この記事の情報
関東運輸局と近畿運輸局の公示(審査基準、試験の実施、参入枠)、国土交通省の処理方針、e-Gov の道路運送法を、2026年9月25日に確認した内容です。協会のページは説明の補足として使っています。個人タクシーの条件は運輸局ごとに決まっていて、改正も多いので、申請する前に営業区域を受け持つ運輸局の公示を必ず確かめてください。
タクシーの運転を続けてきた人が、いつか自分の車で独立したいと考えたときに出てくるのが個人タクシーです。ただ、調べ始めると「何歳までなら申請できるのか」「トラックの経歴は数えてもらえるのか」「お金はいくら用意するのか」「試験は何を勉強すればいいのか」「新規の許可はもう出ないと聞いたが本当か」と、疑問が次々に出てきます。しかも、地理試験は令和6年5月13日に無くなり、関東運輸局では令和8年4月1日から、試験に合格してから申請する流れに変わりました。古い説明のまま残っているページも少なくありません。
この記事では、個人タクシーになるための条件を、関東運輸局の審査基準と試験の公示を中心に、近畿運輸局の公示と比べながら順番に並べ直しました。数字は、公示や協会のページの原文にあるものと、それを足し算した値だけを使っています。
先に結論を書きます。関東運輸局で新しく許可を受けるには、申請日に65歳未満で、二種免許を持ち、年齢ごとに決まったタクシー・ハイヤーの運転の経歴があり、申請日以前3年間に違反がないことが必要です。資金は設備資金80万円以上と運転資金80万円以上に車庫代と保険料を足した額を、自分名義の預貯金などで持っていなければなりません。そのうえで法令試験(40問で36点以上)に合格してから申請します。

個人タクシーとはどんな許可か
1人が1両で、自分で運転する事業の許可
個人タクシーは、道路運送法の「一般乗用旅客自動車運送事業」の許可を、個人が受けて営むものです。法人タクシーと同じ種類の事業で、道路運送法4条1項は次のように定めています(道路運送法 e-Gov)。
一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
法人タクシーとの大きな違いは、許可に付く条件です。関東運輸局の審査基準は、許可の条件として「使用する事業用自動車は1両であり、他人に当該事業用自動車を営業のために運転させてはならない。」と定めています(関東運輸局 個人タクシーの審査基準)。車は1両で、運転するのは事業者本人だけです。運行の管理も車の整備も、自分で責任を持って行います。
制度が始まったのは昭和34年12月で、全国個人タクシー協会によると、東京で173人に免許が出たのが最初です(全国個人タクシー協会 事業概要)。国土交通省の処理方針(国自旅第78号)は、個人タクシーを「優良・優秀な運転者に限って認める特別な制度として位置づけることとする」としています(国土交通省 個人タクシー事業の申請に対する処分に関する処理方針)。

審査基準は地方運輸局ごとに違う
個人タクシーの条件は、道路運送法に細かく書かれているわけではありません。国土交通省の処理方針に沿って、各地方運輸局が審査基準を公示して決めています。国の処理方針には、次のように書かれています。
各地方運輸局(沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)においては、その趣旨を十分理解の上、各地方運輸局で定めている審査基準について、所要の改正を行い、速やかにこれを公示することとされたい。
そのため、資金の額や経歴の区分は運輸局ごとに違います。たとえば資金は、関東運輸局が80万円以上、近畿運輸局と国の処理方針が「原則として70万円以上」です。全国個人タクシー協会も「この審査基準は、地方運輸局ごとで多少異なる点がありますので、該当運輸局の公示を確認してください。」と案内しています(全国個人タクシー協会 個人タクシー事業者になるには)。この記事は関東運輸局の公示を中心に書き、違いがある点は近畿運輸局の公示と並べます。
個人タクシーになる4つの道
東京都個人タクシー協会は、個人タクシーになる方法として、新規許可、譲渡譲受、死亡後の譲渡、相続の4つを挙げています(東京都個人タクシー協会 よくある質問)。「新規の許可はもう出ないので、権利を買うしかない」という話を聞くことがありますが、関東運輸局の審査基準には新規許可の基準と受付の時期が定められています。
| 道 | 中身 | 試験 |
|---|---|---|
| 新規許可 | 新しく許可を受ける | 事前試験に合格してから申請 |
| 譲渡譲受 | いまの事業者から事業を譲り受ける | 申請後試験 |
| 死亡後の譲渡 | 亡くなった事業者の事業を譲り受ける | 申請後試験 |
| 相続 | 事業者の事業を相続する。死亡後60日以内に申請 | 申請後試験 |
どの道を通っても、年齢・運転の経歴・違反・資金などの基準は新規許可とほぼ同じものを満たす必要があります。譲渡譲受は、条件を満たさない人が事業を買って入れる道ではありません。詳しくはあとの章で説明します。

営業区域で変わる2つの審査基準
個人タクシーの許可は、営業区域ごとに出ます。営業区域は、道路運送法施行規則5条で「地方運輸局長が定める区域を単位とするものとする。」とされています(道路運送法施行規則 e-Gov)。関東運輸局の審査基準には、区域によって2つの基準があります。
- 審査基準Ⅰ 人口が概ね30万人以上の都市を含む営業区域。関東は特別区・武三交通圏(東京23区・武蔵野市・三鷹市)、京浜交通圏、千葉交通圏など13区域。申請日に65歳未満
- 審査基準Ⅱ 人口が概ね30万人以上の都市を含まない営業区域(関東運輸局 審査基準Ⅱの地域)。申請日に80歳未満
気をつけたいのは、審査基準Ⅱの運転経歴の条件です。原文は「申請者が申請日以前に1年以上の個人タクシーの経験を有していること。」となっています。80歳未満まで申請できるのは、すでに個人タクシーを営んだ経験がある人の枠で、はじめて個人タクシーをする人が使える道ではありません。はじめての人は、審査基準Ⅰの区域で65歳未満のうちに申請することになります。

何歳まで続けられるか、更新のたびに何年の期限が付くかは、タクシー運転手は何歳まで働けるかの記事で詳しくまとめています。
新規許可の条件(関東運輸局の場合)
ここからは、関東運輸局の審査基準Ⅰ(はじめての人の道)の条件を、項目ごとに見ていきます。条件の全体は次のとおりです。

年齢は申請日に65歳未満
審査基準の原文は「申請日現在で65歳未満であること。」です。近畿運輸局の審査基準も「申請日現在の年齢が65歳未満であること。」で、同じです。65歳の誕生日を迎える前に申請しなければなりません。
ただし、令和8年4月1日からは、申請の前に事前試験に合格している必要があります。事前試験の申込日の時点でも65歳未満であることが条件で、合格証の有効期限も65歳になる日の前日までです。試験の時期は年3回なので、65歳に近い人は、どの回の試験を受けて、いつ申請するかを早めに逆算しておく必要があります。
二種免許を持っていること
原文は「有効な第二種運転免許(普通免許、中型免許又は大型免許に限る。以下同じ。)を有していること。」です。あとで説明するとおり、運転の経歴にはタクシー・ハイヤーの運転の期間が求められるので、実際には法人タクシーで二種免許を使って働いてきた人が申請することになります。二種免許の取り方は二種免許の取り方の記事にまとめています。
運転の経歴は年齢で3つに分かれる
運転の経歴の条件は、審査基準の別表2で、申請日の年齢によって3つに分けて決められています。
| 申請日の年齢 | 運転の経歴の条件 |
|---|---|
| 35歳未満 | 申請する営業区域で、申請日以前継続して10年以上、同じタクシー・ハイヤー事業者に運転者として雇用されている。申請日以前10年間無事故無違反 |
| 35歳以上40歳未満 | 申請する営業区域で運転を職業とした期間が10年以上。そのうちタクシー・ハイヤーが5年以上。申請する営業区域でタクシー・ハイヤーの運転が申請日以前継続して3年以上 |
| 40歳以上65歳未満 | 申請日以前25年間のうち、運転を職業とした期間が10年以上。申請する営業区域で、申請日以前3年以内に2年以上タクシー・ハイヤーの運転を職業としていた |
35歳未満の条件はとても厳しく、同じ会社で10年続けて働き、その10年間に事故も違反もないことが求められます。35歳以上40歳未満で申請日以前10年間無事故無違反の人は、40歳以上65歳未満の条件で審査を受けることもできます。

トラックなどの経歴は50%に換算する
35歳以上の区分では、タクシー・ハイヤー以外の運転の期間も数えられます。ただし、原文は「一般旅客自動車運送事業用自動車以外の自動車の運転を職業とした期間は50%に換算する。」です。タクシー・ハイヤー・バス以外、たとえばトラックの運転の期間は半分として数えます。
40歳以上65歳未満の人で考えると、トラックを10年運転してきた場合、10年×50%=5年分として数えます。タクシーの経験が5年あれば、5+5=10年分で、経歴の10年に届きます。そのうえで、申請する営業区域で申請日以前3年以内に2年以上、タクシー・ハイヤーの運転をしていることが別に必要です。

経歴として数えるのは4つの書類で確かめられる期間
東京都個人タクシー協会は、運転の経歴の確かめ方を次のように説明しています。
①在職証明書、②乗務員台帳の写し、③タクシーセンターの発行する運転者登録原簿の謄本(A)及び(B)、④社会保険の加入を証明するもの(日本年金機構が発行する「被保険者記録照会回答票」)の4点にて確認します。この4点全てでカバー出来る期間が運転経歴となります。
同じページでは「在職証明書で入社が確認できても、社会保険に未加入の期間は運転経歴として算入できません。」とも書かれています。また、トラックなどの経歴でも、軽自動車や二輪の運転、通勤やレジャーの運転、ほかの業務と兼ねていた期間、会社の役員などを兼ねていた期間は含まれないと説明されています。自分の経歴が何年分になるかは、書類をそろえて早めに確かめておくと安心です。
関東運輸局の細部取扱いでは、継続3年の数え方について「3年間における雇用先の変更に伴う離職期間の合計が30日以内である場合」は継続とみなすとしています。会社を移った人は、離職していた日数も確認しておきましょう。
違反と処分の条件
違反と処分の条件は、申請日からさかのぼる年数で決められています。審査基準の原文は次のとおりです。
申請日以前3年間及び申請日以降に、道路交通法の違反(同法の違反であって、その原因となる行為をいう。)がなく、運転免許の効力の停止を受けていないこと。ただし、申請日の1年前以前において、点数(同法の違反により付される点数をいう。)が1点付されることとなる違反があった場合、又は点数が付されない違反があった場合のいずれか1回に限っては、違反がないものとみなす。
つまり、申請日以前3年間は原則として違反ゼロです。例外は、申請日の1年前より前にあった、1点の違反か点数の付かない違反のどちらか1回だけです。申請日の直前1年以内の違反は、1点でも条件を外れます。
このほか、申請日以前5年間に、輸送施設の使用停止以上の処分や運転免許の取消しなどを受けていないこと、申請日前3年間に個人タクシーを譲渡・廃止したり、期限の更新を受けられなかったりした人でないことも条件です。どの条件も「申請日以降」を含むので、申請してから許可が出るまでの間に違反をしても外れます。
審査基準は、これらの違反で「現に公訴を提起されていないこと。」も条件にしています。また、道路運送法7条は、許可をしてはならない場合として、1年以上の拘禁刑を受けて執行を終えてから5年を経過していない人や、一般旅客自動車運送事業の許可の取消しを受けてから5年を経過していない人などを挙げています。


資金はいくら必要か
関東運輸局は設備資金と運転資金が80万円以上ずつ
関東運輸局の審査基準は、資金の内訳を次のように定めています。
① 設備資金(③を除く。) 80万円以上 ただし、80万円未満で所要の設備が調達可能であることが明らかである場合は、当該所要額とする。② 運転資金 80万円以上 ③ 自動車車庫に要する資金 ④ 保険料
設備資金と運転資金を足すと、80+80=160万円です。これに車庫の費用と、自賠責保険(保険期間12ヶ月以上)と任意保険の保険料の年額を足した額が、必要な資金の合計になります。
さらに、審査基準には「所要資金の100%以上の自己資金(自己名義の預貯金等)が、申請日以降常時確保されていること。」とあります。借りたお金ではなく、自分名義の預貯金などで、合計の100%以上を申請日からずっと持ち続けている必要があります。

東京都個人タクシー協会は、よくある質問で「設備資金80万円以上、運転資金80万円以上、その他として車庫代や保険料等が掛かりますので、一般的に総額200万円程度は必要かと思います。」と答えています。200万円程度は開業に必要な資金の目安で、事業を譲り受けるときの価格ではありません。
近畿運輸局と国の処理方針は70万円以上
近畿運輸局の審査基準では、設備資金と運転資金はそれぞれ「原則として70万円以上」です(近畿運輸局 個人タクシーの審査基準)。国土交通省の処理方針も同じく「原則として70万円以上」としています。近畿運輸局では、譲渡譲受と相続の場合は「5.資金計画の①設備資金については、70万円を50万円と読み替える。」とされています。
| 項目 | 関東運輸局 | 近畿運輸局 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 80万円以上 | 原則70万円以上(譲渡譲受・相続は50万円) |
| 運転資金 | 80万円以上 | 原則70万円以上 |
| 運転の経歴の区分 | 35歳未満/35歳以上40歳未満/40歳以上65歳未満の3つ | 35歳未満/35歳以上65歳未満の2つ |
| 法令試験の合格基準 | 36点以上(特定指定地域は41点以上) | 正解率90%以上 |
| 申請の年齢 | 65歳未満 | 65歳未満 |
「資金は全国どこでも70万円」と書かれた説明を見かけることがありますが、関東運輸局の基準は80万円以上です。申請する区域を受け持つ運輸局の公示で、必ず金額を確かめてください。

自己資金として示せるもの・示せないもの
関東運輸局の申請の細部取扱いでは、資金を示す書類として「普通預金通帳、定期預金通帳、定期積立預金通帳、株券及び債権等(家族名義の預貯金、現金、手形、小切手、生命保険関係を除く)の写」を出すよう定めています(関東運輸局 個人タクシーの細部取扱い)。家族名義の預金や、手元の現金、生命保険は自己資金として示せません。申請の前に、本人名義の口座にまとめておく必要があります。

営業所と車庫の条件
個人タクシーの営業所は、自分の住まいです。審査基準の原文は「申請する営業区域内にあり、住居と営業所が同一であること。」「申請する営業区域内に申請日現在において現に居住しているものであること等、居住の実態が認められるものであること。」です。申請する区域の中に、申請日の時点で実際に住んでいなければなりません。
車庫の条件は「申請する営業区域内にあり、営業所から直線で2キロメートル以内であること。」で、土地と建物について「1年以上の使用権原を有するものであること。」も求められます。月極駐車場を借りる場合は、1年以上の契約にしておく必要があります。

車には、電子地図を画面に表示して、現在地の表示と目的地までの経路の案内ができる機器を備えることも条件になっています。
健康診断と適性診断
健康については、公的医療機関などで「胸部疾患、心臓疾患及び血圧等に係る診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない健康状態にあること。」が求められます。あわせて、独立行政法人自動車事故対策機構などで運転の適性診断を受けていることも条件です。
法令試験の中身
地理試験は令和6年5月13日に無くなった
以前の個人タクシーの試験には、法令試験と地理試験がありました。東京都個人タクシー協会は「法令試験と地理試験があり、それらに合格する必要がありましたが、令和6年5月13日に審査基準が一部改正され、地理試験が廃止され、法令試験のみとなりました。」と説明しています。いまは法令試験だけです。
なお、法人タクシーの運転者として東京で働き始めるときの地理試験は、これとは別の試験です。こちらはタクシーの地理試験の記事で説明しています。
問題数と合格点
関東運輸局の試験の公示では、法令試験の形式は次のとおりです(関東運輸局 法令の試験の実施について)。
| 項目 | ふつうの区域 | 特定指定地域 |
|---|---|---|
| 出題数 | 40問 | 45問(タクシー業務適正化特別措置法の問題を5問足す) |
| 合格基準 | 36点以上 | 41点以上 |
| 試験時間 | 50分 | 60分 |
| 設問の方式 | ○×方式と語群選択方式 | ○×方式と語群選択方式 |
| 配点 | 1問1点 | 1問1点 |
東京の特別区・武三交通圏は、タクシー業務適正化特別措置法の特定指定地域なので、45問で41点以上が必要です。出題の範囲は、道路運送法とその施行規則、旅客自動車運送事業運輸規則、運賃と料金の制度、タクシー業務適正化特別措置法、道路運送車両法などの関係の法令です。

試験問題は、試験のあとに持ち帰ることができます。公示には「試験問題は、試験終了後の持ち帰りを認め、これにより問題の公表とする。」とあり、試験の翌月には受験者数、合格者数、最高点、最低点、平均点が関東運輸局報に載ります。東京都個人タクシー協会は、試験勉強について「各協同組合で勉強会を開催しています。」と案内しています。
令和8年4月1日から、事前試験に合格してから申請する
関東運輸局の試験の公示は令和8年2月17日に改正され、令和8年4月1日から、試験は「事前試験」と「申請後試験」の2つになりました。新規許可を受けたい人は、事前試験に合格してから申請します。申請後試験を受けるのは、譲渡譲受と相続の申請をした人です。
事前試験を受けられるのは、試験の申込日の時点で次の条件を満たす人です。
- 有効な二種免許(普通・中型・大型)を持っている
- 審査基準Ⅰの許可は65歳未満、審査基準Ⅱの許可は80歳未満
- 運転の経歴の条件(別表2)を満たしている。別表2の「申請日」は「試験の申込日」と読み替える
公示には「試験合格後に1.(4)に該当していないことが判明した場合、当該合格は無効とする。」とあります。合格したあとで運転の経歴の条件を満たしていなかったと分かれば、合格は無効になります。申込みは、受験する営業区域を受け持つ運輸支局を通して、関東運輸局長あてに受験申込書を出します。

近畿運輸局の日程表にも「特例新規許可申請については、事前試験に合格した者のみ申請を行うことができます。」とあり、準特定地域で新規許可を申請するには、事前試験に合格していることが必要です(近畿運輸局 試験と申請の日程表)。
事前試験は年3回、合格証は2年
関東運輸局の事前試験は、年3回です。
| 申込の期間 | 試験の時期 |
|---|---|
| 4月1日から5月31日 | 7月1日から7月31日のいずれかの日 |
| 8月1日から9月30日 | 11月1日から11月30日のいずれかの日 |
| 12月1日から1月31日 | 3月1日から3月31日のいずれかの日 |
合格証の有効期限は、発行日から2年を経過する日か、審査基準Ⅰの許可なら65歳になる日の前日の、どちらか早い日です。近畿運輸局の日程表でも、合格証の有効期限は最大2年で、「合格時点(公表等)で63歳に至っている方は有効期限が2年未満となります。」と書かれています。
試験に落ちたときについて、東京都個人タクシー協会は「再試験はありません。」と答えています。次の回の事前試験に申し込み直すことになります。近畿運輸局も、合格基準は「正解率90%以上」、試験時間は50分(45問の人は60分)で、関東とほぼ同じ水準です(近畿運輸局 個人タクシー事業の許可等に係る試験の実施について)。

申請できる時期と参入枠
準特定地域は年3回、枠を超えるとくじ
関東運輸局の審査基準では、新規許可の申請の受付は「通年とする。」とされています。ただし、タクシーの台数を調整している地域では扱いが違います。
- 準特定地域 毎年度5月1日から5月31日、9月1日から9月30日、1月1日から1月31日の年3回。参入枠の数まで(関東運輸局 準特定地域の一覧)
- 特定地域 新規許可の申請は受け付けない。2026年9月25日時点の一覧では、関東運輸局の管内に特定地域は無い(関東運輸局 特定地域の一覧)
特別区・武三交通圏、京浜交通圏、千葉交通圏などは準特定地域です。準特定地域の新規許可は特例として認められていて、関東運輸局の公示は、その理由を「新型コロナウイルス感染症による影響により、個人タクシーの譲渡譲受に関する手続に支障を来たしており、また、個人タクシーの事業者の高齢化が進展してい」るためと説明しています(関東運輸局 準特定地域の許可の特例的な取扱い)。この特例の公示には「本公示は、令和11年3月31日をもって廃止する。」と書かれています。
申請が参入枠の数を超えたときは、くじで許可する人を決めます(関東運輸局 くじの手続き)。

令和8年度の参入枠(関東運輸局)
関東運輸局が公示した令和8年度の参入枠(令和8年8月6日改正後)は、次のとおりです(関東運輸局 準特定地域における個人タクシー事業の参入枠等について)。
| 営業区域 | 参入枠 | うち令和7年度の残り | うち特例の配分① | うち特例の配分② |
|---|---|---|---|---|
| 特別区・武三交通圏 | 576 | 348 | 136 | 92 |
| 京浜交通圏 | 21 | 4 | 6 | 11 |
| 千葉交通圏 | 16 | 12 | 2 | 2 |
| 北多摩交通圏 | 8 | 6 | 0 | 2 |
| 東葛交通圏 | 6 | 6 | 0 | 0 |
| 南多摩交通圏 | 4 | 3 | 0 | 1 |
| 京葉交通圏 | 4 | 1 | 0 | 3 |
| 宇都宮交通圏 | 4 | 3 | 0 | 1 |
| 県南中央交通圏 | 1 | 0 | 0 | 1 |
| 県央・県南西部・県南東部・中・西毛交通圏 | 0 | 0 | 0 | 0 |
特別区・武三交通圏の576は、348+136+92=576で、表の合計と一致します。関東の準特定地域の枠を全部足すと640です。特例の配分は、令和2年度と令和3年度に一般廃業した75歳未満の事業者の数と、令和4年度と令和5年度に一般廃業した75歳以上の事業者の数をもとに計算されています。
令和8年度の受付は、令和8年5月1日から6月1日、9月1日から9月30日、令和9年1月1日から2月1日の3回です。公示には「申請時点において、参入枠と同数の許可処分を既に行った営業区域においては、受付しない。」とあり、枠が埋まった区域では次の回の受付がありません。処分は、原則として1回目が令和8年8月末まで、2回目が令和8年12月末まで、3回目が令和9年4月末までに行うとされています。

令和8年度の新規許可枠(近畿運輸局)
近畿運輸局も、準特定地域の特例の新規許可枠を公示しています(近畿運輸局 令和8年度の参入枠の公示、近畿運輸局 参入残余枠の公示)。
| 営業区域 | 令和8年度の枠 | 8月18日までの許可件数 | 8月18日時点の残り |
|---|---|---|---|
| 大阪市域交通圏 | 48 | 27 | 21 |
| 京都市域交通圏 | 20 | 12 | 8 |
| 神戸市域交通圏 | 12 | 9 | 3 |
| 姫路・西播磨交通圏 | 5 | 0 | 5 |
| 和歌山市域交通圏 | 3 | 0 | 3 |
大阪市域は27+21=48、京都市域は12+8=20、神戸市域は9+3=12で、どれも年度の枠と一致します。北摂、奈良市域、大津市域の枠は0です。

申請の書類と、合格から営業開始まで
発行日に期限がある書類
関東運輸局の細部取扱いでは、申請書は正・副・控の3部をつくり、申請する営業区域を受け持つ運輸支局へ出すと定めています。書類の中には、発行日に期限があるものがあります。
| 書類 | 発行日の期限 |
|---|---|
| 戸籍抄本・住民票 | 申請日前3ヶ月以降に発行 |
| 無事故無違反証明書・運転記録証明書 | 申請日前3週間以内に発行 |
| 適性診断票 | 申請日前3ヶ月以降に発行 |
このほか、法令試験の合格証、在職証明書、乗務員台帳、運転者登録原簿(特別区・武三交通圏)、預金通帳、任意保険の見積り、営業所と車庫の賃貸借契約書、健康診断書などを出します。無事故無違反証明書と運転記録証明書は3週間以内のものが必要なので、申請日から逆算して取り寄せます。

合格してから営業を始めるまで
東京都個人タクシー協会の「試験合格後の取扱い」によると、合格してからの流れは次のとおりです(東京都個人タクシー協会 試験合格後の取扱い)。許可の申請と一緒に運賃の認可の申請をし、「事業許可と運賃認可が同時に行われる。」とされています。許可の発表のあと、個人タクシー事業講習会を受け、交付式で許可書を受け取ります。車の登録とタクシーメーターの検定を済ませ、運輸開始の届出をして営業を始めます。
関東運輸局の標準処理期間は、一般乗用旅客自動車運送事業で3ヶ月です(関東運輸局 標準処理期間)。許可を受けたら、審査基準の条件により、許可の日から4ヶ月以内に事業を始めなければなりません。

東京都個人タクシー協会によると、協同組合や支部への加入は義務ではありません。ただし「加入しなければ個人タクシーになれない訳ではありませんが、申請時及び事業者になってからの諸々の事務手続き全てを自分でやることになります。」と説明されています。

許可のあとに守る条件と期限
個人タクシーの許可には、期限と条件が付きます。道路運送法86条1項は「免許、許可、登録又は認可には条件又は期限を付し、及びこれを変更することができる。」と定めていて、関東運輸局の審査基準は、許可に「当該許可又は認可の日から概ね3年間の期限を付すこととする。」としています。続けるには、期限が来るたびに更新を受けます。
主な条件は次のとおりです。
- 使用する車は1両で、他人に営業のために運転させない
- 車の両側面に「個人」と「タクシー」または「TAXI」と表示する
- 月に2日以上の定期休日を定める
- 営業中は運転日報を持ち歩いて記入し、1年間保存する
- 65歳になったら高齢者の適性診断を受ける
- 期限の更新のとき、75歳になる日以降の期限は付かない
- 許可の日から4ヶ月以内に事業を始める
「75歳になる日以降の期限は付かない」という条件があるため、関東運輸局の審査基準Ⅰで許可を受けた人は、原則として75歳になる日より前に終わる期限までしか営業を続けられません(平成14年1月31日以前に許可を受けた人には、この条件は適用されません)。更新のたびにどれだけの期限が付くかは、タクシー運転手は何歳まで働けるかの記事で説明しています。年金を受け取りながら働く場合の考え方は、タクシー運転手と年金の記事にまとめています。


譲渡譲受と相続で引き継ぐ
個人タクシーの事業は、ほかの人に譲ったり、相続したりできます。道路運送法36条1項は「一般旅客自動車運送事業の譲渡及び譲受は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」と定めています。
譲る人と譲り受ける人の条件
関東運輸局の審査基準では、譲る人は次のどれかに当てはまる必要があります。
- 年齢が65歳以上80歳未満
- 年齢が65歳未満で、病気やけがなどで事業を自分で続けられない正当な理由がある
- 年齢が65歳未満で、20年以上個人タクシーを営んでいる
譲り受ける人は「Ⅰ.(12.を除く。)に定める基準を満たす者であること。」とされています。つまり、年齢、運転の経歴、違反、資金、営業所と車庫、試験といった新規許可と同じ基準を満たす必要があります。さらに「譲渡人が75歳以上80歳未満の場合は、60歳以下の者であること。」という条件もあります。譲渡譲受の申請の受付は通年です。
譲渡の価格については、公表された相場はありません。関東運輸局の細部取扱いには「譲渡価格の欄には、譲渡譲受契約書の譲渡価格を記入すること。」とあり、当事者どうしの契約で決めて、申請書に書く扱いです。
相続は死亡後60日以内に申請
相続について、道路運送法37条1項は、相続人が事業を続けようとするときは「被相続人の死亡後六十日以内に、国土交通大臣の認可を受けなければならない。」と定めています。関東運輸局の審査基準では、亡くなった人の死亡時の年齢が75歳未満であること、相続する人が新規許可と同じ基準を満たすことが条件です。

個人タクシーの事業者はどれくらいいるか
全国個人タクシー協会の事業概要によると、令和8年4月30日現在の個人タクシーの事業者数は24,361人です。このうち協会の加入者が22,124人、未加入者が2,237人で、加入率は90.8%です。平均年齢は64.3歳、女性の事業者は401人でした。
個人タクシーがある都市は全国78都市で、茨城県、山梨県、鳥取県、島根県には個人タクシーがありません。地方でタクシーの仕事を探す場合の台数の違いは、地方のタクシー運転手の記事で都道府県別にまとめています。

関東運輸局の準特定地域の特例の公示も、新規許可を認める理由の1つとして「個人タクシーの事業者の高齢化が進展してい」ることを挙げています。
申請までの準備を逆算する
ここまでの条件を、関東運輸局で新規許可を目指す人の準備の順番に並べ直すと、次のようになります。
- 運転の経歴を数える 在職証明書、乗務員台帳、運転者登録原簿、社会保険の記録の4つがそろう期間を確かめる。自分の年齢の区分で何年分足りないかを出す
- 違反をしない 申請日以前3年間は原則として違反ゼロ。申請の直前1年以内は、1点の違反でも外れる
- 資金を本人名義にまとめる 設備資金80万円以上、運転資金80万円以上、車庫代、保険料の合計の100%以上を、自分名義の預貯金などで申請日から持ち続ける
- 住まいと車庫を決める 申請する営業区域の中に住み、営業所から直線2キロメートル以内に、1年以上使える車庫を用意する
- 事前試験を受ける 申込は4月、8月、12月から始まる年3回。65歳未満のうちに申し込み、合格証の期限の2年以内に申請する
- 受付の月に申請する 準特定地域は5月、9月、1月の年3回。参入枠が埋まった区域は受け付けない
- 書類を取り寄せる 無事故無違反証明書と運転記録証明書は申請日前3週間以内の発行が必要
特に気をつけたいのは、事前試験と申請の受付の時期が別々に決まっていることです。関東運輸局の場合、事前試験は7月・11月・3月、準特定地域の申請の受付は5月・9月・1月です。合格したあと、次の受付の月まで待ってから申請することになるので、65歳が近い人は、合格証の期限と年齢の両方から、どの回で申請するかを決めておく必要があります。
個人タクシーでよくある思い違い
最後に、古い情報のまま広まっている説明を4つ整理しておきます。
- 「新規の許可はもう出ない。権利を買うしかない」→ 関東運輸局の審査基準には新規許可の基準と受付があり、準特定地域にも令和8年度の参入枠が公示されている
- 「申請してから試験を受ける」→ 関東運輸局は令和8年4月1日から、新規許可は事前試験に合格してから申請する
- 「地理試験の勉強が必要」→ 個人タクシーの地理試験は令和6年5月13日に廃止され、いまは法令試験だけ
- 「資金は全国どこでも70万円」→ 近畿運輸局と国の処理方針は原則70万円以上だが、関東運輸局は80万円以上ずつ

よくある質問
Q. トラックの運転手でも個人タクシーになれますか?
トラックの運転の期間は、35歳以上の区分で50%に換算して数えます。ただし、どの区分でもタクシー・ハイヤーの運転の経験が必要です。40歳以上65歳未満なら、申請する営業区域で申請日以前3年以内に2年以上、タクシー・ハイヤーの運転をしていることが条件になります。まず法人タクシーで経験を積むことになります。
Q. 何歳までに申請すればいいですか?
関東運輸局の審査基準Ⅰでは、申請日に65歳未満であることが条件です。事前試験の申込日にも65歳未満である必要があり、合格証も65歳になる日の前日で切れます。運転の経歴の年数から逆算して、何歳で法人タクシーに入れば間に合うかを考えておきましょう。20代から始める場合の道筋は20代のタクシー運転手の記事にまとめています。
Q. 資金はいくら用意すればいいですか?
関東運輸局の基準では、設備資金80万円以上と運転資金80万円以上に、車庫代と保険料を足した額の100%以上を、自分名義の預貯金などで持っている必要があります。東京都個人タクシー協会は、総額200万円程度を目安にしています。
Q. 試験に落ちたら、もう一度受けられますか?
再試験はありません。関東運輸局の事前試験は年3回あるので、次の回に申し込み直します。
Q. 協同組合に入らないといけませんか?
義務ではありません。東京都個人タクシー協会は、加入しなくても個人タクシーになれるが、事務手続きをすべて自分で行うことになると説明しています。
Q. 個人タクシーの年収はどのくらいですか?
個人タクシーの事業者だけの収入を示す公的な統計は、今回確かめた資料の中には見つかりませんでした。法人タクシーの運転者の賃金はタクシー運転手の年収の記事で、厚生労働省の統計をもとにまとめています。
Q. 80歳まで申請できる区域があると聞きました。
関東運輸局の審査基準Ⅱ(人口が概ね30万人以上の都市を含まない区域)は80歳未満まで申請できますが、申請日以前に1年以上の個人タクシーの経験があることが条件です。はじめて個人タクシーをする人は使えません。
まとめ
個人タクシーになるには、関東運輸局の場合、申請日に65歳未満で、年齢ごとに決まったタクシー・ハイヤーの運転の経歴があり、申請日以前3年間に違反がなく、設備資金80万円以上と運転資金80万円以上に車庫代と保険料を足した額を自分名義で持ち、法令試験に合格していることが必要です。令和8年4月1日からは、事前試験に合格してから申請する流れになりました。準特定地域では参入枠の数までしか許可が出ないので、受付の時期と枠の残りも確かめておきましょう。タクシーの仕事そのものの良さについては、タクシー運転手の魅力の記事も参考にしてください。

参考にした一次情報
いずれも2026年9月25日に確認しました。
- 道路運送法(e-Gov 法令検索)
- 道路運送法施行規則(e-Gov 法令検索)
- 国土交通省 国自旅第78号「個人タクシー事業の申請に対する処分に関する処理方針」
- 関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」(令和8年2月17日改正)
- 関東運輸局「個人タクシー事業の許可等に係る法令の試験の実施について」(令和8年2月17日改正)
- 関東運輸局 個人タクシー 申請の細部取扱い
- 関東運輸局 標準処理期間
- 関東運輸局「準特定地域における個人タクシー事業の参入枠等について」(令和8年8月6日改正)
- 関東運輸局「準特定地域における個人タクシー事業に係る道路運送法第4条第1項の許可の特例的な取扱いについて」
- 関東運輸局 参入枠を超えた場合のくじの手続き
- 関東運輸局 準特定地域の一覧
- 関東運輸局 特定地域の一覧
- 関東運輸局 人口が概ね30万人以上の都市が含まれない営業区域において個人タクシーの営業が可能な地域
- 近畿運輸局 個人タクシーの手続きのページ
- 近畿運輸局「個人タクシー事業の許可、譲渡譲受認可及び相続認可等申請に関する審査基準について」
- 近畿運輸局「個人タクシー事業の許可等に係る試験の実施について」
- 近畿運輸局 令和8年度 試験と申請の日程表
- 近畿運輸局「令和8年度の準特定地域における特例許可を行う個人タクシーの参入枠の公示」
- 近畿運輸局「参入残余枠(令和8年8月18日時点)の公示」
- 全国個人タクシー協会「事業概要」(説明の補足)
- 全国個人タクシー協会「個人タクシー事業者になるには」(説明の補足)
- 東京都個人タクシー協会「よくある質問」(説明の補足)
- 東京都個人タクシー協会「試験合格後の取扱い」(説明の補足)
- 東京都個人タクシー協会「事前試験申込及び申請等のスケジュール」(説明の補足)
個人タクシーの条件は運輸局ごとに違い、改正も続いています。申請する前に、営業区域を受け持つ運輸局と運輸支局の最新の公示を、直接確かめてから進めてください。




