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国土交通省の通達(国自旅第169号・第170号・第171号・第359号)、中部運輸局の審査基準の公示・申請書作成の手引き・法令試験の実施要領、e-Gov の法令(道路運送法・旅客自動車運送事業運輸規則・道路運送車両法施行規則・登録免許税法・介護保険法・指定居宅サービス等の基準)、厚生労働省の介護報酬の資料で、2026年9月26日に確認した内容です。審査基準は地方運輸局ごとに公示されるため、細かな運用は申請先の運輸局・運輸支局で確かめてください。
介護タクシーを自分で始めたいと考えたとき、最初にぶつかるのが「何の許可を、どこで取ればいいのか」「お金はいくら用意すればいいのか」という疑問です。調べると「個人でも1台から開業できる」という話と、「介護保険を使うには法人が必要」という話が両方出てきて、どちらが正しいのか迷うかもしれません。
この記事では、介護タクシーの開業に必要な手続きを、国土交通省の通達、中部運輸局の審査基準と手引き、法令の原文で確認しました。運転する人の仕事の中身や、タクシー運転手との働き方の違いはタクシー運転手と介護タクシー運転手の違いの記事で扱っているので、ここでは開業する側の手続きとお金に絞ります。
先に結論を書きます。介護タクシーを開業するには、道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業の許可が必要で、多くは業務を福祉輸送に限った福祉輸送事業限定の許可です。車は1両から、営業区域は原則都道府県単位、標準処理期間は2ヵ月です。介護保険の「通院等乗降介助」を使うには、これとは別に訪問介護事業所の指定を受ける必要があります。開業費用は相場ではなく、運輸局の資金計画の基準で決まり、自己資金は所要資金の50%以上かつ事業開始当初に要する資金の100%以上を、申請日以降ずっと確保しておく必要があります。

介護タクシーの開業に必要なのは「福祉輸送事業限定」の許可
お客さんを運んで運賃を受け取るには国の許可が要る
「介護タクシー」は法律の用語ではありません。法律の上では、タクシーと同じ一般乗用旅客自動車運送事業です。道路運送法4条1項は「一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」と定めています(道路運送法 e-Gov)。許可の窓口は、営業所の場所を受け持つ地方運輸局の運輸支局です。
許可するかどうかは、道路運送法6条の基準で審査されます。事業の計画が輸送の安全を確保するため適切であること、事業の遂行上適切な計画があること、事業を自ら適確に遂行する能力があること、の3つです。また7条には、1年以上の拘禁刑の執行を終えてから5年を経過していない人や、一般旅客自動車運送事業の許可の取消しから5年を経過していない人などには許可をしない、という欠格事由があります。
福祉輸送事業限定の許可とは
一般乗用旅客自動車運送事業の許可には、業務の範囲を福祉輸送サービスに限る条件を付けたものがあります。国土交通省の通達(国自旅第169号)はこれを福祉限定許可と呼び、許可の取扱いを定めています(国土交通省 国自旅第169号)。介護タクシーとして開業する場合、多くはこの福祉限定許可を取ります。
福祉限定許可には、通常のタクシーの許可より始めやすい扱いが決められています。最低車両数は1両、営業区域は原則として都道府県単位(北海道は運輸支局の管轄区域、沖縄県は島しょ)、標準処理期間は2ヵ月です。車両には「福祉輸送車両」と「限定」の文字を、縦横50ミリメートル以上で表示します。

乗せられる人は5つの類型と付添人に限られる
福祉限定許可で運べるのは、次の5つに当たる人(要介護者等)と、その付添人です。
- 身体障害者手帳の交付を受けている人
- 介護保険の要介護認定を受けている人
- 介護保険の要支援認定を受けている人
- 上の3つ以外で、肢体不自由・内部障害・知的障害・精神障害などにより単独での移動が難しく、単独でタクシーなどの公共交通機関を使うことが難しい人
- 消防機関か、消防機関と連携するコールセンターを通じて、患者等搬送事業者の搬送サービスを受ける患者
この範囲の外の人を運ぶことはできません。中部運輸局の申請時のチェックシートにも「範囲外の旅客の輸送を行った場合、行政処分の対象となります。」と書かれています(中部運輸局 許可までの流れとチェックシート)。一般のお客さんも乗せたいなら、限定のない一般タクシーの許可を検討することになります。

使える車は福祉自動車か、要件を満たす人が乗るセダン型
使う車は、車いすやストレッチャーのためのリフト・スロープ・寝台などを備えた福祉自動車か、回転シート・リフトアップシートなど乗り降りを楽にする装置を付けた自動車です。セダン型などの一般車両も使えますが、その場合は乗務する人に資格の要件がかかります(次の章で説明します)。手元の自家用車を事業用に使う場合について、中部運輸局の手引きは、保安基準に合わない場合があるので自動車販売店に確認するよう書いています(中部運輸局 申請書作成の手引き)。
運転する人に必要な免許と資格
介護タクシーはお客さんを運んで運賃を受け取る仕事なので、運転する人には二種免許が要ります。中部運輸局の手引きでも、運転者の欄には普通自動車二種免許か大型自動車二種免許を持つ人数を書くよう指示されています。二種免許の取り方は二種免許の取り方の記事で詳しく説明しています。
これに加えて、通達は車の種類ごとに乗務する人の要件を決めています。福祉自動車に乗る人は、次の5つのどれかを満たすよう努めなければならない(努力義務)とされています。
- ケア輸送サービス従事者研修の修了
- 福祉タクシー乗務員研修の修了
- 介護福祉士
- 訪問介護員
- サービス介助士
一方、セダン型などの一般車両に乗る人は、次の4つのどれかを満たさなければなりません(必須)。申請のときは、その資格を証明する書面の写しも付けます。
- ケア輸送サービス従事者研修の修了
- 介護福祉士
- 訪問介護員
- 居宅介護従業者

よく「介護タクシーの開業には介護職員初任者研修が必須」と書かれていますが、運輸局の許可の上では、福祉自動車だけを使うなら努力義務です。ただし、次の章で説明する介護保険の通院等乗降介助をするなら、乗降介助をする人が訪問介護員等である必要があるため、実際には介護の資格が欠かせない場面が多くなります。
介護保険を使うなら「訪問介護事業所の指定」が別に要る
運輸局の許可と、介護保険の指定は別の手続き
介護タクシーには、利用者が全額を運賃として払う形と、介護保険の訪問介護の「通院等乗降介助」を組み合わせる形があります。後者は一般に介護保険タクシーと呼ばれます。通院等乗降介助は、令和6年度の介護報酬改定で1回99単位から97単位になりました(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定)。令和8年6月改定の箇所を示した算定構造でも「1回につき97単位」のままです(厚生労働省 介護報酬の算定構造)。
この単位を算定できるのは、介護保険法の指定を受けた訪問介護事業所です。指定は、介護保険法70条1項により、事業を行う人の申請で、サービスの種類と事業所ごとに行われます(介護保険法 e-Gov)。つまり、介護保険タクシーをするには、運輸局の許可と都道府県等の指定の2つを取ることになります。

運ぶ部分は介護報酬の対象外。運賃で受け取る
介護保険タクシーでも、車で運ぶこと自体は介護保険から支払われません。国土交通省のガイドラインには「乗降介助が介護報酬の対象となっている場合でも運送は介護報酬の対象外であり」と書かれています(国土交通省 国自旅第359号)。運ぶ部分は、運輸局の認可を受けた運賃で利用者から受け取ります。
このために用意されているのが介護運賃です。国土交通省の通達(国自旅第170号)は、介護運賃を「介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成する介護サービス計画(ケアプラン)又は市町村が行う介護給付費支給決定の内容に基づき、資格を有する訪問介護員等が訪問介護サービス等と連続して又は一体として行う輸送を行う場合。」の運賃としています(国土交通省 国自旅第170号)。

訪問介護の指定に要る人と設備
訪問介護事業所の指定を受けるには、厚生労働省令の基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)を満たす必要があります(指定居宅サービス等の基準 e-Gov)。
| 項目 | 基準の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 訪問介護員等の人数 | 常勤換算方法で2.5以上 | 5条1項 |
| サービス提供責任者 | 常勤の訪問介護員等のうち、利用者の数が40またはその端数を増すごとに1人以上。介護福祉士などで、専ら訪問介護に従事する人 | 5条2項・4項 |
| 管理者 | 専らその職務に従事する常勤の管理者。管理上支障がなければ事業所の他の職務と兼ねられる | 6条 |
| 設備 | 事業の運営に必要な広さの専用の区画と、必要な設備・備品 | 7条 |
1人で運転も介助も事務もする形では、訪問介護員等の常勤換算2.5以上という基準を満たせません。介護保険タクシーを始めるなら、開業の段階から人を雇う前提で計画を立てる必要があります。

介護保険の指定には法人化が必要と案内されている
介護保険法70条2項1号は、申請者が「都道府県の条例で定める者でないとき」は指定をしてはならないと定めています。中部運輸局のチェックシートは、個人で許可を申請する人に向けて「訪問介護事業所等の指定を受けるためには法人化が必要になります。」と案内し、さらに「許可取得後間もなく法人化を予定している場合は、予め法人として申請いただくと変更手続きが不要です。」と書いています。
指定の申請の窓口・手数料・審査の期間は、都道府県や市ごとに決められています。この記事では確認していないので、事業所を置く自治体の介護保険の担当に確かめてください。
個人で開業するか、法人で開業するか
運輸局の許可は、個人でも法人でも申請できます。違いが出るのは、法令試験を受ける人、専従する役員、介護保険の指定、登録免許税です。
| 項目 | 個人で申請 | 法人で申請 |
|---|---|---|
| 運輸局の許可 | 申請できる。最低1両から | 申請できる。最低1両から |
| 法令試験を受ける人 | 申請者本人 | 許可後に事業に専従する役員 |
| 専従する役員 | なし | 役員のうち1名以上が専従。そのうち1名は法令試験の合格者 |
| 介護保険の指定 | 中部運輸局の案内では法人化が必要 | 基準を満たせば申請できる |
| 登録免許税 | 1件3万円。個人だけが運転する条件の付いた個人の許可は1万5千円 | 1件3万円 |

介護保険を使わず、運賃だけで事業をするなら個人でも始められます。介護保険タクシーまで考えているなら、中部運輸局の案内どおり、最初から法人で申請すると後の変更手続きが要りません。
許可の主な要件(中部運輸局の審査基準)
許可の細かな基準は、各地方運輸局が公示しています。ここでは中部運輸局の公示第168号(令和8年2月13日一部改正)の内容を紹介します(中部運輸局 公示第168号)。ほかの地域で開業する人は、申請先の運輸局の公示で同じ項目を確かめてください。
| 項目 | 中部運輸局の審査基準 |
|---|---|
| 営業区域 | 原則として県単位 |
| 営業所 | 営業区域内にあり、土地・建物に1年以上の使用権原がある。建築基準法・都市計画法・消防法・農地法などに抵触しない |
| 車両 | 使用権原がある。最低車両数は1両 |
| 自動車車庫 | 原則として営業所に併設。できない場合は営業所から直線で2キロメートルの範囲内。点検・整備・清掃ができる |
| 休憩・仮眠の施設 | 必要。他の用途の部分と明確に区画する |
| 管理運営体制 | 法人は役員1名以上が専従。運行管理者・整備管理者の体制、指導主任者、苦情処理の体制 |
| 運転者 | 事業計画を遂行するのに足りる数の有資格の運転者を常に選任する計画 |
| 資金計画 | 所要資金の50%以上かつ事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降常に確保 |
| 法令遵守 | 法令試験に合格。社会保険等に加入する計画。行政処分の履歴がないこと |
| 損害賠償能力 | 任意保険(対人8,000万円以上、対物200万円以上、免責30万円以下) |

営業所・車庫・休憩施設は自宅でも使えるか
基準を満たせば、自宅の一部を営業所や休憩施設にする形も考えられます。中部運輸局の手引きは、休憩仮眠施設を事務室の一角に設ける場合は「パーティションやカーテン等での区画を検討ください」と書いています。車庫は計画する車をすべて収容できる広さが必要で、営業所と離れる場合は直線距離を地図に書き込みます。
注意したいのが、借りた建物の使用権原の期間です。公示の基準は「1年以上の使用権原」ですが、手引きの営業所の添付書類の注記には「借入の場合は3年以上の使用権限を有する賃貸借契約書等の写し」という記載も残っています。物件を契約する前に、申請先の運輸支局でどちらの期間が必要かを確かめておくと安全です。

運行管理者と整備管理者は5両から
タクシー会社には運行管理者の資格を持つ人が必要、と聞いたことがあるかもしれません。旅客自動車運送事業運輸規則47条の9は、一般乗用旅客自動車運送事業について、事業用自動車5両以上の運行を管理する営業所ごとに、資格者証を持つ運行管理者を「事業用自動車の数を40で除して得た数に1を加算して得た数」以上選任するよう定めています(旅客自動車運送事業運輸規則 e-Gov)。5両から39両の営業所なら1人以上です。
整備管理者も、道路運送車両法50条と施行規則31条の3により、乗車定員10人以下の事業用の自動車は5両から選任が必要です(道路運送車両法施行規則 e-Gov)。中部運輸局の手引きでも、運行管理者資格者証と整備士資格の写しは「配置する車両が5両以上の場合のみ」とされています。
ただし、4両以下なら運行の管理をしなくてよいわけではありません。運輸規則24条は、旅客自動車運送事業者に、運転する人への点呼と、酒気帯びの有無や疲労・睡眠不足などの確認を義務づけています。訪問介護の指定を受けた事業者が守る運行管理を定めた通達(国自旅第171号)では、点呼の記録は1年間、事故の記録は3年間の保存とされています(国土交通省 国自旅第171号)。

開業費用は「資金計画の基準」で考える
介護タクシーの開業費用について「いくらあれば開業できるか」という公的な目安はありません。車を新車で買うか、中古やリースにするか、営業所を借りるか自宅にするかで大きく変わるからです。その代わり、運輸局の審査基準には、いくら用意すべきかを計算する方法が決まっています。
所要資金は7つの項目の合計
中部運輸局の公示では、開業に必要なお金(所要資金)を次の7つの項目の合計としています。
| 項目 | 計上する金額 |
|---|---|
| 車両費 | 取得価格(未払金を含む)。リースなら1年分の賃借料等 |
| 土地費 | 取得価格(未払金を含む)か1年分の賃借料等 |
| 建物費 | 取得価格(未払金を含む)か1年分の賃借料等 |
| 機械器具・什器備品 | 取得価格(未払金を含む) |
| 運転資金 | 人件費、燃料油脂費、修繕費等の2か月分 |
| 保険料等 | 保険料と租税公課の1年分 |
| その他 | 創業費等、開業に要する費用の全額 |

保険料等には、自賠責保険料・任意保険料・自動車重量税・自動車税の1年分と、環境性能割・登録免許税の全額を入れます。創業費等には、広告宣伝費、看板代、車両購入雑費、車体ペイント費、各種台帳の整備など、許可後に必要になる費用を入れるよう手引きに書かれています。

自己資金は2つの条件を両方満たす
用意するお金のうち、自分で持っている分(自己資金)には2つの条件があります。
所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金が、申請日以降常時確保されていること。
たとえば所要資金が仮に400万円なら、自己資金は400×0.5=200万円以上で、しかも事業開始当初に要する資金以上でなければなりません(金額は計算の仕方を示すための仮の数字です)。

車を一括で買うか、リースや分割にするかで当初資金が変わる
事業開始当初に要する資金は、車両費について「頭金と2か月分の分割支払金」か「リースなら2か月分の賃借料等」です。ただし一括払いで買う場合は、車両費の全額になります。土地・建物も同じで、借りるなら2か月分の賃借料と敷金等、一括で買うなら全額です。これに、機械器具から創業費等までの合計を足します。
つまり、車を一括で買う計画だと当初資金が大きくなり、自己資金の2つ目の条件が厳しくなります。リースや分割にすると、所要資金には1年分や取得価格が入る一方、当初資金は2か月分で済みます。どの買い方にするかは、自己資金の額と合わせて考える必要があります。

残高証明は申請の前と、審査の途中にも求められる
自己資金は、金融機関が発行する残高証明書で確認されます。中部運輸局の手引きでは、申請日前2週間以内の残高証明書を付けるよう求めていて、さらに「申請期間中、任意の日を指定して当局より残高証明書の提出を求めます。」とあります。チェックシートには「申請から許可になるまでの間、資金計画に記載した金額以上の資金を確保できなければ申請を取下げいただく場合があります。」とも書かれています。
申請の直前だけお金を用意して、すぐに車の支払いなどで口座から出してしまうと、審査の途中で条件を満たせなくなるおそれがあります。支払いのタイミングは許可の後になるよう計画しておきましょう。
任意保険の最低ラインと登録免許税
任意保険は、対人8,000万円以上、対物200万円以上(免責30万円以下)の見積書を申請に付けます。手引きは、保険代理店に事業用自動車で患者の輸送をすることを伝えるよう書いています。
許可を受けたら登録免許税を納めます。登録免許税法の別表第一 第125号(一)ロでは、一般乗用旅客自動車運送事業の許可は1件につき3万円です(登録免許税法 e-Gov)。個人が受ける許可で政令で定めるものは1万5千円で、登録免許税法施行令19条はこれを「当該個人のみが自動車を運転することにより当該事業を行うべき旨の条件の付されたもの」としています(登録免許税法施行令 e-Gov)。自分の許可がこれに当たるかは、許可を受けるときに運輸支局で確かめてください。中部運輸局は、許可書の交付後、指定された期限までに納め、領収書を届出様式に付けて提出するよう案内しています(中部運輸局 介護タクシーをはじめるには)。

開業までの流れと期間
中部運輸局は、申請から事業開始までの流れを次の7つの段階で案内しています。
| 段階 | 内容 | 中部運輸局の目安 |
|---|---|---|
| 1. 許可申請書の提出 | 営業所の所在地を管轄する運輸支局の輸送担当へ。本通1部と控え2部の計3部 | 書類の不備があれば補正指示 |
| 2. 法令試験と事情聴取 | 申請書の受理後。通知は試験の7日前 | 手引きでは受理後およそ1〜1ヶ月半の頃 |
| 3. 審査 | 公示の基準で審査。適合しなければ却下の対象 | 標準処理期間は2ヵ月 |
| 4. 許可書の交付 | 申請した運輸支局で交付。すぐには事業を始められない | 流れ図の目安は審査から約2週間〜1ヶ月 |
| 5. 登録免許税の納付 | 指定された期限までに納付し、領収書を提出 | 許可書の交付後 |
| 6. 運賃・約款の認可 | 認可されると車両を登録するための事業用自動車等連絡書が交付される | 不備がなければ約2ヶ月 |
| 7. 運輸開始届 | 事業を始めたら管轄の運輸支局に提出 | 受理で手続きがすべて終わる |

標準処理期間の2ヵ月は、申請書類に不備がない場合の期間です。中部運輸局のページには「申請者が補正処理対応を行う期間は、標準処理期間に含まれません。」と書かれています。さらに許可の後に運賃・約款の認可が約2ヶ月かかるので、許可が出た日から営業を始められるわけではありません。
中部運輸局の流れ図が示す目安を並べると、申請から法令試験まで約1.5〜2ヶ月、審査から許可まで約2週間〜1ヶ月、運賃・約款の認可に約2ヶ月です(中部運輸局 許可までの流れ)。法令試験の時期は、申請書作成の手引きでは受理後およそ1〜1ヶ月半の頃と書かれていて、流れ図の目安とは幅が少し違います。また公示では、許可に「許可後1年以内に事業を開始する」という条件が付きます。


法令試験の内容と合格基準
法令試験は、申請者が事業に必要な法令の知識を持っているかを確かめる試験です。中部運輸局の実施要領(公示第82号、令和8年3月18日一部改正)では、次のように決められています(中部運輸局 法令試験の実施要領)。
| 項目 | 中部運輸局の実施要領 |
|---|---|
| 受ける人 | 申請者本人。法人なら許可後に事業に専従する役員 |
| 出題範囲 | 道路運送法、同施行令、同施行規則、旅客自動車運送事業運輸規則、旅客自動車運送事業等報告規則、自動車事故報告規則など |
| 方式 | ○×方式 |
| 問題数と時間 | 30問、40分 |
| 合格基準 | 正解率80%以上(24問以上の正解) |
| 不合格のとき | 後日、再試験を実施 |
| 持ち込み | 法令集等の持ち込みを認める |

法令集を持ち込めるとはいえ、30問を40分で解くので、どこに何が書いてあるかを事前に把握しておく必要があります。試験の方式や時間は地方運輸局ごとの実施要領で決まるため、ほかの地域では申請先の運輸局の要領を確認してください。
運賃と料金の決め方
運賃は、運輸局の認可を受けて決めます。福祉輸送の運賃には、ケア運賃・介護運賃・民間救急運賃の3種類があります。中部運輸局の介護運賃の公示(公示第169号)では、介護運賃の種類を次の3つとしています(中部運輸局 公示第169号)。
- 時間制運賃。お客さんの指定した場所に着いてから運送を終えるまでの実際の拘束時間に応じた運賃。15分か30分単位で、10円単位
- 距離制運賃。乗った地点から降りた地点までの実際の走行距離に応じた運賃。走行距離は走行距離積算計で測り、加算は100メートル単位
- 定額運賃。一定の範囲の中で、あらかじめ決めた額で運送を引き受ける運賃
一方、乗り降りの介助などの料金については、通達が「介護料金等旅客の運送に直接伴うものではない料金については、認可も届出も不要とする。」としています。運ぶ部分の運賃は認可、介助などの料金は自分で決められる、という分け方です。

ヘルパーの自家用車を使う「78条3号」の許可
介護保険タクシーの事業者は、契約した訪問介護員等(ヘルパー)の自家用車を使って運ぶ形をとることもできます。道路運送法78条3号の許可で、通称ぶら下がり許可と呼ばれます。中部運輸局は、対象を「訪問介護事業所の指定を受けており、かつ、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得して運送を開始している事業者と契約しているヘルパー」としていて、この場合ヘルパーは「一定の基準を満たせば普通一種免許で自家用自動車(白ナンバー)を使用して有償運送を行うことができます。」と説明しています。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 運転する人 | 二種免許で申請日前2年間無事故かつ免許停止なし、または一種免許で同じ条件に加えて大臣認定の講習を修了 |
| 車 | 乗車定員11人未満(軽自動車を含む) |
| 保険 | 対人8,000万円以上・対物200万円以上(搭乗者傷害を含む) |
| 運行管理者 | 事業用と契約した自家用の合計が5両以上の営業所で、合計数を40で割った数に1を足した数以上 |
| 許可の期限 | 2年間 |
| 運送の責任 | 契約した事業者が負う |
この許可を使うには、まず自分の事業が福祉輸送の許可と訪問介護の指定の両方を持ち、運送を始めている必要があります。中部運輸局のチェックシートも、法人で申請する人に向けて「訪問介護事業所等の指定・介護運賃の設定が必要です。」と書いています。車には、愛知運輸支局の公示の場合「有償運送車両」か「78条許可車両」の文字を50mm以上で表示します(愛知運輸支局 公示第9号)。

福祉タクシーの台数は増えている
国土交通省の資料では、福祉タクシー車両は令和6年度末に59,918台で、令和5年度末の52,553台から増えています。国は令和7年度までに約9万台を導入する目標を立てています(国土交通省 福祉タクシー車両の導入状況)。
ただし、この台数には一般のタクシーとしても走るユニバーサルデザインタクシー(47,119台)が含まれています。除くと12,799台です。福祉限定の許可を持つ事業者の数や車両数だけの統計は、今回の確認では見つかりませんでした。地域の需要は、開業を考えている地域のケアマネージャーや介護事業所の話を聞いて確かめておくと安心です。中部運輸局のチェックシートでも、事業開始後に運ぶ人や集客の方法・見込みを具体的に書く欄があります。

開業前のチェックリスト
- 介護保険の通院等乗降介助までするか、運賃だけで事業をするかを決めた
- 介護保険まで考えるなら、法人で申請する計画にした
- 訪問介護の指定の基準(訪問介護員等は常勤換算2.5以上、サービス提供責任者、常勤の管理者、専用の区画)を満たす人の計画がある
- 運転する人は二種免許を持っている。セダン型の車を使うなら4つの資格のどれかがある
- 営業所は営業区域内にあり、使用権原の期間(公示は1年以上)を申請先で確かめた
- 車庫は営業所に併設か、直線2キロメートル以内。休憩仮眠施設は区画してある
- 所要資金を7つの項目で計算し、自己資金が50%以上かつ当初資金の100%以上ある
- 申請から許可まで、資金を口座に残しておく計画になっている
- 任意保険は対人8,000万円以上・対物200万円以上で見積もった
- 法令試験の範囲の法令集を用意した
- 許可から運輸開始まで、運賃・約款の認可に約2ヶ月かかることを見込んだ
よくある質問
Q. 介護タクシーは1人・1台で開業できますか?
運輸局の福祉輸送事業限定の許可は、最低車両数が1両で、個人でも申請できます。ただし4両以下でも点呼などの運行管理は事業者の義務です。また介護保険の通院等乗降介助をするには訪問介護事業所の指定が必要で、訪問介護員等は常勤換算2.5以上が基準なので、1人だけでは満たせません。
Q. 開業費用はいくら必要ですか?
公的な相場はありません。運輸局の審査基準では、車両費・土地費・建物費・機械器具・運転資金2か月分・保険料等1年分・創業費等を合計した所要資金を計算し、自己資金はその50%以上かつ事業開始当初に要する資金の100%以上が必要です(中部運輸局 公示第168号)。
Q. 介護職員初任者研修は必須ですか?
運輸局の許可の上では、福祉自動車だけを使うなら研修や資格は努力義務です。セダン型などの一般車両を使うなら、ケア輸送サービス従事者研修・介護福祉士・訪問介護員・居宅介護従業者のどれかが必須です。介護保険の通院等乗降介助をするなら、訪問介護員等であることが必要です。
Q. 許可が出るまでどのくらいかかりますか?
標準処理期間は2ヵ月で、補正にかかった期間は含まれません。中部運輸局の流れ図の目安は、申請から法令試験まで約1.5〜2ヶ月、審査から許可まで約2週間〜1ヶ月です。その後の運賃・約款の認可に約2ヶ月かかります。
Q. 法令試験に落ちたらどうなりますか?
中部運輸局の実施要領では、初回で合格基準(30問中24問以上)に達しなかった場合、後日再試験を実施するとされています。法令集等の持ち込みは認められています。
Q. 運行管理者の資格は必要ですか?
旅客自動車運送事業運輸規則47条の9では、一般乗用旅客自動車運送事業で資格者証を持つ運行管理者の選任が必要なのは、事業用自動車5両以上の営業所です。整備管理者も乗車定員10人以下の事業用の自動車は5両からです。
Q. 登録免許税はいくらですか?
一般乗用旅客自動車運送事業の許可は1件につき3万円です。個人が受ける許可のうち、その個人だけが運転する条件が付いたものは1万5千円です(登録免許税法 別表第一 第125号、同施行令19条)。当てはまるかは運輸支局で確かめてください。
Q. 運賃は自由に決められますか?
運ぶ部分の運賃は運輸局の認可が必要です。介護運賃には時間制・距離制・定額があり、時間制は15分か30分単位です。介護料金など運送に直接伴わない料金は、認可も届出も不要です。
Q. 自分の自家用車をそのまま使えますか?
事業用の自動車として使うことはできますが、中部運輸局の手引きは、保安基準に適合しない場合があるので、あらかじめ自動車販売店に確認するよう書いています。ヘルパーの自家用車(白ナンバー)で運ぶ形は、78条3号の許可が別に必要です。
Q. 働く側として介護タクシーに関わる方法はありますか?
介護タクシーの事業者に雇われて運転する形もあります。仕事の中身や年収の目安はタクシー運転手と介護タクシー運転手の違い、タクシー運転手全体の年収はタクシー運転手の年収の記事、年齢の条件はタクシー運転手の年齢の記事で紹介しています。

参考にした一次情報
いずれも2026年9月26日に確認しました。
- 国土交通省 国自旅第169号「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
- 国土交通省 国自旅第170号「福祉輸送サービスを行う一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金について」
- 国土交通省 国自旅第171号(訪問介護事業所等の指定を受けた事業者が遵守すべき運行管理業務)
- 国土交通省 国自旅第359号「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和8年6月5日一部改正)
- 国土交通省「移動等円滑化の進捗状況(令和6年度末)」福祉タクシー車両の導入状況
- 中部運輸局「介護タクシーをはじめるには」
- 中部運輸局「介護タクシー事業の経営許可までの流れ」とチェックシート
- 中部運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請書作成の手引き」
- 中部運輸局 公示第168号「福祉輸送サービスを行うことを条件とした一般乗用旅客自動車運送事業の申請に関する審査基準について」
- 中部運輸局 公示第82号「法令試験の実施要領について」
- 中部運輸局 公示第169号「運賃及び料金(介護運賃に限る。)に関する制度について」
- 愛知運輸支局 公示第9号(78条3号の審査基準)
- 道路運送法(e-Gov 法令検索)
- 旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov 法令検索)
- 道路運送車両法(e-Gov 法令検索)
- 道路運送車両法施行規則(e-Gov 法令検索)
- 登録免許税法(e-Gov 法令検索)
- 登録免許税法施行令(e-Gov 法令検索)
- 介護保険法(e-Gov 法令検索)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov 法令検索)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」
許可の基準や期間の目安は、中部運輸局の資料で確認したものです。開業する地域の運輸局・運輸支局と、介護保険の指定を担当する自治体に、申請の前に確かめてください。




