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離職率と離職理由は厚生労働省の雇用動向調査(令和7年)、勤続年数と経験年数は賃金構造基本統計調査(令和7年)、運転者数と事業者数は全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)が載せている国土交通省の調べ、働く時間と賃金の決まりは厚生労働省の告示・通達とe-Govの条文です。いずれも2026年9月24日に確認しています。
「タクシー運転手はすぐ辞める人が多いと聞く」「入ってみて続かなかったらどうしよう」。タクシーの仕事を考えるとき、離職率が気になる人は多いと思います。
先に大事なことを書きます。タクシーだけの離職率は、公的な統計にはありません。国の離職率の調査は、タクシーを鉄道やバス、トラックなどと一緒にした「運輸業,郵便業」という大きな分類までしか出していません。検索すると「タクシーの離職率は約10%」という数字をよく見かけますが、これも業界全体の離職率ではありません(あとの章で出どころを確かめます)。
この記事では、統計で言えることと言えないことを分けて並べます。運輸業,郵便業の離職率、辞めた人が何年勤めていたか、辞めた理由、タクシー運転者の勤続年数、運転者の人数の移り変わり、そして辞めずに続けるために入社前に確かめておきたいことの順です。

結論。タクシーの離職率について統計で言えること
- タクシーだけの離職率は公的な統計にない。厚生労働省の雇用動向調査は、産業を「運輸業,郵便業」までしか分けていません。
- 運輸業,郵便業の離職率は9.0%、全産業は13.7%(令和7年)。16の産業のうち高いほうから12番目です。
- 辞めた人のうち、1年未満で辞めた人は24.1%。10年以上勤めてから辞めた人は31.9%で、全産業の20.6%より多い割合です。
- 辞めた理由は個人的理由が70.7%。定年は9.3%で、全産業の4.4%の約2.1倍です。個人的理由の中身は統計では分かれていません。
- タクシー運転者の平均勤続年数は8.3年。全産業の12.7年より4.4年短く、平均年齢は56.8歳です。
- 法人タクシーの運転者は令和4年度の214,972人を底に増えている。令和6年度は224,428人です。
- 働く時間と歩合の決まりは2024年までに変わった。拘束時間の上限の見直し、保障給は通常の賃金の6割以上、累進歩合は廃止すべきとされています。
旧版のこの記事には、事業者数の「ピーク」の取り違えや、古い人数、2024年に廃止された地理試験の話が残っていました。直した点は記事の後半「この記事で訂正したこと」にまとめています。
タクシーだけの離職率は、公的な統計にない
国の離職率の調査は「運輸業,郵便業」まで
離職率の公的な統計の中心は、厚生労働省の雇用動向調査です。調査の概要によると、対象は「5人以上の常用労働者を雇用する事業所のうちから、都道府県、産業、事業所規模別に層化して無作為に抽出した約 15,000 事業所」です。
この調査の産業の分け方は、タクシーを「運輸業,郵便業」に含めています。e-Statに載っている年計の表は産業の中分類まで細かく分かれていますが、運輸業,郵便業はその中でも分かれておらず、タクシーを含む「道路旅客運送業」の行はありません。運輸業,郵便業には、鉄道、バス、トラック、倉庫、郵便なども入っています。
つまり、「タクシー運転手の離職率は○%」と言える公的な数字はありません。この記事では、いちばん近い数字として運輸業,郵便業の値を使い、その都度「タクシーだけの数字ではない」ことを書き添えます。

離職率の計算のしかた
用語の定義では、離職率を「常用労働者数に対する入(離)職者数の割合」とし、1年間に辞めた人の数を、その年の1月1日の常用労働者数で割って出しています。離職者には「事業所を退職したり、解雇された者」が入り、他の会社への出向も含みます。同じ会社の別の事業所に移っただけの人は入りません。
この計算は「1年間で、働いている人のうち何%が辞めたか」を表しています。「入社した人のうち何%が1年以内に辞めたか」とは違う数字なので、読み比べるときに混ぜないようにしてください。
運輸業,郵便業の離職率は9.0%。全産業は13.7%
16の産業のうち高いほうから12番目
令和7年雇用動向調査の結果の概要(表4-2)では、運輸業,郵便業の離職率は9.0%、入職率は9.6%でした。全産業(産業計)は離職率13.7%、入職率14.7%です。運輸業,郵便業は全産業より離職率が4.7ポイント低い結果です。
産業ごとに並べると、いちばん高いのは宿泊業,飲食サービス業の23.7%で、運輸業,郵便業の約2.6倍です。運輸業,郵便業は16の産業のうち高いほうから12番目、低いほうから5番目に入ります。

| 産業(令和7年) | 入職率 | 離職率 |
|---|---|---|
| 全産業(産業計) | 14.7% | 13.7% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 27.8% | 23.7% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 21.8% | 21.2% |
| 医療,福祉 | 14.5% | 14.3% |
| 卸売業,小売業 | 12.6% | 11.9% |
| 製造業 | 9.6% | 9.8% |
| 運輸業,郵便業 | 9.6% | 9.0% |
| 建設業 | 10.4% | 8.7% |
| 金融業,保険業 | 8.7% | 6.6% |
ただし、これは鉄道やトラックなどを含めた運輸業,郵便業全体の数字です。「タクシーは離職率が低い」と言い切れる根拠にはなりません。反対に、「タクシーは離職率が高い」と言い切れる公的な数字もありません。
正社員とパートで分けると
同じ表では、一般労働者(パートタイム以外)とパートタイム労働者を分けています。運輸業,郵便業の一般労働者は入職率9.3%、離職率8.1%。パートタイム労働者は入職率10.6%、離職率12.2%で、パートタイムだけは辞める人の割合が入る人の割合を上回っています。
| 令和7年 | 運輸業,郵便業 | 全産業 |
|---|---|---|
| 一般労働者の入職率 | 9.3% | 12.0% |
| 一般労働者の離職率 | 8.1% | 11.4% |
| パートタイムの入職率 | 10.6% | 21.7% |
| パートタイムの離職率 | 12.2% | 19.9% |
全産業と比べると、運輸業,郵便業は一般労働者でもパートタイムでも離職率が低くなっています。人数では、運輸業,郵便業の一般労働者は1年間に218.2千人が入って190.2千人が辞め、パートタイムは64.7千人が入って74.5千人が辞めました。

1年間に入った人は282.8千人、辞めた人は264.7千人
人数で見ると、令和7年の1年間に運輸業,郵便業に入った人は282.8千人、辞めた人は264.7千人でした(表4-1)。入った人のほうが18.1千人多く、辞める人を入る人が上回っています。
入職率から離職率を引いた入職超過率は、運輸業,郵便業で0.6ポイント、全産業で1.0ポイントでした。16の産業の中には、製造業(マイナス0.2ポイント)や複合サービス事業(マイナス2.3ポイント)のように、辞める人の割合のほうが高い産業もあります。運輸業,郵便業は、令和7年については働く人が少し増えた側に入ります。

辞めた人は何年勤めていたか
1年未満で辞めた人は24.1%、10年以上は31.9%
「タクシーはすぐ辞める人が多い」と言われることがあります。これを統計で確かめる手がかりが、雇用動向調査の第33表(勤続期間別の離職者数)です。辞めた人を、辞めるまでその事業所に何年勤めていたかで分けています。
| 勤続期間 | 運輸業,郵便業(千人) | 割合(計算) | 全産業(千人) |
|---|---|---|---|
| 6か月未満 | 41.1 | 15.5% | 1,213.0 |
| 6か月〜1年 | 22.8 | 8.6% | 809.7 |
| 1〜2年 | 31.2 | 11.8% | 1,046.9 |
| 2〜5年 | 33.5 | 12.7% | 1,509.2 |
| 5〜10年 | 51.7 | 19.5% | 1,022.8 |
| 10年以上 | 84.4 | 31.9% | 1,450.0 |
| 計 | 264.7 | 100% | 7,052.6 |
運輸業,郵便業で辞めた264.7千人のうち、1年未満で辞めた人は63.9千人で24.1%でした。いちばん多いのは10年以上勤めてから辞めた人で、31.9%です。

全産業と比べると、長く勤めてから辞める人が多い
全産業では、辞めた人のうち6か月未満の人が17.2%、1年未満の人が28.7%、10年以上の人が20.6%です。運輸業,郵便業は、1年未満で辞めた人の割合が全産業より低く、10年以上勤めてから辞めた人の割合が高い形になっています。

気をつけたいのは、この割合は「辞めた人のうち何年勤めていたか」だという点です。「入社した人のうち何%が1年以内に辞めたか」ではありません。入社1年以内に辞める人の割合は、この統計からは出せません。
辞めた理由。個人的理由が70.7%
運輸業,郵便業の離職理由
雇用動向調査の第34-1表は、辞めた理由を分けています。運輸業,郵便業で辞めた人の理由の割合は次のとおりです。
| 辞めた理由(令和7年) | 運輸業,郵便業(千人) | 運輸業,郵便業 | 全産業 |
|---|---|---|---|
| 個人的理由 | 187.1 | 70.7% | 74.3% |
| 契約期間満了 | 25.8 | 9.8% | 12.6% |
| 定年 | 24.7 | 9.3% | 4.4% |
| 事業所側の理由 | 17.2 | 6.5% | 6.5% |
| 死亡・傷病 | 7.7 | 2.9% | 2.0% |
| 本人の責 | 2.2 | 0.8% | 0.2% |
| 計 | 264.7 | 100% | 100% |
事業所側の理由6.5%の中には、経営上の都合が1.7%、出向が3.1%、出向元への復帰が1.7%含まれています。雇用動向調査は出向も離職に数えるため、会社の都合で籍が移っただけの人もこの中に入っています。

定年で辞める人の割合は全産業の約2.1倍
運輸業,郵便業で目立つのは定年です。辞めた人のうち定年の人は9.3%で、全産業の4.4%の約2.1倍でした。辞めた人の69.3%は男性です。タクシー運転者の平均年齢は56.8歳(令和7年、あとの章)ですが、この表の数字はタクシーだけのものではないため、定年の割合が高い理由をタクシーの年齢構成だけで説明することはできません。

「個人的理由」の中身は統計では分からない
いちばん多い個人的理由のうち、結婚は0.1%、出産・育児は0.4%、介護・看護は1.4%で、残りの68.7%は「その他の個人的理由」です。この調査では、その他の個人的理由をさらに分けていません。
給料が合わなかったのか、お客さんとのやりとりがつらかったのか、体力的にきつかったのか。そうした細かい理由の割合は、この統計からは分かりません。タクシー運転者に限って辞めた理由を調べた公的な調査も、今回は見つけられませんでした。辞める理由を「第1位は○○」と順位で書いているページもありますが、公的な統計に基づく順位ではないことに注意してください。

離職率の数字を読むときに気をつけたいこと
ここまでの数字を、タクシーの仕事を選ぶ材料にするときに気をつけたい点を3つまとめます。
1. 業種が混ざっている
運輸業,郵便業には、タクシーのほかに鉄道、バス、トラック、倉庫、郵便などが入っています。働き方も給与の仕組みも違う仕事が混ざった平均なので、タクシーの実態と同じとは限りません。
2. 分母が違う数字を比べない
雇用動向調査の離職率は「1月1日に働いていた人のうち、1年間で辞めた人の割合」です。一方、よく見る「新卒の何%が辞めた」は、入社した人を分母にした数字です。分母が違う数字を並べて高い、低いと比べることはできません。
3. 会社ごとの差は統計に出ない
同じタクシーでも、勤務の形、歩合の計算方法、研修の手厚さは会社ごとに違います。会社が採用ページで出している離職率や定着率は、それぞれの会社が自分で数えた数字で、数え方が同じとは限りません。業界の平均だけでは、入ろうとしている会社のことは分かりません。
タクシー運転者の勤続年数は8.3年
全産業より4.4年短い
タクシー運転者だけの数字が出ている統計に、厚生労働省の賃金構造基本統計調査があります。令和7年の職種別の表では、タクシー運転者の平均勤続年数は8.3年、平均年齢は56.8歳でした。1か月の実労働時間は所定内169時間と超過23時間を合わせて192時間です。全産業は勤続12.7年、年齢44.4歳です。
勤続年数は「いまの会社で働いた年数」です。会社を移れば0年から数え直しになります。平均年齢が高いのに勤続年数が短い理由は、この表からは分かりません。何歳で入社したかまでは載っていないためです。

経験年数は「始めたばかり」と「長く続けている」の両方が多い
同じ調査の経験年数別の表は、会社が変わっても続く「タクシー運転者としての経験年数」で分けています。
| 経験年数(令和7年) | 労働者数(十人) | 割合(計算) |
|---|---|---|
| 0年 | 1881 | 11.1% |
| 1〜4年 | 4750 | 27.9% |
| 5〜9年 | 3384 | 19.9% |
| 10〜14年 | 2347 | 13.8% |
| 15年以上 | 4659 | 27.4% |
| 計 | 17021 | 100% |
経験1年未満の人が11.1%、15年以上の人が27.4%います。始めたばかりの人と長く続けている人が、どちらも一定の数いることが分かります。
給与を見ると、経験0年の所定内給与は307.0千円で、15年以上の273.6千円より高くなっています。年間賞与は0年が21.9千円、15年以上が186.1千円です。全タク連の資料は「歩合給制度では、経験年数に応じて賃金が段階的に上昇する仕組みは一般的に取り入れられておらず」と書いています。経験を積めば給料が上がっていく仕組みではない点は、続けるかどうかを考えるときの材料になります。なお、東京ハイヤー・タクシー協会の2026年版は、令和7年のタクシー業界の平均給与(月給)を467,200円としています(東京の数字です)。年収の詳しい数字はタクシー運転手の年収の記事にまとめています。

運転者の数は減ってきたが、令和4年度から増えている
法人タクシーの運転者数
旧版で「運転手の数が減っている」と書いた部分を、最新の数字で見直します。全タク連が載せている国土交通省の調べ「運転者数の推移(法人タクシーに限る)」によると、法人タクシーの運転者は平成16年度の381,943人が最多でした。そこから減り続け、令和4年度には214,972人になりました。平成16年度から166,971人、43.7%減ったことになります。
その後は増えています。令和5年度は217,161人、令和6年度は224,428人で、令和4年度から9,456人、4.4%増えました。
| 年度 | 法人タクシーの運転者数 |
|---|---|
| 平成16年 | 381,943人 |
| 平成22年 | 353,595人 |
| 平成26年 | 308,706人 |
| 平成28年 | 291,573人 |
| 令和2年 | 240,494人 |
| 令和4年 | 214,972人 |
| 令和5年 | 217,161人 |
| 令和6年 | 224,428人 |

旧版では「10年間で38万人から30万人」と書きました。これは平成16年度の381,943人から平成26年度の308,706人までにおおむね当たり、10年で73,237人減っています。旧版の「平成28年度は28万人」は誤りで、平成28年度は291,573人、28万人台になったのは平成29年度の281,570人です。
この資料は年度ごとの人数だけで、1年間に何人入って何人辞めたかは載っていません。人数が増えたことは、辞める人より入る人が多かったことを示しますが、この資料から離職率は計算できません。
女性の乗務員は、全タク連の調査で2026年3月末に14,388人、全体の5.9%でした。資料には「前年度から1,310人増加し、14,388人となり、過去最多を更新しました。」とあります。詳しくは女性のタクシー運転手の記事で書いています。
法人タクシーの事業者数
同じく「全国の事業者数及び車両数の推移」では、法人タクシーの事業者数の最多は平成5年度の7,115、次が平成20年度の7,106でした。令和6年度は5,398で、平成5年度より1,717、24.1%少なくなっています。車両数は平成19年度の222,522台が最多で、令和6年度は167,404台です。
| 年度 | 法人タクシーの事業者数 | 法人タクシーの車両数 |
|---|---|---|
| 平成5年 | 7,115 | 212,164台 |
| 平成17年 | 7,076 | 221,571台 |
| 平成19年 | 6,987 | 222,522台 |
| 平成20年 | 7,106 | 220,724台 |
| 平成28年 | 6,231 | 188,792台 |
| 令和2年 | 5,828 | 177,367台 |
| 令和4年 | 5,580 | 173,041台 |
| 令和6年 | 5,398 | 167,404台 |
車両数は平成19年度の222,522台から令和6年度の167,404台へ、55,118台減りました。同じ資料では、個人タクシーの車両数も令和6年度に25,009台となっています。
事業者の数が減った理由は、この資料には書かれていません。会社が減った理由を統計で確かめることはできないため、この記事では理由を書いていません。

よく見る「新卒の退職は約10%」はどこの数字か
「タクシー 離職率」で検索すると、「タクシー業界の離職率は約10%で、他産業の約30%より低い」と書いたページが多く出てきます。出どころとして挙げられているのは、東京ハイヤー・タクシー協会の資料「東京のタクシー」です。
2024年版を確かめると、該当する記載は「離職率が低い 退職者は新卒入社の中で 約10% 他産業平均は約 30%」でした。対象は東京の新卒入社の人で、何年以内に辞めた割合なのか、何人のうちの割合なのかは、この記載の中には書かれていません。
最新の2026年版では、同じ「乗務員採用に向けての取り組み」のページに、この記載は見当たりませんでした。いまのページには、新卒者にとってのメリットとして収入、労働条件の改善、福利厚生、ワークライフバランスの4つが並んでいます。
この「約10%」は、東京の新卒入社の人についての数字です。タクシー業界全体の離職率として読むことはできません。

働く時間と給料の決まりは、ここ数年で変わった
拘束時間の上限は2024年4月から見直された
旧版では「タクシーは2日分を1日で働く」と書きました。これは隔日勤務のことです。改善基準告示のページは、拘束時間を「使用者に拘束されている時間のこと。(「労働時間」+「休憩時間」)」と説明しています。タクシー運転者の拘束時間には、厚生労働省の改善基準告示で上限があり、2024年4月1日から次のように変わりました。
| 項目 | 2024年3月31日まで | 2024年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 1か月の拘束時間(日勤) | 299時間以内 | 288時間以内 |
| 1か月の拘束時間(隔勤) | 262時間以内 | 262時間以内(労使協定により年6か月まで270時間) |
| 1日の拘束時間(日勤) | 13時間以内(上限16時間) | 13時間以内(上限15時間) |
| 2暦日の拘束時間(隔勤) | 21時間以内 | 22時間以内、かつ2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内 |
| 休息期間(日勤) | 継続8時間以上 | 継続11時間与えるよう努めることが基本、9時間を下回らない |
| 休息期間(隔勤) | 継続20時間以上 | 継続24時間与えるよう努めることが基本、22時間を下回らない |
東京ハイヤー・タクシー協会の2026年版は、隔日勤務について「実労働時間15時間(拘束18時間、休憩3時間)としています」「月11 ~ 13回の乗務」と説明しています。1回の乗務は長い一方で、2024年4月からは休息期間の最低ラインが長くなりました。勤務の組み方はタクシー運転手の仕事内容の記事で詳しく書いています。

歩合給でも保障給が要る。累進歩合は廃止すべき
給料の仕組みにも決まりがあります。労働基準法27条は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めています。
厚生労働省の通達(基発1223第3号、令和4年12月23日)は、歩合給制度では「固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定める」こととし、売上が一定の額を超えると歩合の率が段階的に上がる累進歩合制度については「廃止すべきであること」としています。理由は「自動車運転者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念される」ためです。トップ賞や奨励加給も同じ扱いです。年次有給休暇を取った人の賃金を減らすなどの不利益な取り扱いもしないよう求めています。
保障給の額や歩合の計算方法は会社ごとに違うので、入社前に確かめておくと安心です。歩合の仕組みは歩合給の記事で詳しく書いています。

東京などの地理試験は2024年2月29日に廃止
旧版では「東京都内は地理試験に合格しないとタクシー運転手になれず、受からずに辞める人も多い」と書いていました。この地理試験は、タクシー業務適正化特別措置法施行規則の改正(令和六年国土交通省令第十五号)で、2024年2月29日に廃止されています。
東京などの指定地域でタクシー運転者になるための登録と試験は、いまも必要です。試験は法令・安全・接遇の1科目になりました。東京では、新規講習の3日目に地理の効果測定(10問、正答率70%以上で修了)が始まり、1日4,500円の新人地理基礎研修もできています。地理試験に受からないために登録できない、ということはなくなりました。詳しくは地理試験の廃止の記事に書いています。二種免許の取り方は二種免許の記事をご覧ください。

筆者が乗務していたころに見た「辞める理由」
旧版で挙げた6つの理由
ここからは、筆者が都内で乗務していた2018年から2020年ごろの見聞です。統計ではなく、当時の筆者のまわりの話として読んでください。
旧版では、辞めていく人の理由を6つ挙げていました(本文では「五つ」と書いていましたが、並べていたのは6つでした)。イメージと現実の違い、高い年齢での入社、免許の点数、収入が足りないこと、お客さんからの暴言、体力的なきつさです。どの理由が何%を占めるかを示す公的な統計はなく、順位は付けられません。

当時、筆者のまわりでは「長く続く人は長く続き、すぐ辞める人は入社して1週間ほどで辞める」と言われていました。気持ちの面で合わずに、2〜3日で辞めてしまう人も多くいました。これも筆者の見聞で、統計で確かめたものではありません。統計で見える範囲では、運輸業,郵便業で辞めた人のうち6か月未満は15.5%、10年以上は31.9%で、短く辞める人と長く勤めてから辞める人の両方がいます。
会社選びと収入
筆者は26歳でタクシー運転手になりました。最初は家から近い埼玉の営業所を考えていましたが、調べたうえで都内の会社に決めました。当時の年収は500〜600万円の間で、前の仕事より200万円以上増えました。これはあくまで筆者1人の当時の結果です。
いまの統計では、タクシー運転者の年収(きまって支給する現金給与額の12か月分と年間賞与の合計)は全国で450.8万円、東京ハイヤー・タクシー協会の資料では東京は570.3万円です(いずれも令和7年)。旧版では全国と東京の差を約100万円と書きましたが、いまの数字では119.5万円の差があります。

新人のころの言葉と、免許の点数
新人のころは、道をよく知らないことで「道が分からないならこの辺走るな!」「道が分からないなら金取るなよ!」と言われることがありました。当時の筆者は、言われたあとに気持ちをすぐ切り替えられるかどうかが大事だと感じていました。
免許の点数も、当時の筆者にとって切実でした。旧版を書いた時点で「あと3点で30日の免停」というところまで来ていました。当時の筆者の会社では、免停になった人には4つの選択肢がありました。免停が終わるまで内勤でデスクワークをする、同僚の車を洗車して洗車代で稼ぐ、休職して免停の間はアルバイトなどをする、辞める、の4つです。労働組合から月5万円ほどが出る仕組みもありました。
これは当時の1社の仕組みで、どの会社でも同じではありません。免停や病気で乗れなくなったときの扱いは、入社前に確かめておきたい点の1つです。

辞めずに続けるために、入社前に確かめたいこと
統計では細かい辞める理由は分かりませんが、「入ってから知って困る」ことは、入社前に聞いておけば減らせます。この記事で見てきた決まりをもとに、確かめておきたい点を8つにまとめました。
- 勤務の形(隔日勤務、日勤、夜勤)と、自分で選べるかどうか
- 1か月の乗務回数と拘束時間。改善基準告示の上限の範囲か
- 歩合の計算方法と、保障給の額
- 入社から数か月の給与の保障があるか
- 二種免許の費用の負担と、辞めたときに返す条件があるか
- 新人の研修と、同乗しての指導があるか
- 困ったお客さんに当たったときの連絡先と対応
- 免停や病気で乗れないときの扱い
大変な面と良い面の両方は、タクシー運転手の魅力と大変なことの記事でも同じ深さで並べています。

この記事で訂正したこと
旧版(2019年公開)の記述のうち、誤りや古くなった部分を次のように直しました。
| 以前の版の記述 | いまの事実 |
|---|---|
| 法人タクシーの事業者数は平成17年度の7,076件をピークに減少 | 最多は平成5年度の7,115。平成20年度も7,106。令和6年度は5,398 |
| 平成28年度では約10%ダウンの6,231件(平成29年版の資料) | 6,231は平成17年度から11.9%減。最新の資料は令和6年度まで |
| 運転手は10年間で38万人から30万人、平成28年度は28万人 | 平成28年度は291,573人。最多は平成16年度381,943人、最少は令和4年度214,972人、令和6年度は224,428人 |
| 女性は平成27年度6,878人、平成29年度7,292人 | 2026年3月末は14,388人、全体の5.9%(数え方は平成30年から変わった) |
| 東京は国家資格である地理試験に合格しないとなれない | 地理試験は2024年2月29日に廃止。指定地域の登録のための試験は法令・安全・接遇の1科目で残る |
| 平均年齢は59.4歳 | 令和7年は56.8歳 |
| 最大で75歳までの雇用が認められている | 根拠を確認できなかったため削除 |
| 辞める理由を「五つ」と書いて6つ並べていた | 6つ。どれも筆者の見聞で、統計の順位ではない |
| 2日分を1日で働く | 隔日勤務。拘束は2暦日22時間以内(2024年4月から) |
| 全国と東京の年収の差は約100万円 | 全国450.8万円、東京570.3万円で差は119.5万円 |

よくある質問
タクシー運転手の離職率は何%ですか
タクシーだけの離職率は、公的な統計にはありません。いちばん近いのは厚生労働省の雇用動向調査の「運輸業,郵便業」で、令和7年の離職率は9.0%でした。全産業は13.7%です。運輸業,郵便業には鉄道やバス、トラックなども含まれます。
タクシー業界は離職率が高いのですか
高いとも低いとも言い切れる公的な数字はありません。タクシーを含む運輸業,郵便業の離職率は9.0%で、16の産業のうち高いほうから12番目でした。ただしタクシー単独の数字ではないので、これだけで「低い」とは言えません。
「タクシーの離職率は約10%」は本当ですか
東京ハイヤー・タクシー協会の資料の2024年版にある「退職者は新卒入社の中で約10%」という記載がもとになっているようです。東京の新卒入社についての数字で、何年以内かなどの定義は書かれておらず、2026年版には見当たりません。業界全体の離職率ではありません。
入社してすぐ辞める人は多いですか
入社した人のうち何%がすぐ辞めたかという統計はありません。運輸業,郵便業で辞めた人のうち、勤続6か月未満の人は15.5%、1年未満は24.1%でした。全産業の1年未満28.7%より低い割合です。
タクシー運転手が辞める理由で多いのは何ですか
運輸業,郵便業では個人的理由が70.7%で最も多く、定年が9.3%、契約期間満了が9.8%です。個人的理由の中身は統計では分かれておらず、給料や客、体力のどれが多いかは分かりません。
タクシー運転手の平均勤続年数は何年ですか
賃金構造基本統計調査の令和7年の数字で8.3年です。全産業の12.7年より4.4年短く、平均年齢は56.8歳でした。勤続年数はいまの会社で働いた年数で、会社を移ると数え直しになります。
タクシー運転手の数は減っていますか
長く減ってきましたが、ここ2年は増えています。法人タクシーの運転者は平成16年度の381,943人が最多で、令和4年度に214,972人まで減り、令和6年度は224,428人でした。
経験が長いほど給料は上がりますか
令和7年の統計では、経験0年の所定内給与は307.0千円、15年以上は273.6千円で、経験が長いほど高いとは限りません。全タク連の資料も、歩合給では経験年数で段階的に上がる仕組みは一般的でないと書いています。
売上が少ないと給料がほとんど出ないのですか
歩合給でも、労働基準法27条で労働時間に応じた賃金の保障が必要です。厚生労働省の通達は、固定的給与と合わせて通常の賃金の6割以上が保障されるよう保障給を定めることとしています。保障給の額は会社ごとに違うので、入社前に確かめてください。
運転者の数が増えているのは辞める人が減ったからですか
分かりません。運転者数の資料は年度ごとの人数だけで、1年間に入った人と辞めた人の数は載っていません。令和4年度から令和6年度に9,456人増えたことは、辞めた人より入った人が多かったことを示しますが、辞める人が減ったのか、入る人が増えたのかは区別できません。
辞めた人の中で定年の人は多いのですか
運輸業,郵便業では辞めた人の9.3%が定年で、全産業の4.4%の約2.1倍です。タクシー運転者の平均年齢は56.8歳で、年齢の高い人が多い仕事です。ただし定年の割合はタクシーだけの数字ではありません。
隔日勤務は1回で何時間働くのですか
東京ハイヤー・タクシー協会の2026年版は、隔日勤務を「実労働時間15時間(拘束18時間、休憩3時間)」とし、月11〜13回の乗務と説明しています。改善基準告示の上限は、2暦日の拘束22時間以内で、2回の隔日勤務を平均して1回あたり21時間以内です。
パートタイムで働く人は辞めやすいのですか
運輸業,郵便業のパートタイム労働者の離職率は12.2%で、一般労働者の8.1%より高くなっています。ただし全産業のパートタイムは19.9%で、それよりは低い数字です。いずれもタクシーだけの数字ではありません。
東京で働くのに地理試験はまだありますか
ありません。地理試験は2024年2月29日に廃止されました。東京などの指定地域では、登録のための法令・安全・接遇の試験はいまも必要です。東京では地理の効果測定と新人地理基礎研修が始まっています。
まとめ
タクシーの離職率は、「高い」「低い」と一言で言える数字が公的な統計にはありません。いま言えることを並べると、次のとおりです。
- タクシーだけの離職率は公的な統計にない。運輸業,郵便業の離職率は9.0%、全産業は13.7%(令和7年)
- 運輸業,郵便業は令和7年の1年間に282.8千人が入り、264.7千人が辞めた。入った人のほうが多い
- 運輸業,郵便業で辞めた人のうち、1年未満は24.1%、10年以上は31.9%
- 辞めた理由は個人的理由が70.7%、定年が9.3%。個人的理由の中身は統計で分からない
- タクシー運転者の平均勤続年数は8.3年、平均年齢は56.8歳。経験15年以上の人が27.4%いる
- 法人タクシーの運転者は令和4年度の214,972人から令和6年度は224,428人へ増加
- 「新卒の退職は約10%」は東京の新卒入社についての数字で、業界全体の離職率ではない
- 拘束時間の上限は2024年4月に見直し。保障給は通常の賃金の6割以上、累進歩合は廃止すべき
- 東京などの地理試験は2024年2月29日に廃止
数字と制度は、ここに書いた2026年9月24日の時点のものです。雇用動向調査は毎年公表されます。会社ごとの違いは統計には出てこないので、入る会社の勤務の形と給与の仕組みは、面接で確かめてください。




