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法律と規則はe-Govの条文の原文、運送約款は国土交通省の標準運送約款、苦情の件数は東京タクシーセンターの令和7年度事業報告書、車の台数は東京ハイヤー・タクシー協会の白書「TAXICABS IN TOKYO 2026」です。いずれも2026年9月24日に確認しています。筆者の体験は、都内で乗務していた2018年から2020年ごろのものです。
タクシーに乗った瞬間、たばこのようなにおいや、強い芳香剤の香りが気になったことはないでしょうか。短い時間でも、においが気になると移動の時間はつらくなります。「窓を開けていいのか」「降りてもいいのか」「どこに言えばいいのか」と迷う人も多いと思います。
この記事では、タクシーのにおいについて、法律と業界の決まりで確かめられることを並べます。車内でたばこを吸えない決まり、車を清潔に保つ決まり、乗客ができること、苦情の窓口と件数、運転手が確かめておきたいことの順です。筆者が都内でタクシーに乗務していたときの経験も、時点を付けて書きます。
はじめにお断りしておくと、においの感じ方は人によって違い、何が原因かは車ごとに違います。この記事では「この車のにおいはこれが原因」とは言い切りません。確かめられる決まりと、実際に取れる行動を中心に書きます。

結論。臭いと感じたら、窓を開けるか乗り換えてよい
先に要点を並べます。細かい理由と出典は、このあとの章で書きます。
- タクシーの車内は、健康増進法で喫煙禁止の場所です。客も運転手も吸えません。加熱式のたばこも含みます
- 運転手は、客がいないときも、事業用自動車の中で喫煙してはならないと運輸規則で決まっています
- タクシー会社には、事業用自動車を常に清潔に保持する義務があります(運輸規則44条)
- 臭いと感じたら、運転手にひと声かけて窓を開けるか、エアコンを外気に切り替えてもらうのが手早い方法です
- 降りてほかのタクシーに乗り換えることもできます。運賃はメーターに出ている額を、降りるときに払います
- 苦情は、まず乗った会社(領収書に書いてある)へ。東京の特別区・武蔵野市・三鷹市のタクシーなら、東京タクシーセンターでも受け付けています
旧版のこの記事には、統計で確かめられない数字や、においの原因を運転手の体に結びつける書き方が含まれていました。直した点は、記事の最後の「この記事で訂正したこと」にまとめています。
タクシーの車内でたばこを吸えない決まり
タクシーのにおいで多く思い浮かぶのが、たばこのにおいです。車内のたばこについては、健康増進法という法律と、国土交通省の規則の両方に決まりがあります。
健康増進法は、タクシーの車内を「喫煙禁止場所」にしている
健康増進法は、まず28条9号で「旅客運送事業自動車」を次のように定めています。
「道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による旅客自動車運送事業者が旅客の運送を行うためその事業の用に供する自動車をいう。」
タクシー会社や個人タクシーは、道路運送法の旅客自動車運送事業者です。お客さんを乗せて営業する車は、この「旅客運送事業自動車」にあたります。
そのうえで29条1項は、次のように書いています。
「何人も、正当な理由がなくて、特定施設等においては、次の各号に掲げる特定施設等の区分に応じ、当該特定施設等の当該各号に定める場所(以下この節において「喫煙禁止場所」という。)で喫煙をしてはならない。」
旅客運送事業自動車について定めているのは4号で、その場所は「内部の場所」です。鉄道の車両や船(5号)には「喫煙専用室以外の内部の場所」という言い方で例外の部屋がありますが、タクシーなどの自動車にはこの例外がありません。車の中全体が喫煙禁止の場所です。
主語が「何人も」なので、対象は客だけではありません。運転手も、同乗しているほかの客も、誰であっても吸えないという決まりです。
加熱式のたばこも「喫煙」に入る
28条2号は、「喫煙」を次のように定めています。
「人が吸入するため、たばこを燃焼させ、又は加熱することにより煙(蒸気を含む。次号及び次節において同じ。)を発生させることをいう。」
火を付けるたばこだけでなく、加熱して蒸気を出すものも「喫煙」です。「火を使わないから大丈夫」ということにはなりません。
従わない人には、知事が中止を命じられる
29条2項は、喫煙禁止場所で吸っている人への命令を定めています。
「都道府県知事は、前項の規定に違反して喫煙をしている者に対し、喫煙の中止又は同項第一号から第三号までに掲げる特定施設の喫煙禁止場所からの退出を命ずることができる。」
そして77条1号で、この命令に違反した人は30万円以下の過料です。条文の順番どおりに言うと、車内で吸ったらすぐに過料になるのではなく、知事の中止の命令に違反したときに過料の対象になる、という作りです。

タクシー会社には、灰皿を置かない義務と、中止を求める努力義務がある
30条は、車を管理する側の決まりです。1項で、喫煙禁止場所に「専ら喫煙の用に供させるための器具及び設備」を、使える状態で置いてはならないとしています。灰皿のようなものを、使える形で車内に置けないということです。
30条3項は、次のように書いています。
「旅客運送事業自動車等の管理権原者等は、当該旅客運送事業自動車等の喫煙禁止場所において、喫煙をし、又は喫煙をしようとする者に対し、喫煙の中止を求めるよう努めなければならない。」
30条1項は、「管理権原者等」に車の「管理者」も含むとしています。車内で吸おうとする人がいたら、やめるよう求める努力をする立場にあるということです。

運転手は、客がいないときも車内で吸えない
国土交通省の旅客自動車運送事業運輸規則(以下、運輸規則)は、49条2項で乗務員がしてはならない行為を並べています。その3号が「事業用自動車内で喫煙すること。」です。
49条1項は乗務員を「旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者、車掌その他の乗務員」としていて、タクシーの運転手も含まれます。同じ項の1号(危険な物品の持ち込み)には「旅客の現在する事業用自動車内」という限定が付いていますが、3号の喫煙にはこの限定がありません。客を乗せていない回送中や休憩中も、車内では吸えないということです。

客が車内で吸おうとしたら、運転手は乗車を断れる
国土交通省の一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款(以下、標準運送約款)は、4条の2でこう書いています。
「当社の禁煙車両(禁煙車である旨を表示した車両をいう。次項において同じ。)内では、旅客は喫煙を差し控えていただきます。」
「旅客が当社の禁煙車両内で喫煙し、又は喫煙しようとしている場合、乗務員等は喫煙を中止するように求めることができ、旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受け又は継続を拒絶することがあります。」
運転手はまず中止を求め、それでも応じない客は、乗せない、または途中で降りてもらうことができるということです。標準運送約款は国が示すひな形で、実際の約款は会社ごとに届け出たものです。細かい文言は、乗った会社の約款で確かめられます。

東京のタクシーは2008年に全面禁煙になっていた
法律より前に、業界は自分たちで車内を禁煙にしていました。東京ハイヤー・タクシー協会の白書「TAXICABS IN TOKYO 2026」の歴史のページには、「平成20( 2008 )年には東京のタクシーで「全面禁煙」。」とあります。禁煙タクシー制度の説明では、目的を次のように書いています。
「車内での喫煙に関わる健康被害の防止ならびに快適性の一層の向上を図ることを目的とし、タクシー車内の全面禁煙化を実施しています。」
そのあと、改正健康増進法が2018年7月に成立し、2020年4月1日に全面施行されました。厚生労働省のページは、この改正について「望まない受動喫煙を防止するための取り組みは、マナーからルールへと変わります。」と書いています。東京のタクシーでいえば、業界の自主的な禁煙が先にあり、それが法律の決まりになった、という順番です。
全国のタクシー業界がいつ全面禁煙にしたかは、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の公開資料を調べましたが、書かれたものが見つかりませんでした。この記事では東京の分だけを書いています。

| 決まり | 中身 | 誰に向けたものか |
|---|---|---|
| 健康増進法29条1項4号 | タクシーの車の内部は喫煙禁止場所 | 何人も(客も運転手も) |
| 健康増進法29条2項・77条1号 | 知事の中止の命令に違反すると30万円以下の過料 | 吸っている人 |
| 健康増進法30条1項・3項 | 灰皿などを置かない。吸う人にやめるよう求める努力 | 車の管理者など |
| 運輸規則49条2項3号 | 事業用自動車内で喫煙してはならない | 乗務員 |
| 標準運送約款4条の2 | 禁煙車両で中止に応じない客は運送を断ることがある | 客と乗務員 |
車を清潔に保つ決まり
運輸規則44条は、会社に「常に清潔に保持」を求めている
車の清潔について、運輸規則44条は次のように書いています。
「旅客自動車運送事業者は、事業用自動車を常に清潔に保持しなければならない。」
義務を負うのは運転手個人ではなく、会社(個人タクシーなら事業者本人)です。「常に」とあるので、定期的に洗えばよいというより、営業している間ずっと清潔な状態を保つことが求められています。
ただし、洗車の回数や消臭の方法まで決めた条文は、運輸規則にはありません。41条で会社は「乗務員等の服務についての規律」を定めることになっていて、清掃のやり方はこうした会社の決まりで具体的に決められます。
同じ車を交代で使うときは、車の状況を伝える
タクシーは、1台の車を複数の運転手が交代で使うことがあります。運輸規則50条1項8号は、運転者は「乗務を終了したときは、交替する運転者に対し、乗務中の事業用自動車、道路及び運行の状況について通告すること。」としています。車内の汚れやにおいで気になることがあれば、次の人に伝えておくことも、この流れの中にあると言えます。

不潔な服装の客は、乗車を断られることがある
清潔の決まりは、会社の側だけではありません。運輸規則13条3号は、会社が運送を断れる人として「泥酔した者又は不潔な服装をした者等であつて、他の旅客の迷惑となるおそれのある者」を挙げています。標準運送約款4条10号にも「旅客が車内を汚染するおそれがある不潔な服装をしているとき。」があります。
また標準運送約款10条では、客の故意や過失で会社が損害を受けたとき、会社はその客に損害の賠償を求めるとしています。車内を大きく汚してしまった場合は、清掃の費用などを求められることがあるということです。
運転手の服装や身だしなみについては、タクシー運転手の服装と身だしなみの決まりで、運輸規則と東京の決まりを詳しく書いています。
車内のにおいのもとになりうるもの
ここからは、筆者の乗務経験と、確かめられる決まりから、車内のにおいのもとになりうるものを挙げます。どれが原因かは車ごとに違うので、ここに挙げたものが必ずにおいの原因になるという意味ではありません。
タクシーは走る距離が長く、車内が使われ続ける
筆者が都内で乗務していた2018年から2020年ごろ、乗りはじめたときに総走行距離が5万キロくらいだった車が、1か月ちょっとで6万キロになりました。1台の車を交代で使い、1日に多くの客を乗せるので、自家用の車とは車内の使われ方がまったく違います。
多くの人が乗り降りし、長い時間走り続ける分、車内の汚れやにおいがたまりやすい条件はそろっていると感じていました。

床マットの湿り気
筆者がいた会社では、乗務のあとに洗車をしていました。タイヤの汚れを落とし、ボディを水洗いして拭き取り、足元の床マットは専用の機械で洗います。このとき、洗ったマットを乾かさずに車に戻すと、車内が湿ったにおいになりました。
洗車は自分でするか、業者に1,000円払って任せるかのどちらかでした。これは筆者がいた会社のやり方で、会社によって違います。

車内の汚れ
タクシーでは、体調を崩した客が車内で吐いてしまうことがあります。筆者も一度、車内で吐かれたことがあり、その日は清掃をして家に帰りました。シートを汚されたこともあり、その日の営業はそこで終えました。汚れた車のままでは次の客を乗せられないので、筆者のいた会社では、いったん会社に戻って清掃していました。
筆者がいた会社では、座席のシートカバーを毎週水曜日に業者が交換していました。シートを汚されたときは、シートにもにおいがつきました。
芳香剤の香り
においを消そうとして芳香剤を使うと、今度は香りそのものが気になることがあります。筆者が乗務していたころ、筆者の前方のタクシーから降りてきた夫婦が、筆者の車に乗ってきたことがありました。車内で「前のタクシーの芳香剤ぽい匂いがキツかったね〜」と話していました。
いい香りと感じるかどうかは人によって違います。香りを足すことが、かえって苦手な人を増やすこともあるということです。
換気できない時間
客が途切れずに続く日は、窓を開けて空気を入れ替える間がありません。筆者が初めて1日の営業収入が10万円に届いた日も、次々と客が続き、換気をする余裕はありませんでした。売り上げが伸びる日ほど、車内の空気を入れ替える時間は取りにくくなります。
燃料のにおい
東京のタクシーは、多くがLPG(液化石油ガス)を燃料にしています。東京ハイヤー・タクシー協会の白書によると、令和7年3月31日現在のタクシー27,916台のうち、LPGハイブリッドが20,307台、LPGが6,161台で、合わせて26,468台(94.8%)です。

LPGには、ガス漏れに気づけるように、わざとにおいが付けてあります。液化石油ガス保安規則8条2項2号ロは、LPGスタンドで車に入れるときの基準として、次のように定めています。
「空気中の混入比率が容量で千分の一である場合において感知できるようなにおいがするものを充塡すること。」
空気中に1,000分の1混ざっただけで気づけるにおいが付いている、ということです。旧版の記事では、このにおいを「タマネギが腐ったような臭い」と書いていましたが、この言い方は公的な資料で確かめられなかったので削りました。
走っている車の中でガスのようなにおいが続くときは、においの好みの問題ではなく、車の点検が必要な可能性があります。運転手に伝えてください。


| においのもとになりうるもの | 筆者の経験や決まり | 乗客ができること |
|---|---|---|
| 床マットの湿り気 | 乾かさずに戻すと湿ったにおいになった | 窓を開ける、外気に切り替えてもらう |
| 車内の汚れ | 汚れたらその日の営業を終えた | 気づいたら運転手に伝える |
| 芳香剤の香り | 強すぎて乗り換えた客がいた | 香りが苦手だと伝える、乗り換える |
| 換気できない時間 | 客が続く日は窓を開ける間がなかった | 窓を開けてよいか聞く |
| 燃料のにおい | LPGにはにおいが付けてある | 続くときは運転手に伝える |
臭いと感じたときに乗客ができること
運転手にひと声かけて、窓を開ける
いちばん手早いのは、窓を開けることです。窓を開けることを禁じた決まりは見当たりませんが、運転手が冷暖房を入れていたり、雨や高速道路で開けないほうがよい場面もあります。「少し窓を開けてもいいですか」とひと声かけてから開けるのが、お互いに気持ちのよい方法です。
寒い日や雨の日は、エアコンを外気の取り込みに切り替えてもらうだけでも、車内の空気は入れ替わりやすくなります。
においのことは、その場で伝えてよい
運転手が、車内のにおいに気づいていないこともあります。筆者のいた会社からも、においについて特別な指示はありませんでした。「少しにおいが気になって」と伝えてもらえれば、窓を開ける、芳香剤を外すなど、その場でできることがあります。

降りて、ほかのタクシーに乗り換えてもよい
どうしても我慢できないときは、途中で降りてほかのタクシーに乗り換えられます。運賃について、標準運送約款5条2項は「運賃料金メーター器の表示額によります」とし、6条は「当社は、旅客の下車の際に運賃及び料金の支払いを求めます。」としています。
つまり、降りるときに、そこまでメーターに出ている額を払います。旧版の記事では「初乗り運賃だけは払う」と書いていましたが、乗った距離や時間によってはメーターが初乗りより進んでいるので、「そこまでのメーターの額」と直しました。

たばこのにおいがするときは
車内にたばこのにおいがするとき、それが前の客のにおいが残っているのか、誰かが車内で吸ったのかは、乗った側には分かりません。ただ、先に書いたとおり、タクシーの車内は誰であっても吸えない場所です。たばこのにおいが気になったときは、乗り換えたうえで、次の章の窓口に伝えることができます。
においの苦情はどこに伝えるか
まず、乗ったタクシー会社へ
東京ハイヤー・タクシー協会の白書は、苦情の受付について次のように書いています。
「タクシー利用時の苦情については、ご利用いただいたタクシー会社(領収書記載)において対応するとともに、同センターにおいても専用電話 03(3648)0300及びホームページで受付し、十分な対応と処理の徹底に努めています。」
まずは、乗った会社に伝えるのが基本です。会社名は領収書に書いてあるので、においが気になった乗車では、領収書をもらっておくと後で伝えやすくなります。車の番号や乗った時刻が分かると、会社も車を特定しやすくなります。
東京の特別区・武蔵野市・三鷹市なら、東京タクシーセンターでも受け付けている
東京タクシーセンターは、東京特定指定地域(特別区、武蔵野市及び三鷹市)に事業所のあるタクシーについて、苦情や要望を受け付けています。電話は苦情調査室の03-3648-0300で、受付は月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで(祝日と12月29日から1月3日を除く)です。Webのフォームからも受け付けています。
受付ページに挙がっている内容は、乗車拒否、途中で降ろされた、接客関係、運賃料金関係です。「におい」という項目はありませんが、乗車したときの意見として伝えることはできます。これ以外の地域では、乗った会社に伝えてください。

伝えるときに、書いておくとよいこと
においの苦情は、あとから確かめるのが難しい内容です。その場にいなかった人に伝わるように、次のことを控えておくと、会社も車と運転手を特定しやすくなります。
- 乗った日時と、乗った場所・降りた場所
- 会社名(領収書に書いてある)
- どんなにおいだったか(たばこ、芳香剤、湿ったにおいなど)
- 運転手に伝えたかどうか、そのときの対応
- 途中で降りた場合は、そのときに払った額
においの感じ方は人によって違うので、「臭かった」だけより、どんなにおいで、どのくらい続いたかを書いたほうが伝わります。感情的な言葉より、あったことを順に書くほうが、読む側に伝わりやすくなります。
| 伝える先 | 受け付ける範囲 | 方法 |
|---|---|---|
| 乗ったタクシー会社 | その会社の車 | 領収書に書いてある会社へ |
| 東京タクシーセンター 苦情調査室 | 特別区・武蔵野市・三鷹市に事業所のあるタクシー | 電話03-3648-0300(平日の午前9時から午後5時)、Webのフォーム |
| 厚生労働省 受動喫煙対策に係るコールセンター | 改正健康増進法に関する質問や意見 | 電話0120-251-262(9時30分から18時15分、土日・祝日を除く) |
厚生労働省のコールセンターは、受動喫煙の決まりについての質問や意見を受け付ける窓口です。個別のタクシーへの苦情は、乗った会社か、東京なら東京タクシーセンターに伝えるのが先です。
東京タクシーセンターの苦情は、令和7年度に3,368件
東京タクシーセンターの令和7年度事業報告書は、件数を次のように書いています。
「令和 7 年度の苦情・要望受付総件数は 3,368 件で、前年度比 450 件(15.4%)増加した。」
内訳は、名前と連絡先が分かる調査事案が1,199件、名前や連絡先が分からない匿名事案が2,001件です。Webサイトからの受付は2,221件でした。
名前と連絡先が分かる苦情について、報告書は「タクシー事業者及びタクシー運転者に申告内容を連絡し、事実関係を調査、確認したうえで是正指導を行い」と書いています。申告した内容は会社と運転者に伝えられ、事実を確かめたうえで指導につながるということです。軽い内容の苦情では、Web会議を使って事実を確かめる調査も15件行われています。

| 区分(調査事案) | 令和7年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 運送の拒絶関係 | 129件 | 140件 |
| 接客不良 | 834件 | 1,053件 |
| 乱暴運転 | 78件 | 72件 |
| 運賃・料金関係 | 153件 | 90件 |
| その他 | 5件 | 14件 |
| 要望 | 51件 | 33件 |
| 調査事案の合計 | 1,250件 | 1,402件 |
| 匿名(苦情と要望) | 2,118件 | 1,516件 |
| 総合計 | 3,368件 | 2,918件 |
この区分に、「におい」や「車内の清潔」はありません。においの苦情がどの区分に数えられているかは、報告書には書かれていません。においの苦情だけの件数は、公表された資料からは分かりません。旧版の記事でも、においの苦情がどのくらいあるかは書けていませんでした。

名前を出さない苦情も、会社に伝えられている
匿名の苦情について、報告書は次のように書いています。
「匿名事案においては、内容が具体的で信憑性が高くかつタクシー事業者が特定できた事案 1,526 件(76.3%)について、事業者に通報し適正な改善を求めた。」
名前を出さなくても、内容が具体的で会社を特定できれば、会社に伝わる仕組みです。においを伝えるときも、日時、場所、車の番号や会社名など、具体的に書くほど伝わりやすくなります。
評価制度には「車内の状況」の項目がある
東京タクシーセンターは、タクシー事業者の評価制度も行っています。評価の中には利用者モニターによる評価があり、評価のしくみでは、モニターが見る項目を「①接客態度 ②地理知識 ③運転操作 ④車内の状況 ⑤服装・身だしなみ」としています。
1項目ごとに、良いは+1点、普通は±0点、悪いは-1点で、基礎点数5点に足し引きします。車内の状況は、会社の評価の項目のひとつとして見られているということです。令和7年度の評価の対象は280社です。
東京ハイヤー・タクシー協会の白書によると、この評価制度は平成25年(2013年)4月に始まり、「接客サービス」「安全・運行管理」「経営姿勢」の3面から会社を評価しています。令和5年度(2023年度)からは、評価の高い会社を「優良 AAA / AA / A 事業者」として公表していて、その表示は車の「フロントガラス内側のダッシュボード上に掲出されています」。車内の状況も、こうした会社の評価の一部になっているということです。

運転手が確かめておきたいこと
ここからは、タクシーの運転手や、これから運転手になろうとしている人に向けて書きます。消臭のやり方を決めた法令はないので、ここでは決まりにそって確かめておきたいことだけを挙げます。特定の消臭用品をすすめることはしません。
会社の清掃と洗車の決まり
清潔を保つ義務は会社にありますが、誰が手を動かすかは会社の決まりしだいです。乗務のあとに誰が、どこまで洗うのか。業者に任せるときの費用は誰が払うのか。筆者がいた会社のように、自分で洗うか業者に1,000円で任せるかを選べる会社もあります。入社する前に、会社の服務の決まりとして確かめておくと安心です。
汚れたときの扱い
車内で客が吐いたときや、シートが汚れたとき、その日の営業をどうするか。清掃にかかった時間や費用の扱いはどうなるか。筆者の場合は、その日の営業を終えることになりました。売り上げに直結するところなので、会社の決まりを聞いておきたいところです。
交替するときに伝えること
先に書いたとおり、運輸規則50条1項8号で、乗務を終えた運転者は交替する運転者に車の状況を伝えることになっています。においや汚れで気になることがあれば、次の人に伝えておくと、次の人が乗せる客にも気持ちよく乗ってもらえます。
車内では吸わない
運転手自身がたばこを吸う場合、車内では客がいないときも吸えません(運輸規則49条2項3号)。休憩中に吸うなら、車の外の、吸ってよい場所で吸うことになります。
車の外で吸うときにも決まりがあります。健康増進法27条1項は、喫煙禁止場所以外で吸うときも「望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」としています。吸ってよい場所は、会社の決まりや営業所の案内で確かめておきたいところです。

タクシー運転手の1日の仕事の流れは、タクシー運転手の仕事内容で詳しく書いています。
業界は換気のよい車も進めている
白書によると、ニューノーマルタクシーは「清潔で快適な移動空間の提供を目指したコンセプトカー」で、2020年10月から試験運行をし、2021年2月から順次導入が始まっています。
車内には「L 字型飛沫防止セパレーター、高効率空気清浄機、空気清浄モニター」を置き、白書は約1分間で車内の空気が入れ替わると書いています。業界として車内の空気に取り組んでいる例です。
JPN TAXIと、アプリの名前について
旧版の記事では、「オリンピックに向けて『ジャパンタクシー』という車両が登場し」と書いていました。書いた当時の言い方のままで、いつのことかが分からず、オリンピックとの関係も資料で確かめられなかったので、書き直します。
東京ハイヤー・タクシー協会の白書には、「平成29( 2017 )年10月に発売された JPN TAXI( LPG-HV)」とあります。車の名前は「JPN TAXI」で、LPGハイブリッドの車です。全タク連の資料も「平成29年10月に登場した」と書いています。
名前が似ているものに、配車アプリがあります。アプリ運営会社の沿革によると、2018年9月にアプリの名前が「JapanTaxi」になり、2020年9月にタクシーアプリ「GO」が出ました。車のJPN TAXIと、アプリのJapanTaxiは別のものです。配車アプリについては、タクシーの配車アプリの違いで書いています。

「8割以上が隔日勤務」は確かめられなかった
旧版の記事では、「タクシー運転手の8割以上が隔日勤務」と書いていました。今回、東京ハイヤー・タクシー協会の白書と、全タク連が公開している統計の資料を調べましたが、隔日勤務、日勤、定時制といった勤務形態ごとの人数の割合を示す統計は見つかりませんでした。確かめられないので、この数字は削りました。
全タク連の賃金の資料には、高齢の運転者の賃金について「勤務形態の変化(売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等)が影響している可能性がある」という記述があります。勤務形態が変わっていることはうかがえますが、割合を示すものではありません。
隔日勤務について確かめられたのは、働く時間の上限です。白書の説明では、隔日勤務の拘束時間は2暦日で22時間以内、かつ2回の隔日勤務を平均して1回あたり21時間以内です。日勤は1日13時間以内(上限15時間、14時間を超えるのは週3回までが目安)です。隔日勤務の乗務は月11回から13回とされています。
隔日勤務は1回の乗務が長く、そのぶん車内で過ごす時間も長くなります。換気や清掃のタイミングをどう取るかは、働き方とも関わってきます。

この記事で訂正したこと
この記事は2019年9月17日に公開したものを、2026年9月24日に書き直しました。以前の版から直した点は次のとおりです。
| 以前の版の記述 | いまの事実 |
|---|---|
| タクシー運転手の8割以上が隔日勤務 | 勤務形態ごとの割合を示す統計は、確認した資料では見つからなかった。削除 |
| オリンピックに向けて「ジャパンタクシー」という車両が登場し | 車の名前はJPN TAXIで、2017年10月発売。オリンピックとの関係は資料で確かめられなかった。アプリのJapanTaxi(2018年9月から、2020年9月にGO)とは別のもの |
| LPGはタマネギが腐ったような臭い | 公的な資料で確かめられなかった。代わりに、LPGにはにおいを付ける決まりがあることを書いた |
| ほかの車に乗り換えても初乗り運賃だけは払う | 運賃はメーターの表示額で、降りるときに払う(標準運送約款5条・6条)。「そこまでのメーターの額」と直した |
| 運転手の加齢臭や、制服を洗わない運転手をにおいの原因に挙げた | においの原因を特定の人に帰す書き方をやめ、車内の条件(湿り気・汚れ・香り・換気・燃料)として書いた |
| 1日平均30〜35回ほど客が乗る | 出典が確かめられないので削除 |
| 窓を開けるのに運転手の許可を取る必要もない | 決まりとしての根拠は確かめられなかった。ひと声かけて開ける、と書いた |
| 自分の出勤が終わった後は洗車をすることが義務付けられている | 法令が定めているのは会社の「常に清潔に保持」の義務(運輸規則44条)。洗車のやり方は会社が決める |

よくある質問
タクシーの窓は、客が勝手に開けてもいいですか
窓を開けることを禁じた決まりは見当たりません。ただ、冷暖房や天気、走っている道によっては開けないほうがよい場面もあるので、「少し開けてもいいですか」とひと声かけてから開けるのがおすすめです。
加熱式たばこなら、タクシーの中で吸ってもいいですか
吸えません。健康増進法28条2号は、たばこを燃焼させる場合だけでなく、加熱して煙(蒸気を含む)を出すことも「喫煙」としています。タクシーの車内は、客も運転手も喫煙禁止の場所です。
タクシーの車内で吸うと、罰金がありますか
健康増進法では、車内で吸っている人に都道府県知事が中止を命じることができ、その命令に違反した人は30万円以下の過料です(29条2項、77条1号)。吸ったらすぐに過料という作りではありません。また、運転手は中止を求めることができ、応じない客は乗車を断られることがあります(標準運送約款4条の2)。
臭いタクシーを途中で降りたら、運賃はどうなりますか
標準運送約款では、運賃は運賃料金メーター器の表示額で、降りるときに払います。途中で降りるなら、そこまでのメーターの額を払ってから、ほかのタクシーに乗り換えます。
においの苦情はどこに言えばいいですか
まず乗ったタクシー会社です。会社名は領収書に書いてあります。東京の特別区・武蔵野市・三鷹市のタクシーなら、東京タクシーセンターの苦情調査室(03-3648-0300、平日の午前9時から午後5時)やWebのフォームでも受け付けています。
においの苦情はどのくらいありますか
分かりません。東京タクシーセンターの令和7年度の苦情・要望は3,368件ですが、区分に「におい」がないため、においの苦情だけの件数は公表された資料からは分かりません。
運転手は、客がいないときなら車内で吸ってもいいですか
吸えません。運輸規則49条2項3号は、乗務員が「事業用自動車内で喫煙すること」を禁じていて、客がいるかどうかの限定はありません。健康増進法でも、タクシーの車内は誰であっても喫煙禁止の場所です。
まとめ
タクシーの車内のにおいについて、確かめられる決まりと、乗客ができることをまとめます。
- タクシーの車内は健康増進法で喫煙禁止の場所。客も運転手も吸えず、加熱式のたばこも含む
- 知事の中止の命令に違反すると30万円以下の過料
- 運転手は、客がいないときも車内で吸えない(運輸規則49条2項3号)
- 東京のタクシーは2008年に全面禁煙。改正健康増進法は2020年4月1日に全面施行
- 会社は事業用自動車を常に清潔に保持する義務がある(運輸規則44条)
- 臭いと感じたら、ひと声かけて窓を開けるか、降りて乗り換えてよい。運賃はそこまでのメーターの額
- 苦情はまず乗った会社へ。東京の特別区・武蔵野市・三鷹市なら東京タクシーセンター(03-3648-0300)でも受付
- 東京タクシーセンターの苦情・要望は令和7年度に3,368件。においだけの件数は分からない
- LPGには、ガス漏れに気づけるようにわざとにおいが付けてある。ガスのようなにおいが続くときは運転手に伝える
- においのもとは車ごとに違う。運転手も気づいていないことがあるので、気になったらその場で伝えてよい
タクシーの仕事そのものの良いところは、タクシー運転手の魅力で書いています。決まりと数字は、ここに書いた2026年9月24日の時点のものです。気になるにおいがあったときは、我慢せずに、運転手か会社に伝えてみてください。




