この記事の情報
法令は e-Gov の現行版(道路運送法・同法施行規則・旅客自動車運送事業運輸規則)、国土交通省の通達「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」(最終改正 令和5年10月10日)、厚生労働省「バス運転者の改善基準告示」、国土交通省の報道発表と公表データで、2026年9月26日に確認した内容です。決まりは改正されることがあるので、応募や転職の前には最新の案内も確認してください。
観光バスの運転手に興味はあるけれど、「路線バスと何が違うのか」「夜行や長距離はどこまで1人で走るのか」「大きな事故のあとで何が厳しくなったのか」がよく分からない。求人を見る前に、仕事の中身と決まりを知っておきたい人は多いと思います。
観光バスは、法律上は「貸切バス」と呼ばれる事業です。貸切バスの運転者には、路線バスにはない決まりがいくつもあります。長い距離を1人で運転してよい上限、運行指示書の携行、夜間の途中で受ける点呼、入社後に受ける指導の時間などです。この記事では、法令の条文と国土交通省・厚生労働省の資料から、観光バス運転手の仕事と安全のルールを順番に整理しました。
先に結論を書きます。観光バスの運転者は、厚生労働省の改善基準告示で1か月の拘束時間が原則281時間までと決まっていて、労使協定があれば年6か月まで294時間に延ばせます。国土交通省の基準では、夜間に交替運転者なしで走る運行は一運行の実車距離が400kmまで(条件を満たせば500km)です。2024年4月からは、貸切バスの点呼を録音と録画で90日保存することが義務になりました。入社後の指導は、貸切バスだけ10時間以上と実技20時間以上です。

観光バス運転手とは(法律上は貸切バスの運転者)
路線バスは「乗合」、観光バスは「貸切」
バスの事業は、道路運送法3条で種類が分かれています。決まった路線と時刻で、乗り合わせたお客さんを運ぶのが路線バス(一般乗合旅客自動車運送事業)です。観光バスは、道路運送法3条1号ロの一般貸切旅客自動車運送事業にあたります(道路運送法 e-Gov)。
一般貸切旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
この「国土交通省令で定める乗車定員」は、道路運送法施行規則3条の2で「十一人」とされています(道路運送法施行規則 e-Gov)。つまり、乗車定員11人以上のバスを、1つの契約で団体などが貸し切って運ぶのが貸切バスです。

貸切バスの事業を始めるには、道路運送法4条1項により国土交通大臣の許可が要ります。運賃と料金は、あらかじめ国に届け出ることになっています(9条の2)。運転者として働く人にとっては、勤め先が国の許可を受けた貸切バス事業者かどうかが、最初の前提になります。
貸切バスは、行き先も時間も運行ごとに変わります。初めて走る道や、夜通しの長い運行もあります。そのため、運輸規則と国土交通省の通達には、貸切バスにかかる決まりが多く置かれています。この記事の後半で、その中身を1つずつ見ていきます。
必要な免許は乗車定員で決まる
お客さんを乗せて運賃をもらうバスを運転するには、第二種免許が必要です。道路交通法施行規則2条では、乗車定員30人以上の自動車は大型自動車にあたり、11人以上29人以下は中型自動車にあたります。定員の多い観光バスなら大型二種、マイクロバスなら中型二種以上です。定員のほかに、車両総重量や最大積載量でも区分が決まります。
大型二種の受験資格は、原則として21歳以上で、普通免許などを受けていた期間が通算3年以上です。特例教習を修了すれば19歳以上・1年以上で受けられます。取り方と費用、教習の時限数は大型二種免許の取り方と費用の記事に、お客さんを乗せない大型一種の取り方は大型免許の取り方の記事にまとめています。
なお、国土交通省の安全情報では、免許とは別の物差しでバスを分けています。大型車は「車両の長さ9メートル以上または旅客席数50人以上の車両」、小型車は「車両の長さ7メートル以下で、かつ旅客席数29人以下の車両」、その間が中型車です(国土交通省 用語の解説)。求人や会社の紹介で「大型」「中型」と書いてあるときは、どちらの意味かを確かめると誤解が減ります。


数字で見る貸切バスの仕事
事業者は3,376者、車両は42,779両
国土交通省の「貸切バス事業の概況」によると、令和6年度の貸切バス事業者数は3,376者、車両数は42,779両でした。前年度の事業者数は3,423者です(国土交通省 貸切バス事業の概況)。
貸切バス事業者は、事業年度が終わってから100日以内に、安全に関する情報を国に報告します。国土交通省はそれを「貸切バス事業者の安全性に関する情報」として公表しています(国土交通省 貸切バス事業者の安全性に関する情報)。

公表データを合計すると運転者は78,889人
この公表データの令和6年度版(令和8年4月30日現在のExcelファイル)には、営業所ごとの運転者数が載っています。筆者が営業所の数字を足し上げると、運転者は合計78,889人で、そのうち正規雇用が63,673人、正規雇用以外が15,216人でした。正規雇用の割合は80.7%です。
ただし、これは事業者の報告を合計した値です。公表データの車両数を合計すると38,594両で、上の「概況」の42,779両とは範囲が一致しません。運転者数も、国の統計として発表された人数ではなく、目安として見てください。

雇い入れ1年未満の運転者の事故が増えている
国土交通省の「事業用自動車総合安全プラン2030」は、雇い入れて間もない運転者の事故について、次のように書いています(事業用自動車総合安全プラン2030)。
事故件数全体のうち、雇い入れ後1年未満の運転者が事故を生じさせた比率は、貸切バス及びタクシーにおいて顕著であり、貸切バスでは 4.8%(令和3年度)から 9.1%(令和6年度)…と上昇している傾向が見受けられる。
未経験から観光バスの運転手を目指す人にとっては、入社後の指導がどれだけ手厚いかが大事だということです。後で紹介する初任運転者の指導の時間は、応募先に確かめておきたいポイントの1つです。

観光バスの運行と書類の流れ
運送引受書から乗務後の点呼まで
貸切バスの1回の運行は、運転者がハンドルを握る前から始まっています。旅客自動車運送事業運輸規則(以下、運輸規則)に沿って流れを並べると、次のようになります(旅客自動車運送事業運輸規則 e-Gov)。
- 運送引受書 → 会社は運送を引き受けたら、申込者に運送引受書を交付します(7条の2)
- 経路の事前調査 → 会社は主な経路の道路と交通の状況を事前に調べ、その道に合うバスを使います(28条)
- 運行指示書 → 運行ごとに作り、運転者は乗務中に携行します(28条の2・50条11項)
- 乗務前の点呼 → 酒気帯びの有無や体調を確認します。貸切バスは録音と録画が必要です(24条)
- 中間点呼 → 夜間に長距離を走る運行では、途中で少なくとも1回、点呼を受けます(24条3項)
- 乗務後の点呼 → 車両や道路、運行の状況を報告します(24条2項)
運行指示書や経路の調査を担うのは、営業所の運行管理者です(運輸規則48条12号・12号の2)。貸切バスの営業所では、事業用自動車が39両までなら運行管理者を2人選ぶことになっています(47条の9)。運転者は、この運行管理者から点呼を受け、指示を受けて走ります。

中間点呼について、運輸規則24条3項は次のように定めています。夜行の観光バスでは、運転者は出発前だけでなく、走っている途中でも会社の確認を受けることになります。
一般貸切旅客自動車運送事業者は、夜間において長距離の運行を行う事業用自動車の運行の業務に従事する運転者等に対して当該業務の途中において少なくとも一回…点呼を行い
運行指示書に書く10項目
運行指示書は、運輸規則28条の2で記載する事項が決まっています。運行の開始と終了の地点と日時、乗務員の氏名、経路と主な経由地の発車と到着の日時、旅客が乗車する区間、注意を要する箇所の位置、休憩地点と休憩時間、運転を交替する地点、睡眠に必要な施設の名称と位置、運送契約の相手方、その他の安全に必要な事項の10項目です。
運転者は乗務中、この運行指示書を携行しなければなりません(50条11項)。会社は運行が終わった日から3年間、運行指示書を保存します。どこで休み、どこで交替するかが紙の上で先に決まっているのが、貸切バスの運行の特徴です。

記録は3年、点呼の録音録画は90日
貸切バスの会社は、運行の記録を長く残すことが義務になっています。点呼の記録は電磁的記録で3年間、運行記録計の記録も電磁的記録で3年間、運送引受書と運行指示書も3年間です。点呼を録音と録画をした電磁的記録は90日間の保存です(運輸規則24条・26条・28条の2)。
この保存期間は、2024年4月1日の改正で延びたものです。国土交通省は、令和4年10月に静岡県で起きた貸切バスの横転事故(死傷者計29名)を踏まえて制度を改正したと発表しています(国土交通省 報道発表 令和5年10月10日)。改正の中身は、後の章でまとめます。

観光バス運転手の労働時間(改善基準告示)
拘束時間は1か月281時間、貸切バス等は294時間まで
バス運転者の労働時間は、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で上限が決まっています。2024年4月1日から、次の基準が使われています(厚生労働省 バス運転者の改善基準告示)。
| 項目 | 基準 | 補足 |
|---|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 281時間 | 貸切バス等は労使協定で年6か月まで294時間(281時間超は連続4か月まで) |
| 1年の拘束時間 | 3,300時間 | 貸切バス等は労使協定で3,400時間 |
| 1日の拘束時間 | 13時間(最大15時間) | 14時間超は週3回までが目安 |
| 休息期間 | 継続11時間以上が基本 | 継続9時間を下回らない |
例外が使えるのは、貸切バスの営業所で働く運転者や、高速バスの運転者などです。観光バスの運転者は、この例外の対象になりえます。年間でみると、原則の3,300時間と例外の3,400時間の差は100時間です。応募先が例外を使っているかどうかで、繁忙期の働き方は変わります。

運転時間と連続運転
運転時間は、2日平均で1日9時間、4週平均で1週40時間までです。貸切バス等は労使協定により、52週の総運転時間2,080時間の範囲で、52週のうち16週まで4週平均で1週44時間まで延ばせます。連続運転は4時間までです。
観光バスで大事なのが、高速道路の連続運転です。改善基準告示では「高速バス、貸切バスの高速道路(貸切バスの夜間運行では高速道路以外も含む)の実車運行区間での連続運転時間はおおむね2時間まで」とされています。夜間の貸切バスは、一般道でもおおむね2時間ごとに運転を止める前提です。
2人で乗務する場合の特例もあります。リクライニングできる座席があれば最大の拘束時間は19時間・休息期間は5時間まで、車内にベッドなどがあれば最大の拘束時間は20時間・休息期間は4時間まで短縮できます。

バスとタクシーの拘束時間の違いはタクシー運転手とバス運転手の違いの記事で、タクシーの残業の上限についてはタクシーの36協定の記事で詳しく書いています。

交替運転者の配置基準(1人で走れる距離の上限)
基準ができた経緯
平成24年4月29日に関越自動車道で高速ツアーバスの事故が起きました。国土交通省は翌年の「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」で、長距離運行の際の運転者の過労運転を防ぐため、ワンマン運行の上限距離等を定めるとしました(高速・貸切バスの安全・安心回復プラン)。
これを受けて、平成25年8月1日から「高速乗合バス及び貸切バスの交替運転者の配置基準」が適用されています。このとき、それまでの一般貸切の乗務距離の上限(670km)は廃止されました(国土交通省 報道発表 平成25年5月15日)。現在の基準は、国土交通省の通達「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」の第21条関係に載っています(通達 全文PDF)。
もとになっているのは運輸規則21条6項です。条文は次のとおりです。
一般乗合旅客自動車運送事業者及び一般貸切旅客自動車運送事業者は、運転者が長距離運転又は夜間の運転に従事する場合であつて、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ、交替するための運転者を配置しておかなければならない。
通達は、この「おそれがあるとき」を具体的な数字で決めています。
高速乗合バス及び貸切バスにあっては、以下に定める実車距離、運転時間等の条件を超えて引き続き運行する場合には、あらかじめ、交替運転者を配置しておかなければならない。
ここでいう「ワンマン運行」は、交替運転者が同乗していない運行です。交替運転者を「配置」するとは、同じバスに乗せておくか、交替する場所にあらかじめ待機させておくことを指します。また「連続運転時間」は、10分以上の運転の中断をせずに続けて運転する時間と定義されています。
夜間ワンマン運行は400km、条件つきで500km
貸切バスで夜間に1人で走る場合(夜間ワンマン運行)の上限は、次のとおりです。
- 一運行の実車距離は400kmまで。運行の直前に11時間以上の休息期間があり、さらに乗務時間が10時間以内か、実車距離100kmから400kmの間に仮眠のための連続1時間以上の休憩がある場合は500kmまで
- 一運行の運転時間は、運行指示書上で9時間まで
- 連続乗務の回数は4回まで。一運行の実車距離が400kmを超える場合は2回まで
- 連続運転時間は、運行指示書上でおおむね2時間まで
- 休憩は、運転おおむね2時間ごとに連続20分以上。一運行の実車距離が400km以下なら連続15分以上

昼間ワンマン運行は500km、条件つきで600km
夜間に当たらないワンマン運行(昼間ワンマン運行)は、一運行の実車距離が500kmまでです。実車で走る区間の途中に合計1時間以上の休憩(分けるなら1回連続20分以上)をとる場合は、600kmまでになります。一運行の運転時間は運行指示書上で9時間まで、1週間に2回までは10時間までにできます。高速道路の連続運転時間は、おおむね2時間までです。

1日の上限と、乗務中の体調報告
1日の単位でも上限があります。1日の合計実車距離は600kmまでで、1週間に2回まではこれを超えられます。1日の運転時間は運行指示書上で9時間まで、夜間ワンマン運行を除いて1週間に2回までは10時間までです。
さらに、実車距離400kmを超える夜間ワンマン運行では実車距離100kmから400kmの間に、1日の合計実車距離が500kmを超えるワンマン運行では100kmから500kmの間に、運転者が運行管理者等へ電話などで体調を報告します。400kmを超える夜間ワンマン運行や、1日600kmを超えるワンマン運行では、デジタル式運行記録計による運行管理も必要です。

「夜間」は午前2時から4時で決まる
夜間ワンマン運行かどうかは、時刻で決まります。通達では、最初の旅客が乗る時刻か最後の旅客が降りる時刻が午前2時から午前4時の間にあるワンマン運行、またはこの時間帯をまたぐワンマン運行を、夜間ワンマン運行としています。夜行バスのツアーはもちろん、早朝に出発する日帰りツアーでも当たることがあります。

観光バスの運転者になれる人と、入社後の指導
日雇いや試用期間中の人は運転者に選べない
運輸規則36条1項は、バス会社が運転者として選んではいけない人を定めています。日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使われる人、試用期間中の人(14日を超えて引き続き使われている人は除く)、14日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける人です。短期のアルバイトの形で観光バスの運転を任せることはできない、という決まりです。

初任運転者の指導は貸切バスだけ10時間以上と実技20時間以上
新しく雇い入れた運転者には、会社が特別な指導をします。国土交通省告示第1676号は、指導の時間を次のように決めています(国土交通省告示第1676号)。
貸切バス以外の一般旅客自動車及び特定旅客自動車の運転者に対しては、①から⑤までについて合計6時間以上実施すること。
貸切バスの運転者に対しては、①から⑥までについて合計10時間以上、⑦について20時間以上実施すること。
⑥はドライブレコーダーの記録を使った運転特性の把握と是正、⑦は安全運転の実技です。実技は「実際に運行する可能性のある経路(高速道路、坂道、隘路、市街地等)」で行うとされています。貸切バス以外の6時間以上と比べると、座学などで4時間多く、そのうえ実技の時間も決まっています。
会社は、これとは別に運転者全員への指導監督も行い、その記録を3年間保存します(運輸規則38条1項)。38条2項では、死者や負傷者が出た事故を起こした人、新しく雇い入れた人、高齢者(65歳以上)などに、特別な指導と適性診断を受けさせることが決まっています。
また、新しく雇い入れた人は、運転者に選ばれる前に初任診断(適性診断)を受けます。65歳以上になると、65歳に達した日以後1年以内に1回、その後75歳までは3年以内ごとに1回、適齢診断を受けることになります。

路線バスの運転者と比べて、貸切バスで違う主な点
ここまでの決まりのうち、運輸規則や告示で貸切バスに向けて書かれているものを並べます。
| 項目 | 貸切バス(観光バス) | 根拠 |
|---|---|---|
| 運行指示書 | 運行ごとに作り、運転者が携行 | 運輸規則28条の2・50条11項 |
| 中間点呼 | 夜間の長距離の運行で途中に1回以上 | 運輸規則24条3項 |
| 点呼の記録 | 電磁的記録で3年間(ほかの事業は1年間) | 運輸規則24条5項 |
| 点呼の録音録画 | 90日間保存 | 運輸規則24条6項 |
| 初任運転者の指導 | 10時間以上と実技20時間以上(貸切バス以外は6時間以上) | 告示第1676号 |
| 事業の許可 | 5年ごとに更新 | 道路運送法8条1項 |
交替運転者の配置基準は、高速乗合バスと貸切バスの両方にかかります。改善基準告示の例外(294時間など)も、貸切バスの運転者のほか、高速バスの運転者なども対象です。
大きな事故のあとで変わった貸切バスの制度
軽井沢スキーバス事故と85項目の対策
平成28年1月15日、長野県北佐久郡軽井沢町でスキーバスの事故が起きました。国土交通省は、事故対策検討委員会で再発防止策を検討し、同年6月に85項目の「安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策」をとりまとめました。その後もフォローアップ会議を開いています(国土交通省 報道発表 令和5年9月12日)。

貸切バスの許可は5年ごとの更新制に
同じ2016年に道路運送法が改正され、貸切バス事業の許可は更新制になりました。道路運送法8条1項は、次のように定めています。この規定は平成29年4月1日(2017年4月1日)から施行されています(平成28年法律第100号 附則1条)。
一般貸切旅客自動車運送事業の許可は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
貸切バスの会社は、5年ごとに許可の更新を受けて事業を続けることになります。
安全情報の公表と運賃の通報窓口
国土交通省は、総合的な対策に基づいて、平成28年から貸切バス事業者の安全情報を公表しています。また、平成28年8月30日には、貸切バスの運賃・料金に関する「通報窓口」の設置を発表しました(国土交通省 報道発表 平成28年8月30日)。

2024年4月1日からの義務
令和4年10月の静岡県の横転事故を受けた改正で、2024年4月1日から貸切バスには次の義務が加わりました。
- 運送引受書、点呼の記録、業務記録、運行指示書などの保存期間を1年間から3年間に延長。点呼の記録は電磁的記録で保存
- 点呼を録音と録画(電話点呼は録音のみ)して、90日間保存
- アルコール検知器を使うときの写真を撮り、90日間保存
- 運行記録はデジタル式運行記録計で記録し、電磁的記録として3年間保存
- 安全の取り組みとして公表する内容に、運転者への安全運転の実技指導を追加
デジタル式運行記録計には経過措置があり、令和6年3月31日以前に新規登録した車は、令和7年3月31日までアナログ式でもよいとされていました。運転者から見ると、点呼で話す様子が録画され、運転の記録が細かく残る職場になったということです。

観光バス運転手の収入
収入についてはこの記事では1段落にとどめます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査 令和7年では、バス運転者のきまって支給する現金給与額は月328.4千円、年間賞与は590.1千円で、月給×12+賞与で計算すると453.1万円です(賃金構造基本統計調査 令和7年 職種 第1表)。ただし、この統計は路線バスと貸切バスを分けていないため、観光バスだけの年収は国の統計からは分かりません。国土交通省は、運転士の賃金水準を全産業平均まで引き上げる原資を確保するため、令和7年9月に貸切バスの公示運賃を引き上げたとしています(国土交通省 貸切バス運賃改定後のフォローアップについて)。
応募する前に、国の公表データで確かめられること
安全情報で見られる項目
貸切バス事業者の安全情報は、誰でも国土交通省のサイトで見られます。項目は、バス協会等への加入、安全性評価認定、車両(車齢、ドライブレコーダー、デジタル式運行記録計など)、運転者(運転者数、平均勤続年数、平均給与額の水準)、事故と行政処分です(貸切バス事業者の安全性に関する情報)。
平均給与額の水準は、正規雇用の運転者の平均給与額を、運輸局ブロックごとの平均給与額(基準額)と比べて表示しています。Aは基準額と同額以上、Bは10%未満の下回り、Cは10%以上20%未満の下回り、Dは20%以上の下回りです(国土交通省 用語の解説)。
安全性評価認定は、貸切バス事業者の安全性や取り組みを評価して星の数で認定する制度です。国土交通省は制度の根本的な見直しを進めているとしており、星の段階は今後変わる可能性があります(国土交通省 貸切バス事業者安全性評価認定制度)。


応募前のチェックリスト
この記事の決まりをもとに、応募する前に確かめておきたいことを並べました。特定の会社をすすめるものではありません。公表データと面接で、自分に合うかどうかを見るための項目です。
- 持っている免許で、運転するバスの乗車定員に合っているか(30人以上なら大型二種)
- 国の公表データで、運転者数と平均勤続年数を見た
- 安全性評価認定と、事故や行政処分の有無を見た
- 初任運転者の指導(10時間以上)と実技(20時間以上)の進め方を聞いた
- 夜行や長距離の運行があるか、あれば交替運転者をどう付けるかを聞いた
- 労使協定で拘束時間を294時間まで延ばしているかを聞いた

タクシーの仕事と比べたい人はタクシー運転手の仕事内容の記事を、二種免許全体の取り方は二種免許の取り方の記事を見てください。
よくある質問
Q. 観光バスと貸切バスは同じものですか?
法律上、観光バスは道路運送法3条1号ロの一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)として運行されます。乗車定員11人以上のバスを1つの契約で貸し切って運ぶ事業です。
Q. 観光バスの運転手になるにはどの免許が必要ですか?
乗車定員30人以上の大型バスなら大型二種、11人以上29人以下のマイクロバスなら中型二種以上が必要です。大型二種は原則21歳以上・経歴3年以上で受けられます。
Q. 夜行の観光バスは1人で何kmまで運転できますか?
国土交通省の交替運転者の配置基準では、夜間ワンマン運行の一運行の実車距離は400kmまでです。運行直前に11時間以上の休息期間があり、乗務時間10時間以内などの条件を満たせば500kmまでになります。超える場合は交替運転者を配置します。
Q. 観光バス運転手の拘束時間の上限は?
改善基準告示で1か月281時間、1年3,300時間が原則です。貸切バスの運転者などは労使協定により、年6か月まで1か月294時間、1年3,400時間まで延ばせます。1日は13時間が原則で、最大15時間です。
Q. 点呼の録画はいつから義務ですか?
2024年4月1日からです。貸切バスの会社は、点呼を録音と録画(電話点呼は録音のみ)して、その記録を90日間保存します。
Q. 未経験でも観光バスの運転手になれますか?
免許の条件を満たせば応募はできます。入社後は、国土交通省告示第1676号により、貸切バスの運転者は合計10時間以上の指導と20時間以上の実技指導を受け、運転者に選ばれる前に初任診断を受けます。
Q. 短期のアルバイトで観光バスを運転できますか?
運輸規則36条1項により、日々雇い入れられる人や2か月以内の期間を定めて使われる人、14日未満ごとに賃金を受け取る人は運転者に選べません。試用期間中の人も、14日を超えて引き続き使われるまでは選べません。
Q. 貸切バス会社の許可に期限はありますか?
あります。道路運送法8条1項により、貸切バス事業の許可は5年ごとに更新を受けなければ効力を失います。2017年4月1日から施行されています。
Q. 中間点呼とは何ですか?
夜間に長距離を走る貸切バスの運行で、運行の途中に少なくとも1回行う点呼です。運輸規則24条3項で会社に義務づけられていて、運転者は50条10項で中間点呼を受けることになっています。
Q. 運行指示書は運転者が持っていないといけませんか?
はい。運輸規則50条11項で、貸切バスの運転者は乗務中に運行指示書を携行しなければならないとされています。休憩地点や交替する地点、睡眠に必要な施設なども運行指示書に書かれます。
Q. 観光バス運転手の年収は分かりますか?
賃金構造基本統計調査 令和7年のバス運転者は、月給×12+賞与で453.1万円です。路線バスと貸切バスを分けた国の統計はありません。
Q. 応募先の安全性はどこで確かめられますか?
国土交通省の「貸切バス事業者の安全性に関する情報」で、運転者数、平均勤続年数、平均給与額の水準、安全性評価認定、事故と行政処分などを見られます。
まとめ
観光バスの運転手は、法律上は貸切バスの運転者です。行き先も時間も運行ごとに変わるため、交替運転者の配置基準、運行指示書、中間点呼、点呼の録音録画など、路線バスにはない決まりが多くあります。大きな事故のたびに制度が見直され、いまは許可の更新制や安全情報の公表も続いています。
これから目指す人は、まず免許の条件を確かめ、国の公表データで応募先の運転者数や勤続年数を見てから、面接で指導の中身や夜行の運行の組み方を聞いてみてください。

参考にした一次情報
いずれも2026年9月26日に確認しました。
- 道路運送法(e-Gov 法令検索)
- 道路運送法施行規則(e-Gov 法令検索)
- 旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov 法令検索)
- 国土交通省 通達「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」(最終改正 令和5年10月10日)
- 国土交通省 報道発表「高速乗合バス及び貸切バスの交替運転者の配置基準の策定について」(平成25年5月15日)
- 国土交通省「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」
- 厚生労働省「バス運転者の改善基準告示」
- 国土交通省告示第1676号 旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
- 国土交通省「貸切バス事業者の安全性に関する情報」
- 同 公表データ 令和6年度(令和8年4月30日現在)
- 国土交通省「用語の解説」(貸切バス事業者の安全性に関する情報)
- 国土交通省「貸切バス事業者安全性評価認定制度」
- 国土交通省「貸切バス事業の概況」
- 国土交通省 報道発表「第8回「軽井沢スキーバス事故対策フォローアップ会議」を開催します」(令和5年9月12日)
- 国土交通省 報道発表「貸切バスの運賃・料金に関する「通報窓口」の設置について」(平成28年8月30日)
- 国土交通省 報道発表「貸切バスの安全性向上に向けた対策のための制度改正を行いました」(令和5年10月10日)
- 国土交通省「貸切バス運賃改定後のフォローアップについて」
- 国土交通省「事業用自動車総合安全プラン2030」
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年(職種)第1表
決まりの細かな運用は、応募する会社や地域の運輸局の案内で、最後は直接確かめてから進めてください。




