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年金の制度は日本年金機構と厚生労働省のページ、定年と雇用保険は法律の条文(e-Gov)、タクシー業界の定年は全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)のガイドライン、賃金と年齢は厚生労働省の賃金構造基本統計調査、個人タクシーは地方運輸局の公示の原文です。いずれも2026年9月24日に確認しています。年金の額は人によって違うので、この記事では個人の年金額の計算はしていません。
「定年のあとも、タクシーなら働けると聞いた」「年金をもらいながら働いたら、年金が減ってしまうのではないか」「何歳まで乗れるのか」。60歳が近づいてタクシーの仕事を考えると、仕事そのものより先に、定年と年金の決まりが気になると思います。
結論から言うと、タクシーは年金を受け取りながら働く人がとても多い仕事です。令和7年の統計では、タクシー運転者の43.0%が60歳以上です。そして2026年4月から、働きながら受け取る老齢厚生年金が減りはじめる基準が、月51万円から65万円に上がりました。
ただし「年金は問題なくもらえる」と言い切れるわけではありません。60歳台前半の給付金との調整、年金を早くもらったときの減額、厚生年金に入って働くかどうかなど、条件によって受け取る額が変わります。この記事では、制度の原文と統計を並べて、自分で判断するための材料をまとめます。

結論。タクシー運転手の定年と年金のポイント
先に要点を並べます。理由と出典は、このあとの章で書きます。
- 定年は60歳を下回れない。高年齢者雇用安定法で決まっています。65歳より前の定年なら、会社は65歳まで働ける仕組みを用意しなければなりません。
- タクシー会社の定年は65歳がいちばん多い。業界の調査では、定年を決めている会社の52.4%が65歳、21.9%が60歳です。定年を決めていない会社も22%あります。
- 再雇用の上限を決めていない会社が56.4%。75歳以上を上限にする会社を合わせると、86%を超えます。
- 年金が減りはじめる基準は月65万円。2026年4月からの額で、賃金と老齢厚生年金の合計がこれを超えたときに、超えた分の半分だけ年金が止まります。
- 減るのは老齢厚生年金だけ。老齢基礎年金は、働いていても全額が出ます。
- 60歳台前半の高年齢雇用継続給付は10%に下がった。2025年4月1日以降に60歳になった人が対象です。前は15%でした。
- 厚生年金に入るのは70歳まで。65歳から70歳までは、働いて厚生年金に入っていれば、毎年10月分から年金額が見直されます。
- 個人タクシーの75歳は、協会の規約ではない。運輸局の公示で、許可に付ける条件として決まっています。
旧版のこの記事には、2026年3月までの制度より前の基準額や、根拠を示せない記述が含まれていました。直した点は、記事の最後の「この記事で訂正したこと」にまとめています。
タクシー運転手の定年は何歳か
法律で決まっているのは「60歳以上」と「65歳までの確保」
定年の年齢を会社が自由に決められるわけではありません。高年齢者雇用安定法は、次のように定めています。
第8条は「事業主がその雇用する労働者の定年…の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。」です。定年を決めるなら、60歳より下にはできません。
第9条は、65歳未満の定年を決めている会社に、65歳までの安定した雇用を確保するための措置を義務づけています。措置は「当該定年の引上げ」「継続雇用制度…の導入」「当該定年の定めの廃止」の3つのうちのどれかです。継続雇用制度とは、法律の言葉で「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」のことです。
第10条の2は、65歳から70歳までの就業の機会を確保するよう努めることを定めています。こちらは義務ではなく努力義務です。

つまり、法人のタクシー会社で働く人は、60歳で定年を迎えても、希望すれば65歳までは働ける仕組みがあるということです。65歳から先は会社しだいですが、次に見るように、タクシー業界は高い年齢まで働ける会社が多い業界です。
全国の会社の実施状況(令和7年)
厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」は、常時雇用する労働者が21人以上の237,739社の集計です(令和7年6月1日現在)。65歳までの確保措置を実施している会社は99.9%で、ほぼすべての会社が法律の義務を満たしています。
確保措置の中身は「継続雇用制度の導入」が65.1%、「定年の引上げ」が31.0%です。70歳までの就業確保措置を実施している会社は34.8%、65歳以上を定年にしている会社(定年制の廃止を含む)は34.9%でした。
定年の年齢ごとに見ると、60歳が62.2%でいちばん多く、65歳が27.2%、70歳以上が2.5%、定年制の廃止が3.9%です。これは全産業の数字で、公表資料にはタクシー業だけの内訳が載っていません。

タクシー会社の定年は65歳がいちばん多い
タクシー業界だけの数字は、全タク連の高齢者雇用推進委員会がまとめた「ハイヤー・タクシー業における高齢者雇用推進に向けたガイドライン」にあります。令和6年のアンケート(1,513件)で、定年を「定めている」は1,180件(78%)、「定めていない」は333件(22%)でした。
定年を決めている1,180件の内訳は、65歳が52.4%、60歳が21.9%、70歳が11.3%、その他が14.4%です。全産業では60歳の定年が62.2%でしたから、タクシー会社は全体より定年が高めです。

定年のあとの再雇用は「上限なし」が56.4%
同じ調査で、定年後の再雇用の年齢の上限を聞いています。令和6年(1,269件)は、上限無しが56.4%、75歳以上が30.0%、70歳が7.2%、65歳が4.4%、その他が2.0%でした。
令和元年の調査では、上限無しが44.7%、75歳以上が20.6%、70歳が15.0%、65歳が11.5%でした。ガイドラインは「65歳とするもの、70歳とするものは減少し、75歳以上とするもの、上限なしとするものが増加しています」と書いています。5年ほどのあいだに、上限を高くする会社が増えています。

定年のあとの賃金についても、ガイドラインは「前回及び今回調査のいずれも『定年前の水準と変わらない』とするものが最も多く、前回調査では63.5%、今回調査では72.9%と増加しているところです」と書いています。
理由の一つは賃金の仕組みです。ガイドラインは「オール歩合給が採用されている場合は、定年前後では適用される賃金制度は異なりませんが、基本給と歩合給が併用されている賃金制度の場合は、賞与がなくなるなどの異なる賃金制度となる場合もあります。」と説明しています。売上に応じて給与が決まる歩合の仕組みは歩合制で稼げる人と稼げない人の違いで詳しく書いています。
旧版では「大手は75歳と定めている会社が多いようです」と書いていましたが、これは出典を示せない記述でした。定年も再雇用の上限も会社ごとに違うので、応募する前に求人票と就業規則で確かめてください。
タクシー運転手は何歳の人が多いか
60歳以上が43.0%、平均年齢は56.8歳
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、タクシー運転者(男女計、一般労働者)の平均年齢は56.8歳、勤続年数は8.3年、年収は450.8万円です。旧版は「60.1歳(2018年)」と書いていましたが、令和7年の値は56.8歳です。
年齢階級別の表の人数から計算すると、60歳以上の人は全体の43.0%、65歳以上は26.3%、70歳以上は14.4%です。10人に4人以上が60歳以上という計算になります。
別の数え方もあります。全タク連のガイドラインに載っている令和7年3月31日現在の年齢別運転者証交付数では、合計241,810件のうち65歳以上が102,295件(42.3%)、平均年齢は60.4歳です。賃金の統計は会社に雇われて働く一般労働者の調査で、運転者証は交付の件数です。数え方が違うので、2つの平均年齢は一致しません。

年齢別の年収
年齢階級別に、きまって支給する給与の12か月分と年間賞与を足すと、年収は次のとおりです(令和7年、男女計の一般労働者)。
| 年齢 | きまって支給する給与(月) | 年間賞与 | 年収(計算) |
|---|---|---|---|
| 55〜59歳 | 382.1千円 | 228.3千円 | 481.4万円 |
| 60〜64歳 | 349.7千円 | 204.9千円 | 440.1万円 |
| 65〜69歳 | 301.1千円 | 177.3千円 | 379.1万円 |
| 70歳〜 | 278.8千円 | 130.3千円 | 347.6万円 |
年齢が上がると年収は下がっていきます。全タク連の資料は、高い年齢層で下がる背景について「勤務形態の変化(売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等)が影響している可能性がある。」と書いています。長い時間の勤務から、日中だけの勤務に移る人が増えるということです。

短い時間で働く人(短時間労働者)の数字も見ておきます。同じ調査の短時間労働者では、タクシー運転者の平均年齢は68.5歳、月の実労働日数は15.1日、1日の実労働時間は6.4時間、時給は1,462円です。年金を受け取りながら、日数や時間を抑えて働いている人が多いことがうかがえます。

年齢ごとの収入のくわしい見方はタクシー運転手の給料と年収に、短い時間の働き方はタクシーのパート・アルバイトにまとめています。
年金をもらいながら働くと、年金は減るのか
在職老齢年金の基準は、2026年4月から月65万円
会社に雇われて厚生年金に入りながら老齢厚生年金を受け取ると、賃金と年金の合計によっては年金の一部が止まります。これを在職老齢年金といいます。
日本年金機構のページは、改正について「令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。」と書いています。
厚生労働省と日本年金機構のリーフレットには「上記の金額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。」とあります。65万円は令和8年度の額で、来年度以降は変わる可能性があります。なお、法律(厚生年金保険法第46条第3項)の本文に書かれている額は62万円で、これを毎年度の変動に合わせて改定した額が65万円です。厚生労働省のページも「改正後の支給停止基準額(62万円)は、法律成立時(2025年6月)の額です。 2026年4月からは65万円になります。」と説明しています。

減るのは老齢厚生年金だけ
リーフレットは「年金のうち、調整の対象となるのは『老齢厚生年金』のみです。」「基準額を超過した場合に調整(支給停止)されるのは年金です(給与には影響ありません)。」と書いています。老齢基礎年金は、どれだけ働いても減りません。
70歳を過ぎて会社に勤める場合、厚生年金の被保険者ではなくなるので保険料はかかりません。それでも、賃金と老齢厚生年金の調整は同じように行われます。厚生労働省の資料によると、70歳以上も在職の調整の対象になったのは平成16(2004)年の改正からです。

60歳台前半も同じ式になっている
旧版では「60〜65歳の人は28万円を超えると減額」と書いていました。28万円は、令和4年3月以前の65歳未満の人の基準です。厚生労働省の資料によると、2020年の改正で60〜64歳の基準を65歳以上の基準に合わせました。いまは年齢に関係なく、同じ式、同じ基準額(2026年4月からは65万円)で計算します。
計算式と、式の例
日本年金機構の計算方法は次のとおりです。
- 基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円以下 → 全額支給
- 合計が65万円を超える → 基本月額 −(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 65万円)÷ 2
「基本月額」は、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額です。「総報酬月額相当額」は、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。実際の給与の額ではなく、厚生年金の保険料の計算に使う額で判定します。
式の例を1つ置きます。総報酬月額相当額が60万円、基本月額が10万円の人は、合計が70万円です。65万円を超えた5万円の半分の2.5万円が止まり、年金は7.5万円になります。賃金60万円と合わせた受け取りは67.5万円です。超えた分の半分しか止まらないので、賃金が増えて手取りの合計が減ることはありません。

改正の前と後で比べた例
リーフレットの例では、賃金が月46万円、老齢厚生年金が月10万円の人(合計56万円)を比べています。2026年3月までは、51万円を超えた5万円の半分、2万5千円が止まり、年金は7万5千円でした。2026年4月からは65万円以下なので、年金は10万円のままです。リーフレットは「さらに賃金が9万円増えても年金の減額なし」と書いています。
厚生労働省のページには、2024年度の基準50万円で計算した例(賃金45万円と厚生年金10万円で合計55万円、超えた5万円の半分の2万5千円が支給停止)も載っています。旧版の記事の例「合計50万円で、46万円を超えた4万円の半分の2万円が減額」も、今の基準では65万円以下なので減りません。

タクシーの平均賃金で見ると、減る人は多くない
タクシー運転者の年齢別の賃金(令和7年)で、月の賃金の目安を出してみます。きまって支給する給与に、年間賞与を12で割った額を足した値です。
| 年齢 | 月の賃金の目安 | 65万円まで残る額 |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 約36.7万円 | 28.3万円 |
| 65〜69歳 | 約31.6万円 | 33.4万円 |
| 70歳〜 | 約29.0万円 | 36.0万円 |
65万円まで残る額より老齢厚生年金の基本月額が小さければ、年金は止まりません。たとえば60〜64歳の平均的な賃金なら、基本月額が28.3万円までは減らない計算です。
ただし、これは統計の平均から出した目安です。実際の判定は、給与の額ではなく標準報酬月額と標準賞与額で行います。自分の老齢厚生年金の月額は、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所で確かめてください。

厚生労働省の見直しのページには、65〜69歳の人の「3割以上が『年金額が減らないよう時間を調整し会社等で働く』と回答しています。」とあります。基準が上がったので、年金の減額を気にして乗務の日数を減らす必要がある人は、以前より少なくなると考えられます。
60歳から65歳のあいだに気をつけること
特別支給の老齢厚生年金は、生まれた年で決まる
65歳より前に受け取れる年金に、特別支給の老齢厚生年金があります。対象は「男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。」で、厚生年金などに1年以上加入していたことも条件です。
昭和36年4月2日以降に生まれた男性には、この年金はありません。65歳から受け取るのが基本で、65歳より前に受け取りたいなら、次に書く繰上げを選ぶことになります。日本年金機構は「特別支給の老齢厚生年金は『繰下げ制度』はありません」と書いています。

高年齢雇用継続給付は15%から10%に
60歳を過ぎて賃金が下がったときに、雇用保険から出る給付金が高年齢雇用継続給付です。厚生労働省は「60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度です。」と説明しています。雇用保険に入っていた期間が5年以上あることも条件です。
支給率は令和7年4月1日から変わりました。60歳に達した日が令和7年3月31日以前の人は賃金の15%、令和7年4月1日以降の人は賃金の10%が上限です。雇用保険法第61条では、賃金が60歳時点の64%未満のときに10%、64%以上75%未満のときは10%から一定の割合で下がる率になります。
式の例です。60歳時点の賃金が月40万円で、いまの賃金が24万円なら、24÷40で60%です。64%未満なので、給付は24万円の10%で月2.4万円です。令和7年3月31日以前に60歳になった人なら15%で3.6万円でした。支給の限度額は毎年8月に見直されるので、この記事では額を書いていません。

歩合の割合が大きいタクシーでは、60歳の前後で賃金の仕組みが変わらない会社も多く、賃金が75%未満に下がらなければ給付は出ません。定年のあとに賃金の制度が変わるかどうかは、会社に確かめておきましょう。
65歳前の年金と給付金を両方受けると、年金が一部止まる
日本年金機構によると、65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金や繰上げた年金)を受けている人が高年齢雇用継続給付を受けるときは、「在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。」。止まる額は「最高で賃金(標準報酬月額)の4%に当たる額」です。令和7年3月31日以前に給付の要件を満たした人は、最大6%です。

年金を早くもらうか、遅くもらうか
繰上げは1か月0.4%減り、減額は一生続く
老齢年金は65歳からが本来ですが、60歳から65歳までのあいだに早めて受け取れます。これが繰上げ受給です。減額率は1か月0.4%で、60歳0か月で繰上げると最大の24%です。
| 繰上げる年齢 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 減額率 | 24.0% | 19.2% | 14.4% | 9.6% | 4.8% |
65歳からの額を100とすると、60歳で繰上げた人は76を受け取り続けます。日本年金機構は「減額は生涯続きます。」と書いています。
旧版は「最大で30%下がる」と書いていました。30%は、昭和37年4月1日以前に生まれた人の率(1か月0.5%)です。昭和37年4月2日以降に生まれた人は、最大24%です。
繰上げには、働く人にとって大事な注意もあります。日本年金機構は「65歳になるまでの間、雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合は、老齢厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となります。」と書いています。60歳台前半に働きながら繰上げると、減額に加えて、給付金との調整でも年金が止まることがあります。

繰下げは1か月0.7%増える。ただし在職で止まる分は増えない
反対に、66歳から75歳までのあいだに遅らせて受け取るのが繰下げ受給です。1か月0.7%増え、66歳で8.4%、70歳で42.0%、75歳で最大の84.0%です。65歳からの額を100とすると、70歳まで遅らせれば142になります。
働きながら繰下げを考える人は、次の一文に注意してください。「65歳以後に厚生年金保険に加入していた期間がある場合や、70歳以後に厚生年金保険の適用事業所に勤務していた期間がある場合に、在職老齢年金制度により支給停止される額は増額の対象になりません。」
つまり、働いていて在職老齢年金で止まるはずだった分は、繰下げても増えません。加給年金額や振替加算額も増額の対象外です。賃金が高く、65万円の基準を超える人ほど、繰下げで増える分は小さくなります。

繰上げと繰下げのどちらが得かは、何歳まで生きるか、何歳まで働くか、賃金はいくらかで変わります。この記事では損得の計算はしません。自分の記録は、ねんきんネットや年金事務所で確かめられます。
65歳から70歳までに変わること
厚生年金に入るのは70歳まで
厚生年金保険法第9条は「適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。」と定め、第14条で「七十歳に達したとき」に資格を失うとしています。会社に雇われて社会保険に入る働き方なら、70歳までは保険料を払い、その分が年金に加わります。
毎年10月に年金が増える在職定時改定
65歳から70歳のあいだに厚生年金に入って働くと、年金額が毎年見直されます。日本年金機構は「厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の方が、基準日の9月1日において被保険者であるときは、翌月の10月分の年金額から見直されます。これを『在職定時改定』といいます。」と書いています。
退職したときは、1か月たったときに退職した翌月分から見直されます(退職改定)。70歳になったときは、70歳になった翌月分から見直されます。

65歳以上で辞めたときの給付金
65歳以上で雇用保険に入っている人は「高年齢被保険者」になります(雇用保険法第37条の2)。辞めて仕事を探すときは、基本手当ではなく、一時金の高年齢求職者給付金が出ます。額は基本手当日額の50日分(被保険者期間1年以上)か30日分(1年未満)です(同法第37条の4)。

65歳からは適齢診断も
旅客自動車運送事業運輸規則第38条第2項は、65歳以上の運転者に国が認定した適性診断を受けさせることを、タクシー会社に義務づけています。国土交通省の告示では、65歳になって1年以内に1回、その後75歳までは3年以内ごと、75歳からは1年以内ごとに受けさせることになっています。手配するのは会社です。
個人タクシーは何歳まで働けるか
旧版は「個人タクシーは全国個人タクシー協会に登録し、その規約で定年75歳」と書いていました。75歳の上限は協会の規約ではなく、国土交通省の通達にもとづいて地方運輸局が出す公示で、許可に付ける条件として決まっています。
新規の申請は65歳未満、更新は75歳まで
関東運輸局の審査基準は、新しく許可を申請する人の年齢を「申請日現在で65歳未満であること。」としています(人口がおおむね30万人以上の都市を含む営業区域)。許可にはおおむね3年間の期限が付き、更新しながら続けます。
更新の上限は「許可等の期限更新時において、年齢が満75歳に達する日(Ⅱ.4.②により許可を受けた場合は、年齢が満80歳に達する日)以降の期限は付さない。」です。中部運輸局の公示も、更新後の期限は満75歳の誕生日の前日を超えない日としていて、関東と中部で同じ内容です。
75歳には例外が2つあります。1つは、人口がおおむね30万人以上の都市を含まない営業区域などの枠です。この枠は80歳未満で申請でき、上限は80歳です。ただし「申請日以前に1年以上の個人タクシーの経験を有していること」が条件なので、個人タクシーの経験がある人向けの枠です。もう1つは、平成14年1月31日以前に許可を受けた人で、75歳の条件は適用されません。

65歳を過ぎると、期限が短くなる
関東運輸局の更新の取扱いでは、年齢による更新後の期限の上限は、65歳以上73歳未満が3年後、73歳以上75歳未満が2年後、75歳以上が1年後です。中部運輸局と四国運輸局の公示も同じです。65歳になったら適齢診断を受けることも、許可の条件になっています。

全国個人タクシー協会の事業概要では、令和8年4月30日現在の個人タクシーの事業者は24,361人、平均年齢は64.3歳です。運輸局の審査基準は地域で細かい点が違うことがあるので、申請するときは申請先の運輸局の公示で確かめてください。個人タクシーの申請の条件や運転経歴の決まりはタクシー運転手は何歳から何歳まで働けるかでくわしく書いています。
定年のあとにタクシーで働きはじめるなら
定年のあとに未経験からタクシーを始める人もいます。そのときに必要なのが二種免許です。受験できるのは原則21歳以上で、普通免許などの期間が通算3年以上の人です(特例の教習を受ければ19歳以上、1年以上)。旧版の「免許を取得してから3年以上」はこの条件のことですが、採用の条件は会社ごとに違います。二種免許の取り方は二種免許の取り方にまとめています。
旧版には「足切りを達成できないとクビになるかも」という記述もありましたが、根拠を示せないため削除しました。
年金を受け取りながら働くときに、面接の前に確かめておきたいことを並べます。

とくに大事なのは、自分の老齢厚生年金の月額を知っておくことです。月額が分からないと、65万円の基準に届くかどうかも判断できません。ねんきん定期便の数字を手元に置いて、何日くらい乗るかを考えると決めやすくなります。
この記事で訂正したこと
この記事は2020年4月18日に公開したものを、2026年9月24日に書き直しました。以前の版には、古い制度の数字や根拠を示せない記述がありました。主なものを並べます。
| 以前の版の記述 | いまの事実 |
|---|---|
| 収入と年金の合計が46万円を超えると、超えた分の半分が減額 | 2026年4月から基準は65万円(2026年3月までは51万円)。減るのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減らない |
| 60〜65歳の人は28万円を超えると減額 | 28万円は令和4年3月以前の65歳未満の基準。今は年齢に関係なく同じ式 |
| 年金を前倒しでもらうと最大30%下がる | 最大30%は昭和37年4月1日以前生まれ。昭和37年4月2日以降生まれは1か月0.4%、最大24% |
| タクシー運転手の平均年齢は60.1歳(2018年) | 令和7年は56.8歳(賃金構造基本統計調査) |
| 個人タクシーは協会に登録し、その規約で定年75歳 | 運輸局の公示で許可に付ける条件。例外は80歳の枠と、平成14年1月31日以前に許可を受けた人 |
| タクシー会社も60〜65歳を定年としている | 定年は60歳を下回れず、65歳までの確保措置が義務。業界調査では65歳の定年が52.4%、定年なしが22% |
| 大手は75歳と定めている会社が多い | 出典なし。業界調査の再雇用の上限は、上限無し56.4%、75歳以上30.0% |
| 働きながら年金も問題なくもらえる | 在職老齢年金、65歳前の給付金との調整、繰上げの減額がある |

よくある質問
タクシー運転手は何歳まで働けますか
法人のタクシー会社なら、定年と再雇用の上限しだいです。業界の調査では、再雇用の上限を決めていない会社が56.4%、75歳以上を上限にする会社が30.0%です。法律では、65歳より前の定年なら65歳までは働ける仕組みを会社が用意する義務があります。個人タクシーは、運輸局の公示で更新の上限が75歳(例外あり)です。
年金をもらいながら働くと、いくら減りますか
2026年4月からは、賃金(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額の合計が月65万円を超えたときに、超えた分の半分が止まります。65万円以下なら減りません。減るのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減りません。
70歳を過ぎても年金は減りますか
70歳からは厚生年金の被保険者ではなくなるので保険料はかかりませんが、会社に勤めていれば賃金と老齢厚生年金の調整は同じように行われます。基準は同じく65万円です。
社会保険に入らない働き方なら、年金は減りませんか
在職老齢年金は、厚生年金の被保険者(70歳以上は適用事業所に勤める人)であるときの調整です。短い時間で働いて厚生年金に入らない場合は、この調整の対象になりません。ただし厚生年金に入らなければ、在職定時改定で年金が増えることもありません。自分の働き方で厚生年金に入るかどうかは、会社に確かめてください。
60歳で繰上げると、いくら減りますか
昭和37年4月2日以降に生まれた人は、60歳0か月で繰上げると24%減ります。65歳からの額を100とすると76で、この減額は一生続きます。昭和37年4月1日以前に生まれた人は最大30%です。
高年齢雇用継続給付はいくらもらえますか
令和7年4月1日以降に60歳になった人は、賃金の10%が上限です。賃金が60歳時点の64%未満のときに10%、64%以上75%未満は率が下がり、75%以上なら出ません。65歳前の年金を受けていると、年金が最大で標準報酬月額の4%止まります。
個人タクシーを始められるのは何歳までですか
関東運輸局の審査基準では、新しく申請できるのは申請日現在で65歳未満です。許可を受けたあとは、更新の上限が75歳です。細かい点は運輸局ごとに違うことがあるので、申請先の運輸局の公示で確かめてください。
まとめ
タクシーは、定年のあとも年金を受け取りながら働く人が多い仕事です。2026年4月の改正で、年金を減らさずに働ける幅も広がりました。
- 定年は60歳を下回れず、65歳より前の定年なら65歳までの確保が会社の義務
- タクシー会社の定年は65歳が52.4%でいちばん多い。再雇用の上限なしが56.4%
- タクシー運転者の43.0%が60歳以上。平均年齢は56.8歳(令和7年)
- 働きながら受け取る老齢厚生年金は、賃金との合計が月65万円を超えたときだけ、超えた分の半分が止まる(2026年4月から)
- 老齢基礎年金は減らない
- 高年齢雇用継続給付は、2025年4月1日以降に60歳になった人は10%
- 繰上げは最大24%減で一生続く。繰下げても在職で止まる分は増えない
- 厚生年金に入るのは70歳まで。65歳からは毎年10月分から年金額を見直し
- 個人タクシーの75歳は運輸局の公示の条件。例外は80歳の枠と、平成14年1月31日以前に許可を受けた人
数字と制度は、ここに書いた2026年9月24日の時点のものです。在職老齢年金の基準額は毎年度、高年齢雇用継続給付の限度額は毎年8月に変わります。自分の年金の額は、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所で確かめてから、働く日数を決めてください。




