この記事の情報
法令は e-Gov の現行版(労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則・クレーン等安全規則・年少者労働基準規則)で確認しました。講習の時間は安全衛生情報センターに載っている告示の原文、統計は厚生労働省の労働災害統計(令和7年 確定)、手続きは東京・愛知・神奈川の各労働局と技能講習修了証明書発行事務局の公式ページによるもので、2026年10月11日に確認した内容です。講習の料金や日程は教習機関ごとに違うため、この記事では書いていません。
トラックの仕事には、クレーン付きトラックなどのクレーンを使って荷を積み下ろすものがあります。そのときにクレーンのフックへ荷を掛ける作業が「玉掛け」です。ただ、どの資格がいるのか、講習は何時間なのか、トラックのクレーンを動かすのと何が違うのかは、調べても分かりにくいところです。
この記事では、玉掛けの資格を決めている法律と規則の条文を原文で確かめ、講習の時間は告示の表から、現場のルールは労働局の資料から、それぞれ一次情報だけで整理しました。
先に結論を書きます。つり上げ荷重が1トン以上のクレーン・移動式クレーン・デリックで玉掛けをするには、玉掛け技能講習の修了などが必要です(労働安全衛生法61条、同施行令20条16号、クレーン等安全規則221条)。1トン未満なら、事業者が行う特別教育を受けます(同法59条3項、労働安全衛生規則36条19号、クレーン等安全規則222条)。技能講習は免除がなければ学科12時間と実技7時間の計19時間です。そしてクレーン付きトラックでは、クレーンを動かす資格と、荷を掛ける資格は別です。

玉掛けとは、クレーンのフックに荷を掛けて外す作業
準備からつり荷を置くまでが玉掛け
クレーンの安全に関わる業界団体である一般社団法人日本クレーン協会は、玉掛け作業を次のように説明しています(日本クレーン協会 玉掛けに関する知識)。
つり具を用いて行う荷掛けおよび荷外しを行う作業をいう。すなわち、クレーン等を用いて荷役運搬作業を行う場合、つり荷をクレーン等のフックでつるために玉掛用ワイヤーロープ等を利用して行われる準備、荷のつり上げ、つり荷の移動およびつり荷を所定の位置に置くまでの作業をいう。
つまり、ワイヤロープやつりチェーン、繊維ベルトなどの「玉掛用具」で荷をくくり、クレーンのフックに掛けて、つり上げてから下ろし、用具を外すまでの一連の作業です。クレーンを操作する人とは別に、荷に用具を掛ける人、合図をする人がいて、玉掛けはこのうち荷に用具を掛ける人の仕事です。
掛け方にはいくつも種類がある
同じ協会のページは、フックへの掛け方として「目掛け」「半掛け」「あだ巻き掛け」「肩掛け」、荷への掛け方として「目掛け」「半掛け」「目通し(絞り)」「あだ巻き掛け」「あや掛け」を挙げています。荷の形や重心の位置によって掛け方を選ぶので、講習では力学や重心の考え方も学びます。たとえば目通しの1本づりについては「荷が回転するので好ましくない」と書かれています。
ワイヤロープなどのほかに、鋼板などをはさんでつる「クランプ」や、荷の端に引っ掛ける「ハッカー」といった専用の玉掛け用具もあります。協会のページはクランプについて「一点づりはしない。」「つり角度は60度以内とする。」と書いていて、用具ごとに守る使い方が決まっています。
玉掛けの資格は1トンで2つに分かれる
1トン以上は技能講習が必要
玉掛けの資格のおおもとは、労働安全衛生法61条1項の「就業制限」です(労働安全衛生法 e-Gov)。
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
この「政令で定めるもの」の1つが、施行令20条16号の「制限荷重が一トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務」です(労働安全衛生法施行令 e-Gov)。そしてクレーン等安全規則221条が、この業務に就ける人を次の3つに決めています(クレーン等安全規則 e-Gov)。
- 玉掛け技能講習を修了した者
- 職業能力開発促進法の普通職業訓練で、玉掛け科の訓練(通信の方法によるものを除く)を修了した者
- その他厚生労働大臣が定める者
仕事で玉掛けをする人の多くが取るのが、1つ目の玉掛け技能講習です。

1トン未満は特別教育
つり上げ荷重が1トン未満のクレーンなどで玉掛けをする場合は、技能講習ではなく特別教育です。労働安全衛生法59条3項は、危険または有害な業務に就かせるとき、事業者が「当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない」と定め、労働安全衛生規則36条19号がその業務として「つり上げ荷重が一トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務」を挙げています。クレーン等安全規則222条も、同じ業務について特別の教育を求めています。
特別教育は、事業者が行う教育です。行ったときは、受けた人や科目などの記録を3年間保存することになっています(労働安全衛生規則38条、労働安全衛生規則 e-Gov)。

1トンはクレーンのつり上げ荷重で判断する
ここで間違えやすいのが「1トン」の意味です。神奈川労働局の資料は、資格の区分を説明したうえで、こう注意しています(神奈川労働局 正しい玉掛け作業で安全確保!)。
つり上げ荷重は取り扱うつり荷の最大重量ではなく、取り扱うクレーン等の最大能力(性能)をいいます。
つまり、つる荷が軽くても、使うクレーンのつり上げ荷重が1トン以上なら、玉掛け技能講習が必要です。「今日は軽い荷だけだから特別教育で足りる」という考え方はできません。なお、つり上げ荷重が0.5トン未満のクレーンなどには、クレーン等安全規則そのものが適用されません(同規則2条1号)。

| クレーンのつり上げ荷重 | 玉掛けに必要なもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 1トン以上 | 玉掛け技能講習の修了など | 安衛法61条1項・施行令20条16号・クレーン則221条 |
| 1トン未満 | 玉掛けの特別教育 | 安衛法59条3項・安衛則36条19号・クレーン則222条 |
| 0.5トン未満 | クレーン等安全規則の適用なし | クレーン則2条1号 |
玉掛け技能講習は19時間。持っている資格で短くなる
学科12時間と実技7時間
技能講習の科目と時間は「玉掛け技能講習規程」という告示で決まっています(玉掛け技能講習規程 安全衛生情報センター)。現在の規程は、令和8年4月1日から適用されているものです。表は次のとおりです。
| 区分 | 講習科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | クレーン等に関する知識(種類・構造・安全装置など) | 1時間 |
| 学科 | 玉掛けに必要な力学に関する知識(力・重心・摩擦・玉掛用具の強さなど) | 3時間 |
| 学科 | 玉掛けの方法(用具の選び方・基本動作・合図の方法など) | 7時間 |
| 学科 | 関係法令 | 1時間 |
| 実技 | 玉掛け(重量目測・用具の選定と使用・0.5トン以上の荷の基本作業と応用作業) | 6時間 |
| 実技 | 運転のための合図(手・小旗などを使う合図) | 1時間 |
学科は1+3+7+1で12時間、実技は6+1で7時間、あわせて19時間です。学科はおおむね100人以内、実技は10人以内を1単位として行うと定められています。講習の最後には修了試験があり、学科試験(筆記または口述)と実技試験の両方を受けます(規程5条)。
実技の「重量目測」は、つる荷の重さを目で見て見積もる練習です。玉掛けでは、荷の重さに合った太さや本数の用具を選ばないと、用具が切れたりクレーンの能力を超えたりします。学科で力学に3時間、玉掛けの方法に7時間をあてているのは、重心の見極めや、つり角度で用具にかかる力が変わることなど、現場の判断のもとになる知識を身につけるためです。

クレーンの免許や技能講習があれば15時間
規程3条は、すでに持っている資格や経験によって、一部の科目を受けなくてよいと定めています。
- クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、揚貨装置運転士免許を持つ人、床上操作式クレーン運転技能講習か小型移動式クレーン運転技能講習を修了した人 → 「力学」(3時間)と「合図」(1時間)が免除。19−3−1で15時間
- つり上げ荷重5トン以上のクレーンの運転、1トン以上の移動式クレーンの運転、またはそれ未満のクレーンなどの運転(特別教育の業務)に6か月以上就いた人 → 「合図」が免除。19−1で18時間
補助作業の経験があれば16時間
規程4条は、玉掛けに近い仕事をしてきた人のための特例です。つり上げ荷重1トン以上のクレーンなどで玉掛けの補助作業に6か月以上就いた人は、知識1時間・力学3時間・玉掛けの方法6時間・関係法令1時間・玉掛け4時間・合図1時間の16時間です。つり上げ荷重1トン未満のクレーンなどで玉掛けの業務に6か月以上就いた人は、ここから合図を除いた15時間になります。

どの区分で受けられるかは、申し込む教習機関で確かめてください。経験で免除を受ける場合に何を出せばよいかも、あわせて教習機関に確かめておくと安心です。
1トン未満の特別教育は9時間以上
特別教育の中身は「クレーン取扱い業務等特別教育規程」の5条で決まっています(クレーン取扱い業務等特別教育規程 安全衛生情報センター)。科目はクレーン等安全規則222条が定める6つで、時間は次の表の「以上」です。
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | クレーン等に関する知識 | 1時間以上 |
| 学科 | 玉掛けに必要な力学に関する知識 | 1時間以上 |
| 学科 | 玉掛けの方法 | 2時間以上 |
| 学科 | 関係法令 | 1時間以上 |
| 実技 | 玉掛け(材質や形の違う2つ以上の物の重量目測、用具の選び方と玉掛けの方法) | 3時間以上 |
| 実技 | 運転のための合図 | 1時間以上 |
学科は1+1+2+1で5時間、実技は3+1で4時間、あわせて9時間以上です。技能講習の19時間と比べると、力学が3時間から1時間に、玉掛けの方法が7時間から2時間に短くなっています。

技能講習との違い
2つの違いをまとめると、次のようになります。いちばん大きいのは、技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた機関(登録教習機関)が行って修了証を交付するのに対し、特別教育は事業者が自分の労働者に行う教育だという点です。技能講習の修了者は、仕事をするときに修了証などの「資格を証する書面」を携帯していなければなりません(労働安全衛生法61条3項)。
| 玉掛け技能講習 | 玉掛けの特別教育 | |
|---|---|---|
| 対象 | つり上げ荷重1トン以上 | つり上げ荷重1トン未満 |
| 行う人 | 登録教習機関 | 事業者 |
| 時間 | 19時間(免除で15時間まで短縮) | 9時間以上 |
| 証明 | 技能講習修了証(安衛法76条2項) | 事業者が記録を3年間保存 |

転職を考えている人にとっては、この違いが大事です。技能講習の修了証は個人に交付されるので、勤め先が変わってもそのまま使えます。特別教育は事業者が行うもので、後で説明する技能講習修了証明書発行事務局も「特別教育に関する情報は管理しておりません」としています。受けた記録の扱いは、受けたときの勤め先に確かめることになります。
玉掛け技能講習の受け方
受ける場所は労働局の登録教習機関の一覧で探す
技能講習を行えるのは、都道府県労働局長の登録を受けた機関です。各労働局が一覧を公開していて、たとえば東京労働局の「登録教習機関一覧(就業制限関係)」(令和8年8月31日現在、学校を除く)では、玉掛け技能講習の登録がある機関は19ありました(東京労働局 登録教習機関一覧、東京労働局 登録教習機関の案内)。この中には、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の東京都支部のような業界団体も入っています。

一覧には機関の名前と所在地などが載っていますが、料金は載っていません。講習の料金は機関ごとに違い、公的な資料で比べられる数字は見つからなかったため、この記事では料金を書いていません。申し込む前に、各機関の案内で料金・日程・免除の扱いを確かめてください。
申し込みから修了証を受け取るまで

流れは、受ける機関を選ぶ、持っている資格と経験から受ける区分を確かめて申し込む、学科と実技を受ける、修了試験に合格する、修了証を受け取る、の順です。何日に分けて行うかは、機関ごとの案内で確かめてください。
18歳未満は玉掛けの業務に就けない
年齢についての法令の定めもあります。年少者労働基準規則8条10号は、満18歳に満たない人を就かせてはならない業務として、「クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務(二人以上の者によつて行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)」を挙げています(年少者労働基準規則 e-Gov)。講習を何歳から受けられるかは、受ける機関の案内で確かめてください。
クレーン付きトラックでは、運転と玉掛けは別の資格
クレーン付きトラックは移動式クレーン
トラックの荷台と運転室の間にクレーンを積んだ車は、一般に「クレーン付きトラック」と呼ばれます。日本クレーン協会は、これを移動式クレーンの中の「積載形トラッククレーン」に分類し、次のように説明しています(日本クレーン協会 小型移動式クレーンの知識)。
積載形トラッククレーンは、トラックの荷台と運転室の間などにクレーン装置を搭載し、走行用の原動機(エンジン)から動力を取り出してクレーン装置の作動を行うもので、つり上げ荷重が3トン未満の機種が多い。
施行令1条8号は、移動式クレーンを「原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーン」と定めています。クレーン付きトラックのクレーンも、移動式クレーンとして規則の対象になります。

クレーンを動かす資格はつり上げ荷重で3段階
移動式クレーンの運転(道路の上を走らせる運転を除く)に必要な資格は、つり上げ荷重で3つに分かれます。
- 1トン未満 → 特別教育(クレーン等安全規則67条、労働安全衛生規則36条16号)
- 1トン以上5トン未満(小型移動式クレーン)→ 小型移動式クレーン運転技能講習の修了(クレーン等安全規則68条ただし書)
- 5トン以上 → 移動式クレーン運転士免許(クレーン等安全規則68条)
クレーン等安全規則68条の原文は「事業者は、令第二十条第七号に掲げる業務については、移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ、当該業務に就かせてはならない。ただし、つり上げ荷重が一トン以上五トン未満の移動式クレーン(以下「小型移動式クレーン」という。)の運転の業務については、小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができる。」です。
荷を掛けるなら、別に玉掛けの資格がいる
クレーンを動かす資格と、荷を掛ける資格は、条文が別です。運転は68条、玉掛けは221条(1トン以上)と222条(1トン未満)です。クレーン付きトラックの運転手が、自分でクレーンを操作し、自分で荷にワイヤを掛けるなら、運転の資格と玉掛けの資格の両方が必要になります。
クレーン等安全規則71条1項は、移動式クレーンで作業するときに合図を決めて合図者を指名するよう求めていますが、「移動式クレーンの運転者に単独で作業を行なわせるときは、この限りでない」としています。これは合図者についての定めで、1人で作業する場合でも、玉掛けの資格がいらなくなるわけではありません。

そしてもう1つ、トラックで道路を走るには、車の大きさに合った運転免許が必要です。施行令20条7号は移動式クレーンの運転から「道路上を走行させる運転」を除いていて、道路を走る部分は道路交通法の運転免許の話になります。車両の重さによって必要な免許が変わるので、準中型免許、中型免許、大型免許の記事もあわせて確かめてください。
小型移動式クレーンと玉掛けを両方取ると35時間
小型移動式クレーン運転技能講習は、学科13時間(小型移動式クレーンに関する知識6時間、原動機及び電気に関する知識3時間、力学3時間、関係法令1時間)と実技7時間(運転6時間、合図1時間)の20時間です(クレーン等運転関係技能講習規程 安全衛生情報センター)。
2つの講習はお互いに科目の免除があります。玉掛け技能講習を修了した人が小型移動式クレーンの講習を受けると、力学と合図が免除されて20−3−1で16時間。逆に、小型移動式クレーンの講習を先に修了した人が玉掛け技能講習を受けると、19−3−1で15時間です。どちらを先に取っても、合計は19+16=35時間、20+15=35時間で同じです(いずれも規程に定められた講習の時間で、修了試験の時間は含みません)。

同じ荷役の資格でも、フォークリフトは別の就業制限です。施行令20条11号は、最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転(道路上を走らせる運転を除く)を技能講習などが必要な業務にしていて、玉掛けの資格では運転できません。
玉掛用具のルールは条文で数字が決まっている
ワイヤロープの安全係数は6以上
玉掛けに使う用具には、強さの基準が条文で決まっています。クレーン等安全規則213条は、ワイヤロープの安全係数を「六以上でなければ使用してはならない」とし、安全係数を「ワイヤロープの切断荷重の値を、当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除した値」と定めています。つりチェーンは条件を満たすもので4以上、それ以外は5以上(213条の2)、フックとシャックルは5以上(214条)です。

使ってはいけないワイヤロープとチェーン
傷んだ用具を使うことも禁止されています。条文に書かれた基準は次のとおりです。
| 用具 | 使ってはいけない状態 | 条文 |
|---|---|---|
| ワイヤロープ | 1よりの間で素線の数の10%以上が切断/直径の減少が公称径の7%を超える/キンクした/著しい形くずれ・腐食 | 215条 |
| つりチェーン | 伸びが製造時の長さの5%を超える/リンクの断面の直径の減少が製造時の10%を超える/き裂 | 216条 |
| フック・シャックル・リングなど | 変形している/き裂がある | 217条 |
| 繊維ロープ・繊維ベルト | ストランドが切断している/著しい損傷・腐食 | 218条 |

その日の作業の前に点検する
クレーン等安全規則220条は、玉掛けの作業を行うときは「その日の作業を開始する前に」ワイヤロープ等の異常の有無を点検し、異常を見つけたら「直ちに補修しなければならない」と定めています。トラックに積みっぱなしのワイヤやベルトも、使う日の作業前に確かめる対象です。

現場で守るルール
つり荷の下に入ってはいけない6つの場面
移動式クレーンの作業では、次の6つの場面で、つり上げられている荷の下に入ることを禁止しなければなりません(クレーン等安全規則74条の2)。
- ハッカーを使って玉掛けした荷をつっているとき
- つりクランプ1個で玉掛けした荷をつっているとき
- ワイヤロープなどを1か所に掛けて荷をつっているとき(荷の穴やアイボルトに通している場合を除く)
- 複数の荷を一度につっていて、結束や箱詰めなどで固定されていないとき
- 磁力や陰圧で吸着させるつり具・玉掛用具を使っているとき
- 動力下降以外の方法で荷やつり具を下げるとき

玉掛け作業の3原則
厚生労働省は「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」(平成12年2月24日 基発第96号)を出していて、神奈川労働局がその要約を公開しています。その中で、玉掛け作業の基本事項として3つの原則を挙げています。
- 正しい玉掛け → つり荷の質量と形状に合ったつり具を使い、重心の真上を静かにつり上げ、安定したことを確かめる
- 万一のことを考えた玉掛作業者の位置姿勢 → ワイヤロープが切れたら、荷が振れたら、荷が崩れたらを常に予測して、安全な位置や退避できる姿勢をとる
- 共同作業者相互に意思の疎通 → 役割分担をはっきりさせ、これからやることを全員が理解・納得している

作業の前には、荷の質量、荷の重心、荷の形状、運搬経路、クレーン等の揚程(リフト高さ)、玉掛け用具を確かめるよう求めています。
つり角度は原則90度以内
同じガイドラインは、具体的な数字も示しています。つり角度は原則として90度以内、クランプやハッカーを使うときのつり角度は60度以内、汎用クランプは荷の形に合ったものを少なくとも2個以上、横つりクランプの掛け巾角度は30度以内です。ほかにも、クレーンが動いている間はつり荷や玉掛用具に直接さわらないこと、玉掛用具を外すときにフックの巻き上げで引き抜かないこと、フックの上面と側面でワイヤロープが重ならないようにすること、溶接や改造をしたハッカーを使わないことが挙げられています。

4つの役割を分ける
ガイドラインは、事業者がクレーン等の運転者、玉掛け者、合図者、玉掛け補助者などの配置を決め、その中から「玉掛け作業責任者」を指名するよう求めています。玉掛け者は、用具を使う前に点検し、重心を見極めて掛け、「安全な位置に退避した上で、合図者に合図」します。荷が地面から離れる「地切り」のときにつり荷の状態を確かめ、用具を外すのは着地した荷が安定したのを確かめてからです。合図者は運転者と玉掛け者の両方が見える場所に立ち、つり荷の下に人が入っていないことを確かめながら誘導します。運転者は、つり荷の下に人が入ったらすぐに操作を止めます。

移動式クレーンで作業するときは、あらかじめ作業の方法、転倒を防ぐ方法、労働者の配置と指揮の系統を決め、作業の前に関係する労働者に知らせることも決められています(クレーン等安全規則66条の2)。
玉掛けに関わる労働災害
令和7年の統計
厚生労働省の労働災害統計(令和7年 確定、令和8年4月7日時点)で、全産業の死傷者(死亡と休業4日以上)を災害の「起因物」ごとに見ると、クレーンが664人、移動式クレーンが494人、玉掛用具が292人でした(厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害統計)。死亡者では、クレーン10人、移動式クレーン11人、玉掛用具5人です。
トラック運送が入る道路貨物運送業だけを見ると、死傷者14,380人のうち、クレーンが55人、移動式クレーンが76人、玉掛用具が32人でした。荷役の安全についてはルート配送の記事や労災の記事でまとめています。

この数字は「起因物」(災害のもとになった機械や物)の分類です。クレーンが起因物でも玉掛け作業中とは限らず、反対に玉掛け作業中の災害が別の起因物に分類されていることもあります。玉掛け作業中の災害の件数そのものではない点に注意してください。
トラックが関わった死亡災害の例
神奈川労働局の資料は、令和4年に全国で起きたクレーン、移動式クレーン、玉掛用具等に係る死亡災害のうち、玉掛けに関連するものが「約半数を占める状況」だったと書き、管内の死亡災害の例を載せています。同じ資料は、これらの災害の多くが「玉掛けした荷の運搬中に荷が落下したり、作業者に激突すること等によって発生しています」と説明し、神奈川労働局の管内でも平成30年から令和4年の5年間に、クレーン、移動式クレーン、玉掛用具等に係る死亡災害が7件起きたとしています。トラックやトラッククレーンが関わったものには、次の例があります。
- 令和3年6月 → 定格荷重1トンの低床ジブクレーンで、4トントラックからバスダクトを2連つり(168キロと345キロの荷)してつり上げたところ、高さ約30メートル付近で下の荷が落ち、下にいた玉掛補助者に当たった
- 令和3年11月 → 金属製の倉庫扉(約350キロ)を積載形トラッククレーンでつり上げて旋回中、ワイヤロープを掛けていた扉の部材が外れて扉が倒れ、揺れを手で押さえていた人が下敷きになった
- 令和4年3月 → 柱状の資材(約600キロ)を移動式クレーンでつって旋回中、目通し1本つりのワイヤロープがフックから外れて落ち、介添えロープを付けようとしていた人が下敷きになった

どの例も、1本つりや掛けた部材の外れなど、ガイドラインや規則が注意している形と重なっています。資格を取ることはスタートで、毎回の掛け方と立ち位置を守ることが事故を防ぐことにつながります。
資格がないまま玉掛けをしたときの罰則
就業制限に違反したときの罰則は、労働安全衛生法に書かれています。資格のない人を玉掛けの業務に就かせた場合(61条1項違反)は、119条で「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」です。資格のない本人が業務を行った場合(61条2項違反)も、120条で「五十万円以下の罰金」の対象になります。特別教育をしなかった場合(59条3項違反)も119条の対象です。さらに122条により、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されることがあります。

つり上げ荷重1トン以上のクレーンで荷に用具を掛け外しする作業は、手伝いのつもりでも玉掛けの業務にあたる可能性があります。資格を取るまでは自分で掛けず、どこまでの作業をしてよいかを勤め先に確かめるのが確実です。
修了証をなくしたときの再交付
申し込み先は講習を行った登録教習機関
技能講習修了証をなくしたり傷めたりしたときは、修了証を交付した登録教習機関に再交付を申し込みます(労働安全衛生規則82条1項)。愛知労働局は、はっきりこう書いています(愛知労働局 修了証の書替・再交付を希望される方へ)。
再交付の申請先は、技能講習の実施機関(登録教習機関)になります。労働局ではありません。
注意したいのは、講習を受けた「会場」ではなく、講習を行った「機関」を確かめる点です。愛知労働局は、調べ方として、手元にコピーがあれば確認する、一緒に受けた同僚や友人の修了証を見せてもらう、会社の業務で受けたなら会社に確認する、会場を管轄する都道府県労働局で登録教習機関を調べる、の4つを挙げています。
機関が講習をやめていたら発行事務局へ
登録教習機関が技能講習の業務をやめていて、帳簿が技能講習修了証明書発行事務局に引き渡されている場合は、発行事務局が「技能講習修了証明書」を交付します(労働安全衛生規則82条3項)。講習を行った機関がどうしても分からないときは、発行事務局に資格の照会(開示請求)をする方法も愛知労働局は案内しています。発行事務局の修了証明書(統合カード)は、修了証の原本と同じように、労働安全衛生法61条3項の「資格を証する書面」にあたるとされています(平成16年2月17日の通達、技能講習修了証明書発行事務局)。
発行事務局は、2026年3月16日からマイナポータルで統合カードの発行申請ができるようになったと案内しています。何枚もある修了証の原本を1枚にまとめたい人や、新しく取った資格を手持ちの統合カードに追加したい人も申し込めます。ただし発行できるのは、登録教習機関から情報が提供されて、発行事務局のデータベースに登録されている範囲だけです。費用は発行事務局のページに表で示されていますが、この記事では金額を確認できなかったため書いていません。

氏名が変わったら書替え
結婚などで氏名が変わったときは、交付を受けた登録教習機関に書替えを申し込みます(労働安全衛生規則82条2項)。愛知労働局は「住所の変更や写真の更新については書替を行わなくても問題ありません」と案内しています。
講習を受けたあとも続く教育
玉掛けの仕事に就いている人に向けては、「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針」があります(安全衛生教育に関する指針 安全衛生情報センター)。玉掛業務に就いている人向けのカリキュラムは、最近の玉掛用具等の特徴等1.0時間、玉掛用具の取扱いと保守管理2.5時間、災害事例及び関係法令1.5時間の計5.0時間です。
この指針は、すでにその業務に就いている人に、定期または随時に安全衛生教育を行うよう求めるものです。何年ごとに受けるかを条文で決めた更新制度ではないので、勤め先の方針を確かめてください。
また、テールゲートリフター付きのトラックで荷を積み下ろす仕事には、令和6年2月から別の特別教育(学科4時間と実技2時間)が必要になっています(労働安全衛生規則36条5号の4、厚生労働省 トラックでの荷役作業時における安全対策が強化されます)。玉掛けとは別の教育なので、荷役のある仕事を探すときは両方を確かめておくと安心です。
玉掛けの資格を取る前のチェック
玉掛けの資格は、クレーン付きトラックで自分で荷を掛ける仕事では、クレーンを動かす資格とあわせて必要になる資格です。運転の仕事全体の給料の水準はトラックドライバーの給料の記事で、けん引などほかの免許はけん引免許の記事でまとめています。講習を申し込む前に、次の点を確かめておきましょう。

よくある質問
Q. 玉掛けの資格に有効期限はありますか?
技能講習修了証について、有効期限や更新を定めた条文は、今回確かめた法令の中にはありませんでした。ただし、すでに就いている人向けに、定期または随時の安全衛生教育を求める指針があります。
Q. 軽い荷しかつらないなら特別教育で足りますか?
荷の重さではなく、使うクレーンのつり上げ荷重で決まります。つり上げ荷重が1トン以上のクレーンなら、荷が軽くても玉掛け技能講習が必要です。
Q. クレーン付きトラックの運転手には玉掛けの資格もいりますか?
自分で荷にワイヤやベルトを掛けるなら必要です。クレーンを動かす資格(小型移動式クレーン運転技能講習など)と玉掛けの資格は、クレーン等安全規則で別の条文になっています。
Q. 講習の料金はいくらですか?
教習機関ごとに違います。労働局の登録教習機関の一覧には料金が載っておらず、公的な資料で比べられる数字は見つかりませんでした。申し込む機関の案内で確かめてください。
Q. 修了証をなくしました。労働局に行けばいいですか?
いいえ。再交付の申し込み先は、講習を行った登録教習機関です。機関が講習の業務をやめている場合は、技能講習修了証明書発行事務局に問い合わせます。
Q. 補助作業の経験は講習で役に立ちますか?
玉掛け技能講習規程4条により、つり上げ荷重1トン以上のクレーンなどで玉掛けの補助作業に6か月以上就いた人は、講習が16時間になります。経験を証明する書類の扱いは、申し込む教習機関で確かめてください。
Q. 統合カードとは何ですか?
技能講習修了証明書発行事務局が交付する技能講習修了証明書のことです。何枚もある修了証の原本を1枚にまとめたり、新しく取った資格を追加したりできます。2026年3月16日からはマイナポータルからも申請できるようになったと案内されています。
Q. 18歳未満でも玉掛けの仕事ができますか?
年少者労働基準規則8条10号により、満18歳未満の人を玉掛けの業務に就かせることはできません。2人以上で行う玉掛けの補助作業は除かれています。
参考にした一次情報
いずれも2026年10月11日に確認しました。
- 労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov 法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索)
- クレーン等安全規則(e-Gov 法令検索)
- 年少者労働基準規則(e-Gov 法令検索)
- 玉掛け技能講習規程(安全衛生情報センター)
- クレーン取扱い業務等特別教育規程(安全衛生情報センター)
- クレーン等運転関係技能講習規程(安全衛生情報センター)
- 危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針(安全衛生情報センター)
- 神奈川労働局「正しい玉掛け作業で安全確保!」
- 技能講習修了証明書発行事務局「技能講習修了証明書発行のご案内」
- 愛知労働局「修了証の書替・再交付を希望される方へ」
- 東京労働局「登録教習機関一覧(就業制限関係)」
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「労働災害統計」
- 厚生労働省「トラックでの荷役作業時における安全対策が強化されます。」
- 一般社団法人日本クレーン協会「玉掛けに関する知識」
- 一般社団法人日本クレーン協会「小型移動式クレーンの知識」
講習の区分や免除の扱いは、最後は申し込む登録教習機関に確かめてから進めてください。





