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燃料代の大きさと車の台数は東京ハイヤー・タクシー協会の白書、費用負担は国土交通省の事務連絡と労働基準法、税は各税法、距離の上限は運輸規則と関東運輸局長の公示(東京タクシーセンターのハンドブック掲載)、ガソリンの値段と給油所の数は資源エネルギー庁の公表資料です。いずれも2026年9月29日に確認しています。筆者の体験は、都内で乗務していた2018年から2019年ごろのものです。
タクシーの運転手になろうと考えたとき、意外に気になるのが燃料代です。1日に何百キロも走る仕事なので、もし自分の財布から出すことになれば、手取りは大きく変わります。
先に答えを書くと、会社に雇われて乗る運転手なら、燃料代は会社が持つのが通常の形です。ただし、法律に「燃料代は会社が払う」と一律に定めた条文があるわけではありません。ここでは、国の文書に何が書いてあるか、燃料代が実際にいくらかかっているか、なぜガソリンではなくLPGなのか、そして走れる距離の上限まで、原文を確かめながら順に説明します。

結論。雇われて乗る運転手の燃料代は、会社が持つのが通常の形
- 会社に雇われる運転手は、燃料代を会社が持つのが通常の形です。国土交通省の事務連絡も、燃料費を「タクシー事業者が負担すべき諸経費」の例に挙げています。
- 給料から燃料代を差し引くには、労働基準法24条にもとづく書面の協定などが必要です。
- 個人タクシーは自分の事業なので、燃料代は自分で払い、事業所得の必要経費になります。
- 東京のタクシーの燃料は、ほとんどがガソリンではなくLPG(液化石油ガス)です。LPGとLPGハイブリッドで94.8%を占めます。
- 燃料代の重さは、東京の法人タクシーで原価の3.7%、1台1日に約2,285円です。費用の中心は人件費で、75.7%あります。
- 走れる距離は、東京などの指定地域で1乗務あたり隔日勤務365km、日勤270kmまでです。
燃料代を払うのは誰か。働き方で3つに分かれる

会社に雇われて乗る運転手
タクシー会社の車は会社のもので、燃料もその車を動かすための費用です。国土交通省が2026年2月26日に出した事務連絡「自家用車活用事業の運用改善等について」は、日本版ライドシェアの費用について、次のように書いています。
「日本版ライドシェアの実施に当たって必要な諸経費(下記参照)については、通常のタクシー事業において、タクシー事業者が負担している諸経費と同様に、タクシー事業者が負担することにより、一般ドライバーの適切な労働条件の確保に万全を期していただくよう、管区内の事業者に周知徹底されたい。」
そして「タクシー事業者が負担すべき諸経費の例」の一つめに、「燃料費または相当額の手当」を挙げています。国が、通常のタクシー事業では事業者がこうした費用を負担している、という前提で書いていることがわかります。
一方で、法律の条文として「燃料代は会社が払う」と一律に定めたものは、今回調べた範囲では見当たりませんでした。そのため「どの会社でも必ず会社負担」とは言い切れません。確かめ方は、この記事の後半に書きます。
給料から差し引くには、書面の協定が要る
労働基準法24条は、賃金は「その全額を支払わなければならない」と定めています。例外として給料の一部を差し引けるのは、法令に定めがある場合か、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数を代表する者)と「書面による協定がある場合」です。燃料代を給料から引く会社であれば、その協定があるはずなので、入社前に中身を見せてもらうとよいでしょう。
個人タクシー
個人タクシーは、運転手自身が事業者です。車も燃料も自分で用意するので、燃料代は自分で払います。所得税法37条は、事業所得の必要経費を「総収入金額を得るため直接に要した費用の額」などと定めていて、仕事で使う燃料代はここに入ります。
日本版ライドシェアの運転手
二種免許を持たない人が自家用車で乗る日本版ライドシェアは、2024年3月に制度が作られました。先ほどの事務連絡のとおり、国は燃料費または相当額の手当をタクシー事業者が負担するよう、各運輸局に周知を求めています。
燃料代は1台1日いくらか。東京の白書の数字
燃料代が会社の負担だとしても、どのくらいの額なのかを知っておくと、会社の事情が見えてきます。東京ハイヤー・タクシー協会の白書「TAXICABS IN TOKYO 2026」に、東京の法人タクシーの費用の内訳が載っています。

令和6年度、特別区と武蔵野市・三鷹市の標準的な事業者29社の原価のうち、燃料油脂費は3.7%でした。人件費が75.7%と大半を占めていて、白書も「タクシー事業は労働集約型産業です」と書いています。
燃料油脂費の割合は、年度によって上下しています。平成28年度は7.0%でしたが、令和2年度には3.3%まで下がり、令和3年度は4.8%に戻りました。令和5年度と令和6年度は、どちらも3.7%です。

1台1日の額に直すと、約2,285円
白書には、タクシー1台が1年に納める税の表もあります。その中の消費税の欄で、燃料油脂費を「6年度運送収入61,753円の3.7/100」として、1日2,285円と計算しています。1年に直すと、2,285円×365日で834,025円、約83万円です。

この額は「燃料油脂費」という区分のもので、ガスの代金だけを分けた数字は白書に載っていません。同じ表では、年間の走行を87,732km(1日243.7km)、燃費を1リットルあたり16.5kmとして、年間に使う量を5,317リットルとしています。1日あたりにすると約14.6リットルです。
歩合で給料が決まる仕組みはタクシーの歩合と給料の決まり方、1日の営業収入の数字はタクシーの1年の営業記録で詳しく書いています。
なぜタクシーはLPGで走るのか
「ガソリン代」と言われることが多いのですが、東京のタクシーの多くはガソリンで走っていません。燃料はLPG(液化石油ガス)で、給油所ではなくLPGのスタンドで入れます。

白書の「燃料別タクシー車両数」では、令和7年3月31日現在の27,916台のうち、LPGハイブリッドが20,307台、LPGが6,161台でした。合わせて26,468台、94.8%です。JPN TAXIは、2017年10月に発売されたLPGハイブリッドの車です。
残りは、ハイブリッド843台(うち368台はLPGでも走れるよう改造した車)、ガソリン車323台、EV195台などです。筆者が乗っていたころも、プリウスやアルファード、セレナのような市販の車をタクシーにしている会社がありました。そうした車はガソリンで走るので、ふつうの給油所で入れます。その場合も、入れる店は会社が決めていることがほとんどでした。
全国で見ても傾向は同じです。日本LPガス協会は、LPG車は全国に約17万台あり、「特にタクシーでは、全体のおよそ8割がLPG車となっています」と書いています。LPGのにおいについてはタクシーの車内のにおいの記事で触れています。
LPGを使う理由1。昔から排気がきれいな燃料とされてきた
白書によると、東京の法人タクシーは昭和37(1962)年から、NOx(窒素酸化物)、SPM(浮遊粒子状物質)、SOx(硫黄酸化物)などの排出が少ない燃料としてLPガスを使っています。2026年で64年になります。
LPGを使う理由2。燃料にかかる税が軽い
燃料代の差には、税の差がはっきり表れます。石油ガス税法10条の税率は「課税石油ガス一キログラムにつき、十七円五十銭」で、白書は1リットルあたり9円80銭として計算しています。
ガソリンは、揮発油税法9条の1キロリットルあたり24,300円と、地方揮発油税法4条の4,400円で、1リットルあたり合計28.7円です。上乗せされていた当分の間の税率は、租税特別措置法の改正で2025年12月31日に廃止されました。それでも、1リットルあたりの税はガソリンがLPGの約2.9倍あります。

白書と同じ年5,317リットルをガソリンで使ったと仮定すると、税は5,317×28.7で152,598円になります。LPGの石油ガス税52,107円との差は、1台1年で約10万円です。同じ燃費で走れたとした単純な試算で、実際の車どうしを比べた数字ではありません。
LPGの値段は、この10年で上がっている

白書の「LPG価格の推移」では、1リットルあたり平成28年の58.57円から、令和7年は101.90円まで上がりました。1.74倍です。白書は、国土交通省がLPガスを使うタクシー事業者に「燃料高騰相当分を支援する「燃料価格激変緩和対策事業」」を実施していることも書いています。
ガソリンのほうは、資源エネルギー庁の石油製品価格調査で、2026年9月14日のレギュラーが全国169.9円、東京168.6円でした。2025年の全国の週ごとの値を平均すると176.77円です。ただ、白書のLPG価格とこの調査は、調べた主体や方法が同じとは確かめられていません。並べると差は大きく見えますが、「LPGは何円安い」と一つの数字で言い切ることはしません。
LPGの弱み。入れられる場所が少ない

資源エネルギー庁の集計では、ガソリンの給油所は令和7年度末で26,412か所です。これに対し、全国LPガス協会の資料では、LPGのスタンド(オートガススタンド)は平成17年度の1,800か所から、平成31年度には1,396か所まで減っています。年がそろっていないので細かい比較はできませんが、けた違いに少ないことは確かです。
日本LPガス協会のページでは、スタンドは全国で約1,500か所とされ、教習所や会社の営業所など、使う側の敷地に置く「簡易型LPガススタンド」もあると書かれています。
1乗務で何回入れるか。燃費とタンクの量

JPN TAXIの主要諸元表では、燃費はWLTCモードで16.5km/L(匠。和は16.6km/L)です。市街地モードは18.1、郊外は17.0、高速道路は15.6です。燃料タンクは58Lですが、注意書きに「LPG車は、燃料タンク容量の75% 〜80%程度しか入れることができません」とあります。1回に入るのは、計算で約43.5〜46.4Lです。
筆者が以前乗っていたコンフォートは、日本LPガス協会の表でLPG・タクシー用として9.8km/lです。ただしこの表には、どの試験方法の値かが書かれていません。
カタログの燃費は、あくまで決まった条件で測った値です。諸元表も、気象や渋滞、急発進、エアコンの使い方で燃費は変わると断っています。白書が前提にする1日約14.6リットルは、JPN TAXIに1回に入る量の3分の1ほどですが、実際の乗務ではもっと多く使う日があります。
筆者の場合。コンフォートは2回、JPN TAXIは1回

筆者が都内で乗務していた2018年から2019年ごろ、最初に乗っていたのはコンフォートでした。当時の感覚では、1リットルで5km前後しか走らず、1回の乗務で2回ガスを入れていました。1回は営業の途中、もう1回は会社に戻る直前です。
車がJPN TAXIに替わってからは、燃費の感覚は1リットルあたり10〜13kmほどになり、戻る前の1回で済む日が多くなりました。どちらの車でも、会社には満タンにして返すのが基本だったので、少なくとも1回は必ず入れていました。
車は2人で1台を受け持っていて、ほぼ毎日どちらかが乗っていました。LPGのタンクは、トランクの奥に積まれていました。1日の流れはタクシー運転手の生活リズムの記事にもまとめています。
入れる場所は会社が決めている
筆者のいた会社では、ガスを入れてよいスタンドが何か所か決まっていて、「できればこの店で」と頼まれることもありました。会社とスタンドの間の取り決めで、値段の条件が違うためだと聞いていました。
遠くまでお客さんを送った帰りなどで、指定の店まで持ちそうにないときは、先に会社へ一報を入れれば、別の店で入れても認めてもらえることがほとんどでした。途中でガスが切れて動けなくなるほうが、会社にとっても損が大きいからです。一方で、指定の店以外で入れると運転手の自腹にする会社もある、という話も当時は耳にしました。会社ごとに扱いが違うので、入る前に確かめておくことをすすめます。
走れる距離の上限。1乗務で隔日365km、日勤270km
燃料の話とあわせてよく出てくるのが、タクシーは1日に何キロまでしか走れない、という決まりです。これは燃料ではなく、運転手の働きすぎを防ぐための決まりです。

誰が、どこに決めているか
旅客自動車運送事業運輸規則22条は、地方運輸局長が指定した地域に営業所がある事業者は、地方運輸局長が定める「乗務距離の最高限度」を超えて運転手を乗務させてはならない、と定めています。数字そのものは法律ではなく、運輸局長の公示で決まります。
関東では、東京タクシーセンターの「タクシー街頭営業ハンドブック」が平成21年12月17日の関東運輸局長公示を載せています。そこでは「1乗務(出庫から帰庫までの連続した勤務をいう。)当たりの乗務距離の最高限度を、隔日勤務については365km、日勤勤務については270kmとする」とされています。1日あたりではなく、出庫から帰庫までの1回の乗務あたりです。
対象の地域は、東京の特別区・武三、北多摩、南多摩、西多摩、神奈川の京浜、県央、湘南、千葉の京葉、埼玉の県南西部(一部の市町村を除く)の、9つの交通圏です。ハイヤーは対象から外れます。
高速道路などの距離は差し引ける

公示には続きがあり、「高速自動車国道及び自動車専用道路」を使った場合は、その距離を差し引くとしています。ただし、首都高速道路の管理する自動車専用道は差し引く対象から外されています。首都高を走った距離は、365kmの中に数えます。
差し引いたときは、路線名、走った区間、走行距離、走った時刻、料金を乗務記録に書くことになっています。運輸規則25条3項でも、乗務の始めと終わりの走行距離計の数字を記録することが求められています。
なぜ距離に上限があるのか
国土交通省の通達は、この決まりの目的を、流し営業が中心の地域で「歩合制賃金を背景として無理に営業収入増を図るため、乗務距離を稼ごうとするあまり過労運転や最高速度違反が生じやすい」状況を防ぐことだと説明しています。高速道路などの距離を考えに入れてよいのは、勤務時間の基準などを守ることが前提です。距離から引けるからといって、何時間でも走ってよいわけではありません。
実際の走行距離は、白書によると特別区・武三地区で1日1車あたり244.9km(令和7年度)です。勤務の時間の決まりはタクシー運転手の仕事内容で説明しています。
入社前に確かめたい燃料のこと
燃料代の扱いは会社ごとに違いがありえます。求人票に書かれていないことも多いので、面接や労働条件の書面で次の点を確かめておくと安心です。

- 燃料代は会社の負担か。求人票だけでなく、労働条件の書面でも確かめる
- 燃料代を給料から差し引く取り決めがあるか。あるなら、書面の協定の中身
- ガスを入れてよいスタンドはどこか。営業所の中にスタンドがあるか
- 指定の店まで持たないときの連絡先と、別の店で入れたときの扱い
- 満タンにして返す決まりがあるか
- 乗る車がLPGかガソリンか
給料全体の相場はタクシー運転手の給料の記事にまとめています。
この記事で訂正したこと
この記事は2019年10月30日に公開したものを、2026年9月29日に書き直しました。以前の版には、原文と合わない説明や、出典を確かめられない数字がありました。主なものを並べます。
| 以前の版の記述 | いまの事実 |
|---|---|
| 1日に365kmまで。国土交通省が決めている | 関東運輸局長の公示で、指定地域の1乗務あたり。隔日勤務365km、日勤270km |
| 差し引けるのは東名などの高速自動車国道 | 高速自動車国道と自動車専用道路の距離を差し引く。首都高は差し引かない。差し引いたら乗務記録に書く |
| 首都高は高速道路ではないので除外されない | 公示は理由を書いていない。首都高の道を差し引く対象から外しているだけ |
| 差し引ける道なら何キロ走ってもよい | 勤務時間の基準などは別に守る必要がある |
| LPGはガソリンより30〜40円安い | 出典が見つからない。税は1リットルあたり石油ガス税9円80銭、ガソリンは28.7円 |
| LPGはエンジンの力が出にくい | 一次情報で確かめられないため削除 |
| 法人タクシーは基本的に会社負担で、指定の店で入れればまず自腹はない(根拠の記載なし) | 一律に定めた条文は見当たらない。国の事務連絡は燃料費を事業者が負担すべき費用の例に挙げている。給料から引くには書面の協定などが要る |

よくある質問
燃料代を自分で払うタクシー会社はありますか
会社に雇われる運転手の燃料代は会社が持つのが通常の形で、国の事務連絡も燃料費を事業者が負担すべき費用の例に挙げています。ただ、会社ごとの扱いをまとめた統計は見つかりませんでした。給料から差し引くなら労働基準法24条の書面の協定などが必要なので、入社前に確かめてください。
タクシーはガソリンスタンドで燃料を入れないのですか
LPGの車は、LPGのスタンドで入れます。東京では94.8%の車がLPGかLPGハイブリッドなので、ふつうの給油所で見かけることは少なくなります。ガソリンで走るタクシーもあり、東京では323台(令和7年3月31日現在)です。
1回の乗務で何回くらい燃料を入れますか
車と走り方しだいです。筆者は2018年から2019年ごろ、コンフォートでは2回、JPN TAXIに替わってからは戻る前の1回で済む日が多くありました。JPN TAXIのタンクは58Lで、LPG車は75〜80%程度しか入りません。
東京から遠くまでお客さんを乗せてもよいのですか
距離の上限は1乗務あたり隔日365km、日勤270kmですが、高速自動車国道と自動車専用道路を走った距離は差し引けます。首都高は差し引けません。差し引いた場合は乗務記録に書き、勤務時間の基準も別に守る必要があります。
個人タクシーの燃料代は経費になりますか
個人タクシーは自分の事業なので、仕事で使う燃料代は所得税法37条の必要経費に入ります。個別の税額や手続きは、税務署などで確かめてください。
まとめ
タクシー運転手の燃料代は、会社に雇われて乗るなら会社が持つのが通常の形です。ただし法律で一律に決まっているわけではないので、入る前の確認は欠かせません。
- 国の事務連絡は、燃料費を「タクシー事業者が負担すべき諸経費」の例に挙げている
- 燃料代を給料から差し引くには、労働基準法24条の書面の協定などが要る
- 個人タクシーは燃料代を自分で払い、必要経費になる
- 東京の法人タクシーの燃料油脂費は原価の3.7%、1台1日約2,285円(令和6年度)
- 東京のタクシーの94.8%はLPGかLPGハイブリッド。1リットルあたりの税は9円80銭で、ガソリンの28.7円より軽い
- LPGの値段は平成28年の58.57円から令和7年は101.90円に上がった
- 走れる距離は、関東の指定地域で1乗務あたり隔日365km、日勤270km。高速自動車国道と自動車専用道路の距離は差し引けるが、首都高は数える
数字と制度は、2026年9月29日に確かめた時点のものです。燃料の値段や支援の制度は変わっていくので、応募する会社には最新の扱いを直接確かめてください。




