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法令は e-Gov の現行版、告示は国土交通省の公開資料、公営バスの例は東京都交通局が公開している令和8年度の採用選考案内と申込状況で、2026年9月26日に確認した内容です。募集の時期・人数・条件は年度ごとに変わります。応募する前に、必ず募集先の最新の案内を確認してください。
路線バスの運転手になりたいと思っても、最初にぶつかるのは「大型二種免許を自分で取ってから応募するのか」「普通免許しかなくても採用してもらえるのか」「入社してからどのくらいでハンドルを握れるのか」という疑問です。求人に免許の取得支援や未経験歓迎といった言葉が並んでいても、その中身や条件までは分かりにくいものです。
この記事では、バス運転手になるまでの手順を、道路交通法と旅客自動車運送事業運輸規則の条文、国土交通省の告示、厚生労働省の職業情報サイト job tag、日本バス協会の説明から順番に並べました。そのうえで、公営バスの例として東京都交通局が公開している令和8年度の募集要項を読み、養成枠の選考の流れと、養成期間中の身分や費用の条件を確かめています。
先に結論を書きます。路線バスの運転手として働くには大型二種免許が必要です。受験資格は原則21歳以上・経歴3年以上で、大型免許を先に取る必要はありません。なり方は、先に免許を取って応募する道と、普通免許で応募して採用後に免許を取る道(養成制度)の2つです。採用されたあとは、運転者に選ばれる前に6時間以上の指導と初任診断を受け、乗務のたびに点呼とアルコール検知器での確認を受けてからバスを出します。

バス運転手になるまでの全体の流れ
必要なのは大型二種免許
道路交通法86条1項は、旅客自動車である大型自動車を、旅客を運送する目的で運転する人に大型第二種免許を求めています(道路交通法 e-Gov)。大型自動車には、同法施行規則2条で乗車定員30人以上のものなどが当たります(道路交通法施行規則 e-Gov)。厚生労働省の job tag も、路線バス運転士について次のように書いています(job tag「路線バス運転士」)。
学歴は不問だが、就業には大型自動車第二種免許が必要となる。
免許の取り方の細かい話や教習所の費用は、大型二種免許の取り方と費用の記事で詳しく書いています。この記事では、免許は要点だけにして、採用されて乗務を始めるまでの流れを中心に見ていきます。
なり方は2つの道
日本バス協会の「バスのお仕事」は、大型二種が必要だと書いたうえで、事業者の側で免許を取らせる制度にも触れています(日本バス協会「バスのお仕事」)。
バス会社によっては、「普通免許等取得後3年以上」の方を採用して一定の条件のもとに大型二種運転免許を取得させたり、また、高校新卒者(普通免許未取得)を採用し、大型二種免許等が取得できる年齢になるまで営業所業務を中心に経験を積ませ、免許取得後にバス運転士として運転業務に従事させる制度を設けているところがあります。
つまり、道は2つあります。ひとつは、自分で教習所に通って大型二種を取ってから応募する道。もうひとつは、普通免許などで応募して、採用されたあとに事業者の制度で大型二種を取る道です。この記事では、後者を「養成制度」と呼びます。job tag にも、免許の取得を支援する事業者が増えていて、採用時に免許がなくても入社後に取る条件で採用される場合がある、という説明があります。

| A 先に大型二種を取る | B 養成制度を使う | |
|---|---|---|
| 応募するときの免許 | 大型二種 | 普通免許など(経歴の条件あり) |
| 教習所の費用 | 自分で払う | 事業者の制度による |
| 公的な支え | 指定講座なら教育訓練給付の対象になりうる | 事業者向けの助成金・補助金がある |
| 応募先 | 募集している事業者から広く選べる | 養成制度のある事業者に限られる |
| 気をつける点 | 費用と教習の時間を先に出す | 早く辞めたときの返還の定め |
4つの段階で考える
路線バスの運転手になるまでは、大きく4つの段階に分けられます。大型二種免許、採用選考、入社後の指導と初任診断、営業所での乗務開始です。養成制度を使う場合は、1番目と2番目の順番が入れ替わり、採用されてから免許を取ります。

段階1 大型二種免許(要点だけ)
受験資格は21歳・経歴3年。大型免許は要らない
道路交通法96条5項1号によると、大型二種の受験資格は、21歳以上で、大型・中型・準中型・普通・大型特殊のどれかの免許を受けていた期間が通算3年以上であることです。政令で定める経験がある人は2年です。警察庁の案内のとおり、受験資格特例教習を修了すれば、19歳以上・経歴1年以上でも受けられます(警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」)。
大事なのは、大型免許(第一種)を先に取る必要がないことです。普通免許しか持っていない人でも、経歴の条件を満たしていれば、大型二種の教習をそのまま受けられます。


教習は技能33時限・学科17時限
教習所に通う場合、普通免許を持つ人の教習は、施行規則の別表第四で技能33時限(基本操作及び基本走行15、応用走行18)、学科17時限です。学科は2025年9月1日の改正で19時限から短くなりました。1日に受けられる技能は基本2時限・応用3時限までなので、技能だけで計算上14日かかります。教習は9か月以内に修了する必要があります。

合格基準と令和7年の結果
試験の合格基準は、技能試験が80%以上(施行規則24条)、学科試験が90%以上(施行規則25条)です。警察庁の運転免許統計によると、令和7年の大型二種は受験者15,605人・合格者10,475人で、合格率は67.1%でした(警察庁「運転免許統計(令和7年版)」)。合格者のうち96.1%は指定教習所の卒業者です。教習所を卒業して技能検定を受けた日から1年以内なら、試験場の技能試験が免除されます(道路交通法97条の2)。

受験資格の細かい条件、一発試験との違い、教習所の公開料金は大型二種免許の記事にまとめています。トラックの大型免許(第一種)との違いを知りたい人は大型免許の取り方と費用も参考になります。
免許の費用を支える公的な制度
先に自分で大型二種を取る場合、使えるかもしれないのが厚生労働省の教育訓練給付です(厚生労働省「教育訓練給付制度について」)。対象になるのは指定を受けた講座だけで、一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)です。特定一般教育訓練で資格を取り、修了後1年以内に雇用されると50%(上限25万円)になります。初めて使う人は雇用保険の加入期間が1年以上必要で、受講を始める2週間前までにハローワークで確認する必要があります(教育訓練給付リーフレット)。
一方、事業者が運転者を育てる側にも国の制度があります。厚生労働省の人材開発支援助成金は、大型自動車運転免許を取らせる訓練を対象の例に挙げていて、経費助成率は正社員で45%(大企業30%)です(厚生労働省「人材開発支援助成金」)。国土交通省の人材確保事業は、二種免許の取得などを1/2または1/3で補助し、補助で免許を取った人を3か月以上運転者として雇う誓約を求めています(交通DX・GX補助金「人材確保事業」)。
ただし、助成金と補助金は事業者が受け取るものです。応募する人が自分で申請する制度ではありません。養成制度の求人を見るときは、こうした制度があることを前提に、費用をだれがどこまで負担するのか、辞めたときに返す定めがあるのかを確かめておくと安心です。

段階2 採用選考(公営バスの養成枠の例)
採用選考の中身は事業者ごとに違います。日本バス協会は、選考について次のように説明しています(日本バス協会「バスのお仕事」)。
多くのバス会社では、面接のほかに適性試験、運転技能試験などを実施して、総合的な判断として、採用を決定しています。
job tag も、採用では運転の技能だけでなく、注意力や、目と手足を正確にすばやく連動させる適性が重視されると書いています。ここからは、選考の中身と条件がすべて公開されている例として、東京都交通局の令和8年度の募集要項を読んでいきます(東京都交通局「選考案内および合格発表INDEX」)。自治体の交通局のバス運転手は地方公務員で、ここに書くのは公表されているルールです。公営でも交通局ごとに制度は違います。
都営バスの養成枠とは
東京都交通局は、普通免許だけで応募でき、バスの運転免許の取得費用を交通局が負担する「都営バス運転手養成枠採用」を設けています(東京都交通局「都営バス運転手を知る(養成枠)」)。同じページによると、養成枠の採用は2015年度に始まり、都営バスは126系統、運転手は約2,000名です。応募に大型車両の運転経験やバスの運転免許は要らないと書かれています。
選考は3段階
令和8年度の養成枠【春募集】A日程の選考案内(選考案内のページ・選考案内PDF)では、流れは次のとおりでした。申込みは令和8年5月15日から6月3日まで、インターネットで受け付け(郵送も可)。一次選考は6月12日から21日のうち受験者が選ぶ日に、テストセンターで適性検査(SPI)を受けます。二次選考は7月14日から16日のうち交通局が指定する日に、面接・実技(運転)・身体検査です。
注目したいのは二次選考の実技です。選考案内には、普通自動車運転免許で運転できる車両(ワンボックスカーなど)で行うと書かれています。まだ大型二種を持っていない人が受ける選考なので、運転の実技は普通免許の範囲の車で見られます。
二次選考に合格すると、令和8年9月7日付で会計年度任用職員として任用され、研修所に入ったうえで、交通局の指定する教習所に通って大型二種を取ります。免許を取った人だけが12月(予定)の三次選考(実技)を受け、合格すると最終合格です。その後、研修所での座学と、営業所に配属されてからの先輩運転手との実地の研修を経て、令和9年3月1日に正式採用の予定です。採用当初は地方公務員法22条にもとづく条件付採用で、期間は原則6か月です。


養成枠の受験資格
受験資格も具体的に決められています。年齢は令和9年3月1日現在で19歳以上40歳未満。申込日の時点で大型二種の受験資格があること(経歴3年、政令で定めるものは2年、または1年以上で特例教習を修了)。そして、すでに大型二種を持っている人は養成枠に申し込めません。
ほかに、累積違反点数が3点以上の人、令和5年6月以降に免許の停止・取消処分を受けた人は申し込めません。視力は両眼0.8以上かつ各眼0.5以上(矯正を含む)で、早朝・深夜・宿泊の勤務ができることも条件です。国籍要件はありません。一次選考の合格者には運転記録証明書の提出も求められています。応募を考えるなら、まず自分の免許の経歴と違反歴を確かめておく必要があります。

大型二種を持っている人は通常枠
大型二種をすでに持っている人は、同じ年度の通常枠に応募します(東京都交通局 通常枠の選考案内)。通常枠の受験資格は、大型二種を持っていること(取得見込みの人は令和8年8月21日必着で免許証のコピーを出せる場合に限る)と、令和9年3月1日現在で19歳以上50歳未満であることです。バスの運転の経験は問われていません。選考は適性検査(SPI)と、面接・実技・身体検査です。
| 養成枠 | 通常枠 | |
|---|---|---|
| 応募するときの免許 | 普通免許など(大型二種は持っていない) | 大型二種(取得見込みを含む) |
| 年齢(令和9年3月1日現在) | 19歳以上40歳未満 | 19歳以上50歳未満 |
| 採用予定人数(A日程) | 20名程度 | 50名程度 |
| 任用・研修の開始 | 令和8年9月7日(会計年度任用職員) | 令和8年11月9日(研修開始予定) |
| 正式採用 | 令和9年3月1日予定 | 令和9年3月1日予定 |

申込者数と二次選考合格者数
東京都交通局は、申込状況と二次選考の合格者も公表しています。令和8年6月19日付の申込状況(申込状況PDF)では、養成枠はA日程49人・B日程25人、通常枠はA日程91人・B日程103人でした。養成枠の二次選考合格者は、A日程23名(令和8年8月7日発表)、B日程14名(令和8年8月14日発表)です。
| 区分 | 申込者数 | 二次選考合格者 | 申込者数に対する割合(計算) |
|---|---|---|---|
| 養成枠 A日程 | 49人 | 23名 | 46.9% |
| 養成枠 B日程 | 25人 | 14名 | 56.0% |
| 養成枠 合計 | 74人 | 37名 | 50.0% |
この割合は、申込者数に対する二次選考合格者数を計算したものです。申込者の全員が一次選考を受けたとは限らず、二次選考の合格は最終合格ではありません。このあと大型二種の取得と三次選考があり、最終合格者の数はこの記事の確認日の時点では公表されていませんでした。倍率や合格率として読まないようにしてください。

養成期間中の身分と、費用の条件
養成制度を使うときにいちばん読んでおきたいのが、免許を取るまでの期間の条件です。都営の養成枠では、二次選考に合格したあと約6か月間、会計年度任用職員として働きながら大型二種を取ります。勤務は週35時間以内で、給与は時給制の1,585円です。正式採用後の勤務は4週8休(4週間を平均して週38時間45分)です。
費用については、養成枠のページに免許の取得費用は交通局が全額負担すると書かれている一方で、選考案内の7章では、試験手数料や免許交付手数料などは自己負担とされています。そして、次の一文があります。
会計年度任用職員として任用後3年以内に離職した場合は、交通局が負担した大型二種免許取得にかかる費用について一部又は全額を返還していただきます。
さらに、指定する日までに免許が取れなかった場合や、免許を取ったあと三次選考に合格しなかった場合は、任用期間中でも任用が終わることがあると書かれています。養成制度は、費用を負担してもらえる代わりに、期限と、一定期間は勤めることが前提になっている制度だと分かります。

民間の事業者にも養成制度はありますが、費用の負担範囲や返還の定めは事業者ごとに違い、この記事では個別の制度は取り上げていません。求人を見るときは、免許を取るまでの身分と給与、自己負担になる費用、辞めたときに返す定めの有無と期間を、応募する前に書面で確かめておくと安心です。
段階3 入社後の指導と、運転者になる前の決まり
すぐには運転者に選べない人がいる
バスの事業者が守る決まりは、旅客自動車運送事業運輸規則にまとまっています(旅客自動車運送事業運輸規則 e-Gov)。36条1項は、次のどれかに当たる人を運転者として選任してはならないと定めています。日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使用される人、試みの使用期間中の人(14日を超えて引き続き使用されるに至った人を除く)、14日未満の期間ごとに賃金を受ける人です。
路線バスは6時間以上の指導
運輸規則38条2項は、新たに雇い入れた運転者などに特別な指導と適性診断を行うよう事業者に求めています。中身を決めているのが国土交通省告示第1676号です(国土交通省告示第1676号)。
貸切バス以外の一般旅客自動車及び特定旅客自動車の運転者に対しては、①から⑤までについて合計6時間以上実施すること。⑦については、可能な限り実施することが望ましい。貸切バスの運転者に対しては、①から⑥までについて合計10時間以上、⑦について20時間以上実施すること。
①から⑤は、安全な運転の基本、バスの構造上の特性と日常点検のしかた、運行と乗客の安全のために気をつけること、危険の予測と回避、安全装置のついた車の運転のしかたです。⑦は安全運転の実技です。この指導は、初めて運転者に選ばれる前に行うと決められています。
あわせて、選任する前に初任診断を受けさせることになっていて、65歳以上の運転者には適齢診断もあります。告示は、雇い入れる前に運転記録証明書などで事故歴を把握することも求めています。タクシーでも同じ告示で指導の時間が決まっていて、その中身はタクシーの研修の記事で詳しく書いています。

実際の研修の長さは事業者ごとに違う
法令が決めているのは最低限の時間です。job tag は、採用されると1から2か月の就業前訓練で、乗客への接遇、運転の実地訓練、各路線のコース、周辺の地理などを学び、訓練の修了時に営業所での実地試験に合格してから業務に就く、と説明しています。都営の養成枠でも、研修所での座学と、配属後の先輩運転手との実地の研修があります。全国の平均の日数を示す統計は見つからなかったので、研修の期間は応募先ごとに確かめてください。
段階4 路線バス運転手の仕事
1回の乗務の流れ
job tag の説明をもとに、路線バス運転手の1回の乗務を追ってみます。出勤すると、その日の運行予定の路線と、乗務する車両を確認します。エンジンオイルや燃料の量、ブレーキの利き具合、ドアの開閉装置などを点検し、運行管理者から点呼を受けます。点呼では健康状態の確認と、検知器によるアルコールチェックがあります。
乗務中は、停留所でドアを開け閉めし、運賃を受け取ります。走行中は次の停留所の案内アナウンスを操作し、車内に注意を呼びかけます。乗客に聞かれれば、行き先や乗換えの場所、所要時間、運賃の払い方を案内します。乗務を終えると、受け取った運賃を精算し、作業日報に走行距離などを書き込みます。

この流れの多くは法令の決まりでもあります。運輸規則21条4項は、酒気を帯びた乗務員を運行の業務に就かせてはならないと定めています。24条は、業務の前と後に点呼を行い、酒気帯びの有無や、病気・疲れ・睡眠不足で安全な運転ができないおそれがないかを確かめることと、営業所ごとにアルコール検知器を備えて使うことを求めています。25条は、路線バスなどの事業者に、運転者ごとの業務の開始・終了の地点と日時、主な経過地点、距離、休憩などを記録させ、1年間保存するよう求めています。

勤務の時間帯と休み
路線バスは始発から終車まで走るので、出勤の時間は日によって変わります。都営の選考案内には、勤務区分の目安が載っています。Aは主に始発から午前中(5:00から6:30頃に出勤し、14:00から15:30頃に退勤)、Bは朝夕のラッシュの時間帯で昼前後に長い休憩が入る勤務(6:30から8:00頃に出勤し、19:00から20:30頃に退勤)、Cは日中(設定は少ない)、Dは午後から終車まで(12:30から14:30頃に出勤し、21:30から24:00頃に退勤)です。
いずれも実働は概ね7時間45分程度で、同じ区分でも日々の出退勤の時間は違うと書かれています。休みは4週8休で、選考案内のシフト例では、週休が月曜と火曜の週がありました。job tag も、公休日が必ずしも土日祝日ではないと説明しています。早朝勤務、深夜勤務、宿泊勤務、長時間休憩の勤務、超過勤務もあります。

労働時間の上限(改善基準告示)
バス運転者の労働時間には、厚生労働省の改善基準告示で上限が決まっています(厚生労働省「バス運転者の改善基準告示」)。2024年4月1日から、拘束時間は1か月281時間・1年3,300時間まで、1日は13時間以内で延長しても最大15時間です。勤務と勤務の間の休息は継続11時間以上を基本とし、9時間を下回ってはいけません。運転時間は2日平均で1日9時間、4週平均で1週40時間まで、連続して運転できるのは4時間までです。
1か月294時間・1年3,400時間まで延ばせるのは、貸切バスなどの運転者が労使協定を結んだ場合です。ふつうの路線バスの運転者は281時間・3,300時間が上限になります。

運転手のその先のキャリア
job tag によると、路線バスの運転手から運行管理や事務の仕事に移り、営業所の所長になる人もいて、社内の試験制度を設けている事業者もあります。都営の選考案内にも、選考によって助役(運輸事務)になり、さらに選考で管理監督職に進む任用制度が書かれています。運転の仕事だけで終わらない道があることも、応募先を選ぶときの材料になります。
路線バスと観光バスは事業の種類が違う
路線バスと観光バスは、道路運送法3条で事業の種類が分かれています(道路運送法 e-Gov)。日本バス協会も、運転するバスの種類によって採用条件や労働条件が変わると説明しています。応募先がどちらの事業なのかは、最初に確かめておきたい点です。
| 路線バス | 観光バス(貸切) | |
|---|---|---|
| 道路運送法の区分 | 一般乗合旅客自動車運送事業 | 一般貸切旅客自動車運送事業 |
| 運転者に選ばれる前の指導 | 6時間以上(実技は可能な限り) | 10時間以上と実技20時間以上 |
| 拘束時間の上限 | 1か月281時間・1年3,300時間 | 労使協定で1か月294時間・1年3,400時間まで |
民営と公営の違いについて補足すると、日本バス協会の「日本のバス事業2025」では、令和5年度の乗合バス事業者は民営211者、公営16者でした(日本バス協会「日本のバス事業2025」)。自治体の交通局で働くバス運転手は地方公務員です(地方公務員法3条1項。地方公務員法 e-Gov)。タクシーとの比較はタクシー運転手とバス運転手の違いで書いています。
年収と人手の状況
厚生労働省の賃金構造基本統計調査 令和7年によると、バス運転者(男女計)のきまって支給する現金給与額は月328.4千円、年間賞与は590.1千円で、月給×12+賞与で計算すると453.1万円、平均年齢は56.0歳です(賃金構造基本統計調査 令和7年(職種)第1表)。この統計は路線バスと貸切バスを分けていません。厚生労働省の「統計からみるバス運転者の仕事」では、令和7年度の有効求人倍率はバス運転者が2.04倍で、全職業平均の1.10倍を上回っています(厚生労働省「統計からみるバス運転者の仕事」)。

応募する前のチェックリスト
ここまでの内容を、応募する前に確かめることとしてまとめました。特に養成制度を使う場合は、年齢の上限がいつ現在で数えるのか、違反歴や処分歴に条件がないか、返還の定めがあるかで、応募できるかどうかと、あとで困るかどうかが分かれます。

よくある質問
Q. 普通免許しか持っていなくてもバス運転手になれますか?
なれる道があります。ひとつは、普通免許などの経歴が3年以上(特例教習を修了すれば1年以上)あれば、大型免許を持っていなくても大型二種の教習を受けられることです。もうひとつは、養成制度のある事業者に普通免許で応募し、採用後に大型二種を取る道です。都営の養成枠は、大型二種を持っていない人が対象でした。
Q. 何歳からなれますか?
大型二種の受験資格は原則21歳以上で、受験資格特例教習を修了すれば19歳以上です。都営の令和8年度の募集では、養成枠も通常枠も令和9年3月1日現在で19歳以上が条件でした。日本バス協会は、高校新卒者を採用して営業所の業務で経験を積んでもらい、免許が取れる年齢になってから運転業務に就く制度を設けている事業者があると説明しています。
Q. 年齢の上限はありますか?
大型二種の受験資格に上限の年齢はありません。募集ごとに条件があり、都営の令和8年度では養成枠が40歳未満、通常枠が50歳未満でした。65歳以上の運転者は適齢診断を受けることになっています。年齢の条件は募集要項で確かめてください。
Q. 採用選考ではどんなことをしますか?
日本バス協会によると、多くの事業者で面接のほかに適性試験や運転技能試験を行っています。都営の養成枠では、一次が適性検査(SPI)、二次が面接・身体検査と、普通免許で運転できる車での実技、免許を取ったあとの三次がバスでの実技でした。
Q. 違反歴があると応募できませんか?
事業者によります。都営の令和8年度の養成枠では、累積違反点数が3点以上の人と、令和5年6月以降に免許の停止・取消処分を受けた人は申し込めませんでした。一次選考の合格者には運転記録証明書の提出も求めています。
Q. 入社してすぐにバスを運転できますか?
できません。旅客自動車運送事業運輸規則と国土交通省告示第1676号により、路線バスでは運転者に選ばれる前に合計6時間以上の指導と初任診断を受けます。試用期間中で14日を超えていない人なども運転者に選任できません。job tag は、就業前訓練を1から2か月と説明していますが、実際の期間は事業者ごとに違います。
Q. 養成制度で免許を取ってすぐ辞めたらどうなりますか?
制度の定めによります。都営の養成枠では、会計年度任用職員として任用されてから3年以内に離職すると、交通局が負担した大型二種の取得費用の一部または全額を返還することになっていました。民間の養成制度も、応募する前に返還の定めを確かめておくと安心です。
Q. 学歴は関係ありますか?
job tag は、路線バス運転士について学歴は不問と書いています。必要とされているのは大型二種免許と、運転の技能や注意力などの適性です。都営の養成枠の受験資格も、学歴は義務教育の修了でした。学歴と仕事の関係はタクシー運転手と学歴の記事でも取り上げています。
Q. AT限定の大型二種はありますか?
警察庁の案内によると、大型二種はこれまでMT車のみの免許で、AT免許の導入は2027年10月1日の予定です。
Q. 路線バスの運転手は土日も働きますか?
働くことがあります。job tag は公休日が必ずしも土日祝日ではないと説明していて、都営の選考案内のシフト例でも、週休が平日に入っている週がありました。休みは4週8休です。
参考にした一次情報
いずれも2026年9月26日に確認しました。
- 道路交通法(e-Gov 法令検索)
- 道路交通法施行規則(e-Gov 法令検索)
- 警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」
- 警察庁「AT大型免許等の導入及びMT免許の技能試験等の方法の見直しについて」
- 警察庁「運転免許統計(令和7年版)」
- 旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov 法令検索)
- 国土交通省告示第1676号 旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
- 道路運送法(e-Gov 法令検索)
- 地方公務員法(e-Gov 法令検索)
- 東京都交通局「都営バス運転手を知る(養成枠)」
- 東京都交通局「令和8年度 自動車運転(バス)養成枠【春募集】(A日程)採用選考案内」
- 東京都交通局 同 採用選考案内(PDF)
- 東京都交通局「令和8年度 自動車運転(バス)【春募集】(A日程)採用選考案内」
- 東京都交通局「令和8年度 東京都交通局運輸系職員採用選考 申込状況」
- 東京都交通局 養成枠 A日程 二次選考合格者
- 東京都交通局 養成枠 B日程 二次選考合格者
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「路線バス運転士」
- 公益社団法人日本バス協会「バスのお仕事」
- 公益社団法人日本バス協会「日本のバス事業2025」
- 厚生労働省「バス運転者の改善基準告示」
- 厚生労働省「統計からみるバス運転者の仕事」
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年(職種)第1表
- 厚生労働省「教育訓練給付制度について」
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
- 交通DX・GX補助金 特設サイト「旅客自動車運送事業者の人材確保事業」

バス運転手になる道は、免許を先に取るか、養成制度で採用後に取るかの2つです。どちらを選ぶにしても、最後は応募先の募集要項で、年齢の数え方、違反歴の条件、免許を取るまでの身分と費用、辞めたときの定めを確かめてから進めてください。




