクシー会社のことです。「その地域のタクシーセンター」は、法律で苦情の処理を任された機関のことで、東京23区と武蔵野市・三鷹市では東京タクシーセンターがその役を担っています。
東京タクシーセンターが受け付ける範囲
東京タクシーセンターの問い合わせの案内によると、受け付けるのは、東京23区・武蔵野市・三鷹市に事業所のあるタクシーについての苦情です。中身は次のようなものです。
- 乗車を断られた(案内では「運送の引受けの拒絶」)
- 乗ったあと途中で降ろされた(「運送の引受けの中断」)
- 接客についての意見
- 運賃や料金についての意見
電話の窓口は苦情調査室(苦情・相談専用)の03-3648-0300で、受付は月曜日から金曜日の午前9時から午後5時までです。祝日と12月29日から1月3日は受け付けていません。Webのフォームからも申告できます。
センターが受けない苦情
見落としやすいのが、センターが受けない苦情です。苦情・要望のお問い合わせの同意事項には、道路交通法に関わる苦情(あおり運転、タクシーにひかれそうになった、など)と、民事に関わる苦情(運賃の返金など)は受けられず、問い合わせや相談にも答えられない、とはっきり書かれています。

つまり「遠回りされたから差額を返してほしい」は、センターに言っても返金の交渉はしてもらえません。返金を求めるなら、相手は会社です。一方で「遠回りされたようだ。運転手に指導してほしい」という接客や運賃の苦情としてなら、センターの受付の範囲に入ります。同じ出来事でも、何を求めるかで窓口が変わる点に気をつけてください。
あおり運転を受けた、ひかれそうになった、という件は道路交通法の範囲なので、警察に相談します。
東京23区と武蔵野市・三鷹市の外で乗ったとき
東京タクシーセンターの案内には、ほかの地域で乗って会社が分からないときの問い合わせ先も載っています。
| 乗った地域 | 問い合わせ先 | 電話 | 受付 |
|---|---|---|---|
| 東京都の多摩地区(武蔵野市・三鷹市を除く) | 東京ハイヤータクシー協会 三多摩支部(法人の事業者に関するものに限る) | 042-528-1238 | 平日 9:00〜17:00 |
| 神奈川県の京浜地区(川崎市・横浜市・横須賀市・三浦市) | 神奈川タクシーセンター | 045-252-0300 | 平日 9:00〜17:00 |
| 神奈川県の湘南地区(鎌倉市・逗子市・葉山町) | 神奈川県タクシー協会 | 045-241-3577 | 平日 9:00〜17:00 |
| 千葉県 | 千葉県タクシー協会 | 043-215-7221 | 平日 8:30〜17:30 |
| 埼玉県 | 埼玉県ハイヤー・タクシー協会 | 048-863-6431 | 平日 9:00〜17:00(12:00〜13:00を除く) |
| 山梨県 | 山梨県タクシー協会 | 055-262-1212 | 平日 8:30〜17:30(12月28日から1月3日を除く) |
これ以外の地域の窓口は、今回は確かめていません。会社が分かっていれば会社へ、分からなければ乗った地域のタクシー協会に問い合わせるのが近道です。
相談の前に控えておくもの
苦情でも忘れ物でも、窓口が最初に知りたいのは「どの会社の、どの車か」です。会社が特定できないと、センターは調査も通報もできず、忘れ物も探しようがありません。降りる前か、降りた直後に、次のものを控えておきます。

車内で確かめられる表示
旅客自動車運送事業運輸規則の42条1項は、会社に対して、車内に会社の名称と自動車登録番号を、客から見やすいように表示するよう求めています。これはどの地域のタクシーにもかかる決まりなので、いちばん確実に控えられる情報です。

運転者本人を示すものは、地域で違います。東京のような指定地域では、タクシー業務適正化特別措置法13条と施行規則12条にもとづき、運転者証を前面ガラスの内側に、表を車の外へ向けて表示します。指定地域の外では、運転者は乗務員証を乗務中に携行する決まりで、客に見える場所に出す義務まではありません。服装や運転者証の決まりはタクシー運転手の服装の記事にまとめています。
かつては車内に運転者の氏名や写真を掲げる決まりがありましたが、令和5年の省令改正でなくなりました。今は「名前が見当たらない車」があっても不思議ではありません。名前が分からなくても、会社名と登録番号、日時と場所がそろえば、会社がどの乗務のことかをたどる手がかりになります。
領収証は求めれば出してもらえる
運輸規則10条2項は、客から求めがあったとき、会社は受け取った運賃の額を書いた領収証を発行しなければならない、と定めています。東京タクシーセンターの利用者モニター調査(センターニュース2026年9月号)でも、領収書を求めた1,753件のうち1,745件、99.5%で発行されていました。
領収証には会社の名前が載っていることが多く、忘れ物の問い合わせにも使えます。トラブルがあってもなくても、受け取っておくと後で困りません。配車アプリで呼んだ場合は、アプリの利用履歴が同じ役目を果たします。
苦情の出し方と、その後の流れ
実名か匿名かで、扱いが大きく違う
東京タクシーセンターの申告フォームは、実名苦情・匿名苦情・善行・その他の4種類に分かれています。同意事項に書かれた扱いの違いは次のとおりです。

- 実名苦情→氏名と連絡先(電話番号か詳しい住所)の記入が必須。会社が特定できれば内容を調べて指導し、結果を答える。連絡は電話だけで、調査には2週間前後かかる
- 匿名苦情→会社が特定できれば、会社に通報するだけ。内容の調査はしない
- その他→内容によっては対応できない場合がある。調査はしない
「言いっぱなしで構わないから、会社に伝わればいい」なら匿名でも足ります。「何があったのか調べて、どう対処したか知りたい」なら、実名で出す必要があります。
会社にも、説明と記録の義務がある
会社に直接苦情を入れた場合も、決まりがあります。運輸規則3条1項は、運送について苦情を申し出た人に対し、会社は遅れずに弁明(説明)をする決まりです。例外があり、氏名と住所を明らかにしない人には、この義務はかかりません。センターの匿名苦情が通報だけで終わるのと同じ考え方です。
同じ条の2項で、会社は受けた苦情について、苦情の内容、原因を調べた結果、弁明の内容、改善の措置、担当者の5項目を営業所ごとに記録し、1年間保存することになっています。
センターは「悪質な件」だけを扱うわけではない
道路運送法43条の4は、苦情の処理を任された機関に対し、申出があれば相談に応じて助言し、事情を調べ、会社に内容を知らせて早く処理するよう求めなければならない、と定めています。機関は会社に説明や資料を求めることができ、会社は正当な理由なく断れません。
法律上、苦情を受けた機関は動くことが前提になっています。ただし、先に見たとおり、東京タクシーセンターの受付の範囲には限りがあり、匿名なら調査はしません。「どの苦情も調べてもらえる」とも言えない点は、あわせて知っておいてください。
筆者が乗務していたころの苦情の確認
筆者が都内で乗務していた2018年から2020年ごろ、客からの苦情について確認を受けたときは、車に付いていた車載カメラの記録(SDカード)を持ってタクシーセンターへ行き、映像を一緒に見て、何があったのかを確かめました。言った言わないの話も、映像と音声で確かめられるということです。苦情を出す側も、覚えていることを順番どおりに、正確に伝えるのがいちばん確かです。
東京で寄せられた苦情の中身
東京タクシーセンターの令和7年度事業報告書によると、令和7年度に受けた苦情・要望は3,368件でした。令和6年度の2,918件から450件、15.4%の増加です。Webサイトからの受付が2,221件ありました。
このうち、申告者の氏名と連絡先が分かる調査事案が1,199件、分からない匿名事案が2,001件です。苦情の約6割(2,001÷3,200=62.5%)は匿名で出ていることになります。匿名の2,001件のうち、どの会社の車か分かった1,526件(76.3%)が、その会社へ伝えられています。

調査事案1,199件の中身を見ると、最も多いのは接客不良の834件で、約7割(69.6%)を占めます。次が運賃・料金の153件、迂回走行の121件、乗車の拒否の83件、乱暴運転の78件、途中で降ろされた46件です。
これらはあくまで受け付けた件数です。調べた結果、運転手に非があったと認められた件数ではありません。
遠回りの苦情は、1年で約2.8倍に
前の年と比べて目立って増えたのが迂回走行です。令和6年度の43件から121件へ、78件、181.4%増えました。倍率にすると約2.8倍です。運賃・料金の苦情も90件から153件に増えています。

運転手が道を知らない場合の実情と、遠回りを疑ったときの対処は、タクシー運転手が道を知らないときの記事で詳しく書いています。
利用者モニター調査で分かること
センターは、一般の人に実際にタクシーに乗ってもらう利用者モニター調査もしています。センターニュース2026年9月号によると、通報は2,648件。特記事項のうち接客態度に関するものが821件(68.8%)でした。
忘れ物への注意を呼びかけた車は69.9%で、約3割(30.1%)の車では、降りるときに忘れ物の声かけがなかったことになります。声をかけてもらえると思い込まず、降りる前に座席を振り返るのが確実です。
苦情と会社の評価の関係
東京タクシーセンターは法人タクシーの会社を評価する評価制度を運用しています。評価は会社ごとで、乗務員個人の評価ではありません。100点満点のうち接客・サービスが50点で、その中にセンターや関東運輸局へ寄せられた苦情をもとにした苦情事案評価20点が含まれます。

令和7年度に優良と評価された会社は、評価対象280社のうち269社でした。苦情1件でどれだけ点が下がるかは、公表されている資料では確認できませんでした。「苦情を1件出すと、その会社の優良の認定がなくなる」という話は、確かめられる根拠がありません。評価制度の中身はタクシー会社の評価制度の記事にまとめています。
運賃と道順のトラブル
同じ区間でも運賃は変わる
国土交通省の標準運送約款5条では、運賃と料金は、時間貸しなどの契約を除いて、運賃メーターに表示された額によると決まっています。支払いは6条で、降りるときです。
東京23区と武蔵野市・三鷹市の運賃(令和8年4月20日から実施)は、1.0kmまでが500円、その先は232mごとに100円が足されます。加えて、時速10km以下で走っている時間が1分25秒たつごとにも100円が足されます。夜22時から5時までは2割増しです。

筆者が都内で乗務していた2018年から2020年ごろ、「ふだんは1,000円で行けるのに今日は1,200円だった。払わなくていいだろう」と言われたことがありました。差の200円は加算2回分です。今の東京の運賃に当てはめると、464m余計に走ったか、信号や渋滞で時速10km以下の時間が2分50秒長かったか、その組み合わせで出る差です。道順が同じでも、道の混み具合だけで起こりえます。
メーターの仕組みはタクシーメーターの記事で説明しています。
遠回りを疑ったら
標準運送約款の全文を「経路」「迂回」「遠回り」で探しても、道順を決めた条文は見当たりませんでした。道順は、客と運転手のやりとりで決まるということです。行きたい道があるなら、乗ってすぐに「この道で」と伝えるのが、いちばんもめません。
それでも遠回りされたと感じたら、会社名と登録番号、乗った場所と降りた場所、時刻、運賃を控えます。差額を返してほしいなら会社に直接相談します。返金されるかどうかは会社の判断で、決まった基準はありません。運転手への指導を求めるなら、東京ならセンターにも申告できます。
反対に、乗務していたころ、客から「新宿から品川まで10分で着け」と強く求められたこともありました。道の混み具合は運転手にも変えられません。時間が決まっている用事なら、急がせるより、余裕を持って乗るほうが確実です。
乗車拒否と、途中で降ろされたとき
道路運送法13条は、タクシーの会社に、決められた場合を除いて運送の引受けを拒絶してはならないと定めています。断ってよい場合は、法律と運輸規則13条、約款4条に並んでいます。

約款4条であげられている主なものは、行き先をはっきり言えないほど、または人の助けがないと歩けないほど酔っている客、刃物など持ち込めない物を持っている客、車内を汚すおそれのある不潔な服装の客、付添人のいない重病者などです。
逆に言えば、「距離が短いから」「その方面へは行きたくないから」という理由は、この一覧のどこにも入っていません。乗る前に行き先を聞かれて断られた、乗ったあとで行き先を告げたら降ろされた、というときは、日時と場所、会社名と登録番号を控えて相談できます。令和7年度の東京では、乗車の拒否が83件、途中で降ろされた件が46件、調査事案として受け付けられています。
回送板を出した車は、断っているわけではない
運輸規則50条6項では、食事や休憩で客を乗せられないとき、乗務を終えて車庫や営業所へ戻るときには、回送板を出さなければなりません。7項で、それ以外の場面で出すことは禁じられています。

回送中の車が止まらないのは、決まりに沿った動きです。ただ、回送板を出したまま客を選んでいるように見えたときは、同じように控えて相談できます。
筆者は、都内で乗務していた2018年から2020年ごろ、道順や接客を学ぶために客としてもタクシーによく乗っていました。その中で、手を挙げたのに乗せてもらえなかったことがありました。行き先が近いと分かった途端にため息をつかれたり、行き先を告げても返事がなかったり、降りるときに一言もなかったりした車もありました。どれも運転手の側が気をつければ防げることで、苦情の多くが接客不良に集まっている数字とも重なります。
忘れ物をしたとき
東京タクシーセンターの忘れ物の案内は、センターでは忘れ物を扱っていないと明記しています。手順は、会社が分かるかどうかで分かれます。

- 会社が分かるとき→領収証や配車アプリで分かった会社に連絡する
- 会社が分からないとき→最寄りの警察署か交番に届け出る
センターの案内には、タクシーの車内の忘れ物は会社で保管したあと警察署に届けられる、とも書かれています(会社によって扱いが違う場合があるという注記つき)。
配車アプリで呼んだとき
配車アプリGOのサポートページでは、アプリの利用履歴の詳細から会社の営業所を確かめ、直接連絡する手順が案内されています。履歴の画面に「忘れ物のお問い合わせ」のボタンがあれば外部のページへ進み、なければ会社に電話します。履歴が確認できないときや、スマートフォンなどの端末そのものを忘れたときは、アプリのお問い合わせかフォームから、登録の電話番号・名前・乗車日時を書いて問い合わせます。
見つからないときは警察に届いていることもあるので、警察への相談も考えるよう書かれています。ほかの配車アプリの違いは配車アプリの記事にまとめています。
警視庁の落とし物検索
東京都内で拾われた物は、警視庁の落とし物検索で探せます。持ち主が分かっていない落とし物を、警察に届いた日から3か月間(埋蔵物は6か月間)公表しています。名前の書かれた物や携帯電話のように、持ち主が分かった物や持ち主に連絡がついた物は載りません。問い合わせは平日の午前8時30分から午後5時15分までです。スマートフォンやクレジットカードは、契約している会社にも連絡するよう案内されています。
法律で決まっている期限
遺失物法2条5項は、「施設」に車両などの移動する施設も含まれ、管理する人が常にいるものと定めています。タクシーが個々の場面でこれに当たるかは状況によるので断定しませんが、施設にあたる場合の流れは次のとおりです。

- 施設の中で拾った人は、24時間以内に施設の管理者に渡す
- 拾った人や施設の管理者は、1週間以内に警察署長に出す(大量に扱う特例の施設は2週間以内)
- 警察は3か月間、公告を続ける
- 3か月たっても持ち主が分からず、所有権を得る人もいないときは、都道府県などのものになる(37条)。身分証や個人情報の書かれた物などは、拾った人が所有権を得られない(35条)
物が返ってきたとき、持ち主は物の価格の5%以上20%以下の報労金を払うと28条で決まっています。施設の管理者がいる場合は、拾った人と管理者で半分ずつです。価格1万円の物なら、報労金は500円から2,000円の範囲になります。
事故やけががあったとき
乗っている間に事故があったとき、会社と乗務員が何をするかは運輸規則で決まっています。

- けが人がいれば、すぐに応急手当などの必要な措置をとる(19条)
- 亡くなった人や重傷者がいれば、すぐに家族に知らせる(19条)
- 客の持ち物を保管する(19条)
- 運行が途中で止まったときは、運送を続けるか、出発地まで送り返すなどして客を守る(18条)
49条1項は、乗務員にも同じことを求め、そのうえで「旅客の生命を保護するための処置は、他の処置に先んじてしなければならない」としています。会社は事故の内容を、乗務員の氏名や発生の日時と場所、原因、再発防止の対策など8項目で記録し、3年間保存する決まりです(26条の2)。
賠償はどう決まっているか

自動車損害賠償保障法3条は、自分のために車を走らせている者が、その運行で他人の体を傷つけたときは損害を賠償する責任を負う、と定めています。タクシーでは、車を運行させている会社がこれにあたります。ただし、注意を怠らなかったことなどを証明した場合は除かれる、というただし書があります。
16条では、被害者が保険会社に対して、保険金額の範囲で直接支払いを求めることができます。約款8条も、運送に関して客が受けた損害を会社が賠償すると定めています(こちらもただし書つき)。
いくら払われるかは、事故ごとに違います。この記事では結果の目安は書きません。けがをしたら、まず手当てを受け、会社名と登録番号、日時と場所を控えて会社に連絡し、やりとりの記録を残してください。タクシーの事故の件数や運転手の責任についてはタクシーの危険の記事で書いています。
客の側にも決まりがある
トラブルは、運転手の側だけから起きるわけではありません。標準運送約款には、客が守ることも書かれています。

- 運賃はメーターの表示額で、降りるときに払う(5条・6条)
- 運送の安全のために運転手が出す職務上の指示に従う(2条)
- 禁煙の車でたばこをやめないと、運送を断られることがある(4条の2)
2026年10月1日からは、改正された労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、客などからの社会通念上許される範囲を超えた言動から働く人を守るための体制づくりが、会社の義務になります。同じ法律の34条5項は、客の側にも、働く人に対する言動に必要な注意を払うよう努めることを求めています。会社に課される対策の中身は女性タクシー運転手の記事でも触れています。
運賃に納得がいかないときも、その場で支払いを拒むより、払ったうえで領収証を受け取り、会社に説明を求めるほうが、話は早く進みます。
よい運転手に、お礼を伝えるには
窓口は、苦情のためだけのものではありません。助けてもらったときの感謝も伝えられます。

- 会社に連絡する→会社名は車内の表示や領収証で分かる
- 東京タクシーセンターの善行フォーム→お褒めの言葉や人命救助などを申告でき、会社が特定できれば内容が会社に伝えられる。公益財団法人小さな親切運動本部に推薦されることもある(案内)
- 配車アプリの乗車評価→GOの場合、降りてから24時間以内なら入力でき、会社や乗務員へのお礼として使える。コメントへの返信はない(サポートページ)
筆者が都内で乗務していた2018年から2020年ごろには、客の忘れ物を家まで届けた運転手や、行き先の場所がはっきりしない客と一緒に探し回った運転手もいました。会社に届く連絡は、どうしても苦情が多くなります。よい対応を受けたときに一言伝えてもらえると、その運転手の励みになるだけでなく、会社がどんな対応を大事にするかにもつながると筆者は考えています。
この記事で訂正したこと
この記事は、以前の同じページの内容を、一次情報で確かめて書き直したものです。以前の内容から改めた点は次のとおりです。

| 以前の記述 | 改めた内容(根拠) |
|---|---|
| タクシーセンターは本当に悪質な場合でないと対応しない | 苦情の申出があれば、相談・助言・調査・会社への通知をしなければならない(道路運送法43条の4)。受けないのは道路交通法の件と、運賃の返金などの民事の件(東京タクシーセンター) |
| 助手席の前に必ず乗務員証があり、名前と会社名が書いてある | 指定地域では運転者証を前面ガラスの内側に表示し、指定地域の外では乗務員証の携行。どこでも車内に表示されるのは会社名と自動車登録番号(運輸規則42条1項)。運転者の氏名や写真の掲示は令和5年の改正で廃止 |
| センターに苦情を入れると、会社全体の優良ステッカーが取り上げられる | 評価は会社ごとで、苦情事案評価は100点満点のうち20点の枠。苦情1件で何点下がるかは公表資料で確認できない |
| 個人タクシーは態度が悪い人が多い | 個人と法人の接客を比べた統計は確認できなかったため削除 |
| 特定の大手の会社の車を選ぶとよい | 特定の会社は勧めないため削除 |
| 無茶を言う客は、逆に訴えられることがある | 根拠が確認できないため削除。客が守る約款の決まり(運賃はメーターの表示額、運転手の安全のための指示に従う)に置き換え |
| 苦情の出し先は会社とタクシーセンターの2つ | 忘れ物は会社か警察、事故は会社と保険、道路交通法の件は警察、返金は会社。トラブルの種類で窓口が違う |
よくある質問
運転手の名前が分からなくても苦情は出せますか
出せます。車内に表示された会社名と自動車登録番号、乗った日時と場所が分かれば、会社がどの乗務のことかをたどる手がかりになります。指定地域では前面ガラスの内側の運転者証、それ以外の地域では運転者が携行する乗務員証で名前を確かめられる場合もあります。
東京タクシーセンターに言えば、運賃を返してもらえますか
返金の交渉はしてもらえません。センターの同意事項は、運賃の返金などの民事に関わる苦情は受けないと明記しています。返金を求めるなら会社に直接相談してください。返金されるかどうかは会社の判断です。
匿名で苦情を出しても意味はありますか
会社が特定できれば、センターから会社へ内容が通報されます。令和7年度は匿名事案2,001件のうち1,526件が会社に通報されました。ただし匿名では調査も結果の回答もありません。調べてほしいなら実名で出す必要があります。
実名で苦情を出すと、結果はいつ分かりますか
東京タクシーセンターの案内では、調査に2週間前後かかり、結果の連絡は電話だけです。申告には氏名と連絡先の記入が必要です。
あおり運転をしたタクシーはどこに通報しますか
警察です。東京タクシーセンターは、あおり運転やひかれそうになった件など、道路交通法に関わる苦情は受けないとしています。会社名と登録番号、日時と場所を控えておくと伝えやすくなります。
領収証をもらい忘れて会社が分かりません。忘れ物はどうすれば
最寄りの警察署か交番に届け出てください。配車アプリで呼んだ場合は、アプリの利用履歴から会社が分かります。東京都内なら、警視庁の落とし物検索で、警察に届いてから3か月間は公表されている落とし物を探せます。
タクシーの中で拾われた忘れ物に、お礼は必要ですか
遺失物法28条は、物が返ってきたとき、持ち主は価格の5%以上20%以下の報労金を払うと定めています。施設の管理者がいる場合は拾った人と半分ずつです。タクシーの中で拾われた物が個々の場面でどう扱われるかは状況によるので、会社か警察に確かめてください。
「近いから」と乗車を断られました。違反ですか
道路運送法13条は、決められた場合を除いて運送の引受けを拒絶してはならないとしています。距離が短いことは、法律や約款があげる断ってよい場合に入っていません。日時と場所、会社名と登録番号を控えて、会社か、東京ならタクシーセンターに相談できます。
まとめ
タクシーのトラブルは、種類ごとに窓口を分けて考えると迷いません。
- 接客・乗車拒否・途中で降ろされた件・運賃の疑問は、会社か、その地域のタクシーセンターへ
- 運賃の返金は会社と。あおり運転などは警察へ。東京タクシーセンターはどちらも受けない
- 実名の苦情は調査して2週間前後で電話回答、匿名は会社へ通報のみ
- 会社は、名前と住所を明かした人に遅れずに説明する義務がある
- 令和7年度の東京の苦情・要望は3,368件。遠回りの苦情は前の年の約2.8倍
- 車内で確実に控えられるのは、会社名と自動車登録番号
- 忘れ物は、会社が分かれば会社へ、分からなければ警察へ。都内は警視庁の検索が3か月使える
- 事故のときは客の命を守る処置が最優先。賠償は自賠法と約款に決まりがある
- よい対応へのお礼も、会社やセンターのフォーム、アプリの評価で伝えられる
窓口と決まりは、ここに書いた2026年9月29日の時点のものです。受付の時間や範囲は変わることがあるので、相談の前に各窓口の案内を確かめてください。




